高気密高断熱住宅に全館床暖房は不要だ!(中):床暖房の欠点

こんばんは。さすけです\(^o^)/

前回の続きです!

一条工務店では全館床暖房を採用しています。一方で、他のハウスメーカーなどに見学に行くと

高断熱高気密住宅には全館床暖房は不要だ

と言われることがあります。どちらの言い分が正しいのか私達顧客にはよく分かりません。。。私は大変素直なのですぐに何でも信じてしまうのです(・_・;)

そこで、高断熱高気密住宅に床暖房は本当に必要なのか?について考えてみたいと思っています。

前回は、エアコン、蓄熱暖房(ファンヒーター)、床暖房の3種類について、東京大学前研究室のグループが行った研究成果を元に、それぞれの快適性(室温の均一性)がどの程度異なるのかを見てきました。

その結果、他の暖房に比べて床暖房の快適性が圧倒的に優れていることを確認しました。

しかし、これだけでは「全館床暖房」が必要な理由にはなっていません。リビングや居室のみを床暖房にすれば十分じゃないかと思うのです(゜ロ゜)

前回のまとめ

WS000686

(出典:ケンプラッツ

上記は、左からエアコン暖房、ファンヒーターによる暖房、床暖房で吹き抜けのある空間を暖めた場合の室内の温度分布を示した図です。

結果は一目でわかるように、床暖房だけが足下から天井付近まで部屋の温度を均一に保てていることがわかります一方でエアコンやファンヒーターは足下が寒く、また、室内の温度分布にもばらつきがある事がわかりました

しかし、まだ多くの疑問が残っています。本日はその疑問について考えていきたいと思います\(^o^)/

なぜ床暖房だけが部屋の温度を均質にできたか?

上記のシミュレーションの詳細はWebニュースベースなので詳細なことはわからないのですが、東大の研究室の研究成果として公表されているものですから、室内に与える熱量等のシミュレーション条件は同一であると思います。

それにも関わらず、床暖房だけが部屋の温度を均質にできたことに若干の違和感を持たれる方もいらっしゃると思います。

暖かい空気は上に行く

理由は非常に簡単です。「温かい空気は軽いため上に行く」というのが理由です。

床暖房だって空気を暖めているんだから上昇気流を生むんじゃないか?と思われるかも知れません。

しかし、そうではありません。

35℃の空気と、70℃の空気、25℃程度の空気があったとき、どの空気が一番軽いかを考えればわかると思います。

空気は温度が高くなると軽くなります。軽い空気は上に向かいます。

結果として

WS000012

ファンヒーターのように高温を吹き出す暖房だと、吹き出した熱い空気は一気に上昇してしまい、足下を暖めることがほとんどできなくなってしまったのです。

床暖房だけなぜ低い温度で良いのか

床暖房によって部屋を暖めた場合、部屋の温度が均一になるのは空気の温度を「暖めすぎない」ために、強い上昇気流を生じさせることがないのです。

エアコンは35℃、ファンヒーターは70℃の空気を吹き出して部屋を暖めているのに、床暖房は空気も吹き出していないのに低い温度で部屋が暖められるのか?と思われる方もいらっしゃるかと思います。

なぜ床暖房だけが上昇気流を生じないほど低い温度で部屋を暖められるのかについて少し考えてみます。

エアコンやファンヒーターは吹き出し口の面積(おおよそ幅1m×高さ0.05m(5cm)=0.05㎡)程度の吹き出し口から部屋全体を温めるだけの熱を発しなくてはいけません。

そのため、強い勢いで空気を吹き出して、室内の冷たい空気を吸い込んで空気自体を暖めていきます。

床暖房の場合、例えば6畳の部屋であれば10㎡もの熱源がある事になります。吹き出し口の面積0.05㎡と比較すると200倍もの面積を持っています。

そのため、単位面積当たりの熱量を比較すると床暖房はエアコンやファンヒーターに比べてずっと少ない熱量で部屋全体を温める熱量を発することができるのです。

もちろん、エアコンやファンヒーターは空気を吹き出していますから単純に面積で比較できるわけではありません。しかし、この「吹き出す空気」というのはあまり快適なものではありません。床暖房であれば、そもそも空気を吹き出すことがないため、気流を生むことはなく、ホコリや花粉などを巻き上げてしまうこともないのです。

じゃあ、エアコンの吹き出し温度を下げたら良いじゃないか!?

吹き出し温度が高いことが問題ならば、ファンヒーターは無理でもエアコンの吹き出し温度を下げたら良いじゃないか!と思うかも知れません。

確かに、吹き出し温度を下げれば上昇気流を生み出さない程度に低い温度で暖房をすることができ、室内の温度差を小さくすることができるかも知れません

しかし、吹き出し温度を下げながら室温を上げようとすれば、吹き出しの気流を強くしなければならなくなります。エアコンから強い風が吹き出て人間に当たったら、、、あまり快適なものではありません。そもそも上昇気流を生み出さないために温度を下げているのに、気流を強くしてしまっては本末転倒です。さらには、吹き出す気流を強くすればエアコンからの騒音も気になります。。。

ですから、エアコンから吹き出す温度は床暖房などに比べるとどうしても高くせざるを得ないのです。

では、床暖房に欠点はないのか?

