木材に対する誤解と実際:木は水に強い・弱い?上棟時の雨ぬれが心配!【2/6】

こんばんは。さすけです。

新築の家の上棟時や建築中に雨が降って室内がびしょびしょになってしまった状態を目の当たりにしたときのショックは計り知れません。前回は、上棟時や建築中に雨に濡れてしまったことが心情的に到底大丈夫とは言えないことを書いてきました。

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今回は、実際の所、木材が雨に濡れても本当に大丈夫なのか?ということを書きたいと思います。

雨に濡れたことで木がダメになってしまうのではないか、せっかくの新築の家が腐ったり、カビたりしてしまうのではないかと言うことを心配される方は多いかと思います。

木材は濡れると曲がったり逸れたりして使い物にならなくなる?

木材のイメージとして、水に弱い材料というイメージを持たれている方も多いかと思います。

基本的に木製品を水に濡らしたら良く無さそうだというのは、多くの方が共通して思っていることと思います。

しかし、実際には、木材は私達が想像するよりもずっと水に対して強い材料と言えます。

もの凄く当たり前の話ですが、木はそもそも「雨ざらし」で成長します。

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もしも、木材が水濡れに弱ければ、雨が降ったらふにゃふにゃになってすぐに朽ち果ててしまいます。実際、木材が自然の中に立っている状態では根からは水を多く吸い上げますが、樹皮の周りから水を吸い込むようなことはありません。すなわち、木材は防水されている材料と言えます。

いやいや、それは生きている木だからで、一度切って死んでしまった木では水に付けられたら問題があるのでは?と思うかもしれません。

しかし、木は切り出されて死んだあとも、その耐水性は高いままです。切り出された木材がその場で山積みにされている風景は多くの方がご覧になったことがあるかと思います。

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このような状態であっても木材はすぐに腐ったりすることはありません。また、木造船のようなものをイメージしたとき、もしも、木が水に浸かるとすぐに曲がったり吸水して使い物にならなくなってしまうとしたら、そんなものは船に使えないはずです。しかし、木造船でも太平洋を渡りきることだってできます。

もちろん、1ヶ月も2ヶ月も雨ざらしにしたら腐ってくる可能性はあります。しかし、木材は自然界の中では強度があって、耐水性に優れた材料の一つと言えるのです。

ですから木材は、ちょっとやそっと濡れたぐらいでどうこうなることはありません。

乾燥木材は水に濡らしてはいけない?

いやいや、そうは言ってもそれは生木の話で、乾燥した木材は違うのではないか?乾燥した木材だからこそ濡らしてはいけないのではないか?と思われるかも知れません。

確かに、一般に住宅で利用される構造用木材や造作材において含水率は強度や耐久性に重要な役割を果たします。

そのため、2011年に国土交通省大臣官房庁営繕部は低層の木造公共建築の設計指針となる「木造計画・設計基準」を定め、この中でセゾンやブリアールのような軸組工法における住宅の構造木材含水率であれば20%以下、i-smartやi-cubeのようなツーバイ工法(枠組み工法)においては19%以下であることを定めています。

一条工務店でも、軸組の場合20%以下、ツーバイの場合19%以下の木材を利用するとしています。

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ちなみに、住友林業などだと法基準よりももっと乾燥をさせて、含水率15%以下の構造材を使っていたりします。

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一般に、建築後数年で木材の含水率は周辺の湿度とバランスの取れる15%程度になります。

一条工務店の営業さん達がよく新築のうちは「木が動く」「気が泣く(鳴る)」という説明をしますが、これは一条工務店の住宅で使われている木材の含水率が20%程度であり、これが自然に乾燥していく過程で生じる現象です。おそらく住友林業のように含水率15%の木材で家を建てるとこのような現象は生じないかと思います。

含水率15%というのは、天然乾燥では何年もかかってしまい、人工乾燥ではそれなりに達成が難しい含水率になっています。住友林業の場合は、「ミズダス(たぶん「水出す」のダジャレ)」という特許技術によってこれを実現しています。

ただ、最近は複数のハウスメーカーで含水率15%の木材を使用するようになっており、一条工務店はこの点ではやや遅れている印象を持っています。

例えば、積水ハウスのシャーウッド、そしてローコストに近い桧家住宅などでも含水率15%以下を達成しています。

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一方、一条工務店の家よりも値段が高い、三井ホーム(枠組み)でも含水率は19%以下としていたりと、ハウスメーカーでばらつきがある印象です。

ただ、含水率が高い住宅でも、低い住宅でも3年もすればどの木材を使っても構造材の含水率は外部の湿度とバランスして15%前後になるため、初期の数年間壁紙のずれなどが生じやすいかどうか?というメンテナンス上の問題であって、強度に大きな差が出るわけではありません。

で、本題の「乾燥した木材が雨に濡れたら含水率が上がるのでは?」という疑問に対する答えは、雨に濡れても、なんなら1週間や2週間水につけても乾けば問題ありません。

もちろん、雨に濡れれば含水率が多少上がります。しかし、上がった含水率は水の浸入がなくなれば自然に乾燥します。そして、乾燥すれば強度は元に戻ります。これは木材が持つ本来の特性によるものです。

そもそも、木材は自然環境下で乾燥させるためには半年から1年もかかる程、乾きにくい材料です。これは裏を返せば、吸水しにくい材料とも言い換えることができます。だからこそ、船にも使えるのです。

雨ぬれの後、まだ湿っているのに施工が開始した!?