床暖房にも欠点がいくつもあります。。。具体的に床暖房の欠点を見ていきたいと思います^^

床暖房の欠点は部屋を暖めるのに時間がかかること

エアコンやファンヒーターは室内の冷たい空気を吸い込んで直接温めて吹き出します。空気というのは非常に暖まりやすく冷めやすい気体です。そのため、すぐに部屋を暖めることができます。

それに対して、床暖房は部屋を暖めるのに非常に時間がかかります。床暖房は床を暖めてその熱が自然に空気に移動していくのを待っているわけですから、そりゃそうです。空気を直接暖めない床暖房はこの点ではエアコンやファンヒーターに勝ち目はありません。

我が家の例でも床暖房が家を温めて安定するまで約2日もかかりました。部屋を暖めるのに2日も掛かったのでは、部屋が寒いからスイッチを入れるといった使い方では使い物になりません。

そこで、発想の転換を図る必要があります。すなわち

暖房を付けたり消したりしない!

と言うことです。寒いときに暖房を付けて部屋を暖め、部屋から人がいなくなるときは暖房を消す、という使い方を放棄してしまえば良いのです。

要するに暖房を付けっぱなして24時間空調にしてしまえば、床暖房の欠点である「立ち上がりの遅さ」は年に1回、床暖房のスイッチをONにするとき以外は問題となりません。

よって、24時間空調を採用することで床暖房の欠点を補うことができます^^

そう言えば、一条工務店の家も24時間空調でしたね。。。一条工務店の家が24時間空調になっているのは、床暖房の欠点である立ち上がりの遅さを補うためでもあるんですね( ・_・;)そんな説明してもらった記憶はありませんが??

そんなことをしたら電気代が大変な事になっちゃうんじゃ!!( ・_・;)

人がいようがいまいが部屋を暖めっぱなしにするなんてことをしたら電気代が大変なことになってしまいそうです!!

冬場は外気と室温に大きな温度差がありますから、部屋を暖めても室内の熱は外に逃げて行ってしまいます。

人がいる時間だけ暖房してるならともかく、人がいないのに電気代を払うなんてバカバカしいですしもったいないことですよね。。。

何よりも電気代が大変な事になってしまいそうです。それこそ一条工務店じゃありませんが30年で1000万円の電気代を支払う事になってしまいかねません。。。

そんなことにならないようにするためには「家の断熱性を高める」ことが必要になってきます。

家から逃げてしまう熱を最小化すれば、24時間暖房をしても電気代が上がりにくくできるのです。

24時間空調をするのであれば、できることなら、次世代省エネ基準値などはどうでも良くて、できる限り高い断熱性能が求められます。家の断熱性を示す指標であるQ値で言えば1W/㎡・Kを下回る程度の断熱性になってくると、全館空調の電気代も現実的になってきます^^

ちなみに一条工務店のi-smartで建てた我が家のQ値を計算してもらったところ0.9W/㎡・Kでした。

断熱性を高めるためには?

断熱性を高めるために最も確実な方法は窓を小さくすることです。ただ、そうなってしまうとくら~い家ができあがってしまいます^^;

私自身もそうですが、多くの方は開放感のある空間を望まれて、窓を大きくしたいと考えていると思います^^

24時間空調を実現して、電気代を現実的な金額に納められる断熱性を実現しつつ、大きな窓を設置したいと考えると普通のLow-Eガラスでは力不足になってきます。

我が家のQ値は0.9ですが、別に窓を小さくすることなく、むしろ普通よりも大きな3.6m×2mの窓をリビングに設置しています。

WS000689

このサイズの窓を付けて、一般に普及しているアルミサッシ単相ガラスなんて採用してしまうとQ値は2.0~3.0近くになってしまいます。。。これでは真冬に暖房に掛かる電気代は月額5万円程度にはなってしまうと思います。。。その他の電気代を含めて7万円の電気代、、、これではムリです。。。

しかも、窓から冷気が伝わってしまい、窓の近くに行くと寒いという事になってしまいます。。。そんなことにならないように、樹脂サッシやアルゴンガスを注入したペアガラスなど断熱性をさらに高めた窓ガラスが必要になってきます。もっと言えばトリプルガラスなどにすれば、より電気代は安くなり快適になるはずです。

ただし、断熱性の高い窓やサッシは非常に値段の高いものですから、コストとのトレードオフになってきます。

例えば、先の東京大学の前真之さんが書かれたコラム「第4回 失敗しないエコハウスの基本とは?」(このコラム面白いのでお勧めです!)には、北海道で厳冬期には外気温がマイナス40℃になる地域でありながら吹抜付きのエコハウスの例が書かれていました。

WS000691

こちらのお宅では、窓ガラスの購入だけで1000万円をかけたそうです( ・_・;)さすがにそこまで徹底できる方というのは、多くないような気がします。。。

その点、一条工務店の家は坪単価70万円と決して安くはありませんでしたが、個人的には断熱性と快適性、そして値段のバランスが非常に良く取れていると思います。。。

床暖房の欠点

効率が悪い

床暖房の欠点として、効率の悪さがあります。

床暖房の効率の悪さは、電気式の床暖房(一部ガス式床暖房)に関する事が多いような気がしています。

電気式床暖房は温水式床暖房に比べると施工が楽であるなどのメリットがあり、低コストで施設できます。しかし、電気式というのは「電熱線」に電気を通して床を暖める方式です。これは蓄熱暖房にも言える事なのですが、この「電熱線」というのは電気喰いのようなもので、熱変換効率という観点では優れたものではありません。一方で、すぐに高温になるため、24時間暖房ではなく個別暖房として使用するのであれば一つの選択肢ではあるかと思います。しかし、24時間暖房には全く不向きな暖房装置です。

効率性を考えるならばヒートポンプ式の暖房が必要になります。ヒートポンプはエアコンなどに多く採用されている熱を得る仕組みです。外気温との温度差を使って、外気温から熱を吸い上げるのでヒートポンプと呼んでいます。

ヒートポンプ方式では室外機が必要になってしまいますが、効率性という観点からは優れた方式になります。もっと言えば、ヒートポンプ式の床暖房であれば通常のエアコンと同等程度の効率性を得ることができます。一条工務店の床暖房がそうであるように、24時間床暖房を行うならば温水式床暖房以外の選択肢はないと言っても良いと思います。

「全館」暖房である必要はあるの?

ここまで調べてきた結果、エアコンや蓄熱暖房に比べると床暖房の快適性が高そうだと言うことと、床暖房を採用するならば24時間暖房が良さそうだと言うことがわかってきました。では、「全館」暖房である必要があるのか?について考えてみたいと思います。

人によっては、「全館」じゃなくて「リビングだけ」暖かければ良いよ~と言う人もいると思います。

しかし、床暖房を採用して個別空調を採用した場合、難しい問題が出てきます。それは

コールドドラフト

と呼ばれる現象です。コールドドラフトというのは、1Fのリビングなどに対して、2Fの冷たい空気が「滝のように流れ込んでくる現象」です。

WS000692

(出所:ケンプラッツ

上図のように1Fに床暖房を設置して家を暖めても、2Fの部屋が冷えているとリビング階段などをつたって2Fの冷たく重たい空気が流れ落ちてくるのです。

結果的に、せっかく床暖房をしても上記の実験では床表面の温度が26.3℃であるにも関わらず床からたった10cmの高さの位置で18.9℃になってしまっていることがわかります。これでは足下が寒くなってしまいます。

人は足下が寒いと不快に感じるため、せっかく床暖房を採用しても、コールドドラフトのせいで快適性が大きく損なわれてしまいます。

じゃあどうすれば良いか?となるわけですが、一般にはじゃあ、「リビング階段を止めましょう」であったり、「リビング階段にドアを付けましょう」という提案が多いかもしれません。しかし、一条工務店の提案は「じゃあ全部屋床暖房にしちゃいましょう」というものなだけなのです。ドアを付けて個別空調にしつつ床暖房を使うのと、全館空調にして、全館床暖房にするのではどちらがより快適であるかは自明ですよね。。。

高気密高断熱住宅に全館床暖房はいらない!

ここまで、「高気密高断熱住宅に全館床暖房は不要だ!」という立場に立って考えてきました。。。

しかし、調べれば調べるほどに

高気密高断熱住宅だからこそ全館床暖房の方が良い

という結果になってしまいました。。。いや、正しくは、

全館床暖房にするならば高断熱高気密住宅にせざるを得ない

という方が正しいかも知れません。

快適性の観点からは床暖房は他の暖房方式よりも優れています。しかし、床暖房には立ち上がりが遅いという欠点があるため、24時間空調にせざるを得ません。

そして、24時間暖房にするならば、住宅の断熱性は一般に求められる断熱性よりもかなり高いものでなければ電気代が大変な事になってしまいます。さらには、部分暖房にしてしまうとコールドドラフトのような別の問題が生じますから、快適性とコストパフォーマンスを勘案した上で可能であれば全館床暖房にすることが最も快適性が高くなります。

こうして考えてくると、床暖房にする限りは高断熱高気密住宅は必要不可欠と言えそうです。また、逆も同じでせっかく高断熱高気密住宅にして快適性を追求するならば全館床暖房が最も快適である可能性が高いということも言えそうです。

「高気密高断熱住宅に全館床暖房は不要だ!」シリーズの最終回です。一条工務店と床暖房について考えてみたいと思います\(^o^)/