一条工務店では、雨ぬれがあった後、まずは濡れた場所をさっと拭き取って、扇風機などを持ち込んで乾燥をしているケースが多いかと思います。

このような対応を見ていて、まだ十分に乾燥もしていないのに施工が開始されて不安を感じられる方も多くいらっしゃるようです。見ようによっては、施工コストをカットするために、リスクを承知の上では自分の家をないがしろにされているように感じられる方もいらっしゃると思います。

私が聞いた中でベストな回答は「本社から施工をするように言われた」という回答です。オマエは、人の家をなんだと思っているんだ、と突っ込みたくなる素晴らしい回答です。

しかし、実際の所、完全に乾かすことまでは必要ありません。できればしても良いですが、工期等を考えると、見た目として乾いていれば、多少湿っていても残りは自然乾燥程度でも問題になることはないのです。

なぜそう言えるのかについてはしっかりと理屈があります。この点については、「住まいの水先案内人」というサイトで実験を通じて示されています。

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結論から言えば、SPF材のようなものでも、24時間水に浸けておいたもの(24時間雨ざらし)を、部屋の中に置いて置くだけの状態でも、48時間で含水率が元に戻ることが示されています。夏場のケースではありますが、数日間放置すれば木材の含水率は元に戻ることになります。

そのため、完璧に乾いていなくても、水たまりのようなものは当然拭き取った上であれば、多少の湿り気などはそのうち自然に乾燥するので問題はありません。

ただ、下のお宅のように床板と軸材が接するような部分については自然に乾燥しにくくカビが生えやすくなるため、水分を拭き取って扇風機を使って乾かすことを勧めています。

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実際、一条工務店の対応を見ていると、我が家でもそうでしたし、また、その他のお宅でもそうですが、基礎内などをさっと拭き取りして扇風機やサーキュレーターを持ち込んで乾燥をされているケースが多いかと思います。

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上の写真のお宅のように基礎の通気口に扇風機を置いて基礎内を乾燥させたりすることもあります。これは基礎の内部の高さが低いため通常の扇風機が入らないためです。

現場にサーキュレーターのように小型の扇風機があれば、下の写真のようにサーキュレーターなどを使って乾燥を促すケースも一条工務店でよく見られる対策です。

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そのため、一条工務店の雨ぬれ後の対応そのものは間違ったものではないと言えます。これによって、強度が損なわれる等の問題も残りません。

雨に濡れたら木は腐る?

木材というのは、腐りやすいイメージがあります。しかし、生物として見ると極めて腐りにくい性質を持っています。例えば、肉などであれば、室内に数日も放置すれば腐りますが、木材を通常の室内に放置しても何年かけても腐ることはありません。部屋の中で家具が腐った方はいないと思います。

この腐りにくさは、木材の主要物質である、リグニン、セルロースといった物質が、肉などを腐食させる通常の腐食菌には分解できず、腐食菌の中でも「木材腐朽菌」という菌のみが、木材を腐らせることができるという特性に由来します。

で、この木材腐食菌というのは、繁殖するための条件が比較的厳しく、長期間十分な栄養と酸素がある条件で、温度20-30℃の範囲、湿度85%以上の環境中にある、含水率20%以上の木材のみで繁殖することができます。

雨ぬれしたお宅の木材については、酸素は当然もあります。温度については、概ね春から秋口にかけてであれば満たすことが多いかと思います。そして、湿度85%という条件が比較的難しく、雨の日や基礎内に長期間水がたまっているという条件でないと満たせませんが、雨ぬれしたお宅であれば満たすことはできる部分もあるかと思います。

そして何よりも、長期間含水率20%を満たすことがかなり難しくなります。

先ほど示したように、国土交通省が示す基準によって建築物で使用される木材はそもそもの含水率が20%以下となっています。そのため、雨に濡れていない木材であれば腐ることはありません。しかし、雨に濡れて一時的に含水率が上がった木材であれば、含水率20%以上となるので、木材腐朽菌の繁殖条件は満たすことができます。

ところが、住まいの水先案内人のサイトにあったように、夏場の場合、24時間水に沈めておくような極端な条件でも、数日程度で元の含水率に戻ってしまいます。そのため、木材腐朽菌が繁殖できる条件を満たし続けることは通常はできません。

冬場であれば乾燥にはもっと時間がかかることもあるでしょうが、温度条件が木材腐朽菌の繁殖条件を満たせなくなるので木が腐ることはありません。

そもそも、木材腐朽菌が繁殖するためには十分な時間が必要になります。通常は数ヶ月単位で木材が上記の全ての条件を満たし続けることが、木を腐らせる条件となります。

そのため、雨ぬれで仮に1週間程度放置されたとしても、それによって木が腐るような事態は招きません。

歴史的経緯~昔は木材が腐った~

1970年代後半に木材腐朽菌が社会問題になったことがありました。

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(ナミダタケが腐らせた床下 引用元

このような歴史的経緯もあり、木材含水率に条件が定められ、また、様々な防湿対策(床下換気口など)が住宅に講じられるようになったため、現在の住宅において、木材が腐朽するということはまずありません。

もちろん、かなり悲惨な雨ぬれであっても、木材が腐ることはほぼ考える必要がないと言えます。現在の住宅で木材が腐る可能性があるとすると、雨漏りによって、常時湿潤な状態になってしまっているケースですが、一時的な雨ぬれとは異なります。

雨に濡れて放置された家にカビが生えた!

雨に濡れて放置されたとしても、木材が腐ることはありませんが、カビが生えることはあります。

下のお宅では、基礎据え付け後に豪雨に見舞われ、そのまま上棟、上棟後しばらくの間基礎内に水が貯まってしまっていたケースですが、こちらのお宅の場合、例えば、基礎のコンクリート部分に黒い斑点のようなカビらしきものが見て取れます。

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また、木材表面にも白い斑点のようなカビ(もしかするとコンクリートのカルシウム分による白華現象の可能性もあります)が見てとれます。

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このように、木材表面等に湿度が高い部分ができてしまうとカビが生えてしまうケースはあります。

で、カビが生えたような木材はもう使えない、と思われがちですが、心情的な部分をさておくとすれば、ここで生えたカビそのものはあくまで木材表面に付着してるものですので、拭き取ることで十分除去が可能です。

一条工務店ではカビが生えてしまった場合は消毒剤を使って、目に見える部分のカビを拭き取ることが多いようです。

え!?目に見える部分だけ???と思われるかもしれません。はい。木材の裏側にもカビは生えている可能性がありますが、あくまで目に見える部分のみです。

これは私の理解ですが、木材表面に生えてしまったカビを消毒薬を使って拭き取るのは、おそらくは一条工務店なりにお客さんの心情に気を遣ってのことと思っています。。。

カビと聞くと発がん性の問題、アレルギーや肺炎の問題等々、健康に影響がある重大な影響が起こりそうで不安に感じる方が多いかと思います。

もしもカビが繁殖し続けてしまった場合は、健康上の問題があり得ることは事実です。しかし、カビの繁殖をストップさえしてしまえば、極端な話、気持ちの問題を無視すれば何もしなくても、全く問題はありません。もちろん、壁一面カビだらけとかだったら少しは何とかした方が良いと思いますが、雨ぬれを1,2週間放置してもそのようなことは起こりません。

カビが生えてしまった場合の対策で最も重要なこと、それは、水の供給源を絶つこと、です。

カビの胞子は、私達の通常の環境中にたくさん存在しています。しかし、それが私達の目に付かないのは、私達の身の回りの環境が湿度80%を超えるようなカビの繁殖条件を満たしていないからに過ぎません。

雨ぬれ等によって、カビが発生してしてしまった場合は、何よりも優先すべきは、水分を除去して周辺の湿度を下げることにつきます。

こうして、水分が除去されればカビはそれ以上増えることはなくなります。もちろん、カビが胞子を放出することもなくなりますので、健康上の問題を生じることもありません。

付着してしまったカビはそのうち剥がれ落ちていくと思いますが、カビそのものは量が少なくそれほど大きな問題になりませんから、放置しても健康上は問題は起こりません。日常肌が接する部分にカビを残しておくのは良くないですよ。念のため。

もちろん、引き渡し寸前の状態でカビが見えてしまう状態は健康上問題がなくても、当然受け取れませんから壁クロスを交換するなどの対応を求めて当然ですが、基礎内や壁の裏など見えない部分であれば、カビをそれ以上繁殖しないようにさえすれば、健康上の問題を引き起こすことはありません。ですので心情的なものはあるものの、あまり神経質にはなる必要はありません。何よりも無理に交換しようとすれば家を傷つけます。

一条工務店の場合、基本的には消毒薬を使った清掃が行われるケースが多いようです。ただ、監督などによっては消毒薬を使用としなかったりするケースもあるので、その場合はきちんと消毒薬を使ってカビを拭き取って欲しいと伝えることは当然して良い事と思います。

ここまでは、無垢の木材が雨に濡れてもなぜ大丈夫と言えるのか?について考えてきました。しかし、一条工務店のi-smartやi-cubeのようなツーバイ工法では無垢材だけではなく、ベニヤ板を少し厚くしただけに見える合板が多数使われています。

これら合板は板を接着剤で止めており、絶対に水に濡らしてはいけないという専門家の方もいらっしゃいます。次の記事では「合板は雨に濡れても大丈夫なのか?」について考えて行きたいと思います。

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続きは上記からお願いします。