一条工務店の耐水害住宅は安心は提供するけど「安全」は提供しない

こんばんは。さすけです\(^o^)/

9月1日付けで一条工務店の耐水害仕様の住宅が販売開始されました。これまで市場になかった住宅であり、ただただ「すごい」の一言です。

一方で、耐水害仕様住宅はその理解を間違えると生活者を「危険」に晒すこともあり得る住宅のようにも感じました。このことは耐水害住宅を販売する一条工務店自身が一番分かっていることと思いますが、耐水害仕様住宅は「安心」は提供してくれますが、「安全」は提供してくれない、ということを正しく認識して導入の是非を検討する必要がある商品と思います。

本日は、耐水害仕様住宅のその仕組みとリスク、また、耐水害仕様が守ってくれるものと失う可能性のあるもの、そしてリスクが上昇するものを考えてみたいと思います。

この記事は一条工務店の公式サイトまんちゃんハウスさんのインスタ、日経ホームビルダー2020/05号「豪雨災害の新たな知見:高気密住宅が浸水で浮く」の記事、耐水害住宅の実大実験を行った防災科学研究所の公開資料などを参考に、あくまで初見の感想を示したものとなっています。

目次

耐水害住宅の概要

耐水害仕様の価格

まず、耐水害仕様の採用要件ですが、i-smart、i-cubeなどのツーバイ仕様の住宅のみとなっているようです。グランセゾンなどでは現時点では採用はできません。

気になる価格ですが、現時点ではキャンペーン価格(一条工務店は10年以上『床暖房キャンペーン』をやっていたので、急にキャンペーンが終わることはないと思います)となっていて、価格は一条工務店が得意な?坪単価方式となっています。

耐水害仕様種類税抜き費用施工面積35坪の場合の価格(税込み)
注水型1.5万円/坪46.2万円
浮上タイプ3.0万円/坪115.5万円
表1:一条工務店耐水害仕様の価格

価格についてはそもそも市場になかった商品なので安いとも高いとも判断できません^^;ただ、「『水害の可能性がある土地』を回避するのに要する費用」と考えればかなり安いと言えるかと思います。

耐水害仕様はなぜ正式販売までに1年を要したか?

実大実験に前後して大規模な水害に見舞われた一条工務店

一条工務店の耐水害住宅はちょうど1年前の2019年9月に防災科学研究所において実大実験が行われました。

実大実験から1年で販売開始だと販売開始までの期間としては早いと言えば早いのですが、当時、ちょうど台風19号、20号によって一条工務店の複数の分譲地において浸水被害が発生しているという問題が生じていました。

実際に被災された地域で一条工務店で住宅を購入された方からお聞きしたお話では、当初はそうした分譲地ですぐにでも耐水害仕様が展開されるような話があったようです。しかし、本社よりストップがかかり一部耐水害仕様への変更に留まり、完全な耐水害仕様の採用は不可となったとお聞きしておりました。

やっぱり浮いた耐水害住宅:非公開実験で確認された浮上

なぜ耐水害仕様はすぐに採用されなかったのか?その理由は「浮力」にありました。これは2019年10月に実施された耐水害仕様住宅の実大実験でも確認されていました。

一条工務店の耐水害仕様住宅は、その仕様上、水深1.0mまでの浸水被害であれば防水効果によって室内への浸水を防ぐ効果が得られるとされており、実際に防災科学研究所の実大実験においても一般に公開された水深1.0mまでの水害においては室内への浸水がないことが確認されました。公開実験では、仕様上の限界を超えた地盤面から水深1.3mにて実験が終了されるまで室内の照明は点灯を続け、また、室内への浸水がなかったことが報告されています。(参考:防災科学研究所 「耐水害住宅の性能実験からわかること」酒井直樹氏

メディア等で公開された耐水害住宅の実大実験は水深1.3mで終了となりました。しかし、その後非公開でさらなる浸水を行わせる実験が継続されました。非公開実験では、仕様で定められた1.0mを大きく超えてどんどんと浸水をさせていきました。そして、水深が1.8m弱に達したところで「家が浮き上がる」現象が確認されたことが報告されています

このことは、日経ホームビルダーにおいても報告されており、下記のように写真付き(写真は浮く前)で報告されています。そこでは「浸水深1.8mでは浮いた」と記載されています。

図:浮いてしまった一条工務店の耐水害仕様住宅(出典:日経ホームビルダーより)

付け加えておくと、これは決して「実験で確認された想定外の現象」ではなく、事前に想定された現象でもありました。ただし、浮き上がった水深は、研究を取り仕切った防災科研の当初予想よりも「深い」ものとなっていました。その理由としては「屋根にソーラーパネルが設置されていたことにより重量が重かった」ことが挙げられています。

しかし、水深が一定水位を超えてしまうと「浮き上がる」という現象は実験でも確認され、これは決して無視できることではなかったであろうことは容易に想像が付きます。家が浮くと何がおこるのでしょうか?

住宅が浮き上がることで大きな被害を引き起こす

築40年の住宅は残り、新築の高気密住宅は流された

今回の耐水害住宅の実大実験のような特殊な実験を除けば、一般の自然災害で住宅が「浮き上がる」というのは、従来はあまり想定された事象ではありませんでした。しかし、昨年の豪雨災害において2m程度の浸水被害があった地域において「築40年の住宅はそのまま残り、築14年の高気密(C値0.9㎠/㎡)の住宅が200m以上流される」といった事象が確認されていました(出典:日経ホームビルダー)。結果的に、築40年の住宅よりも、新しい住宅の方が被害が大きくなった事例です。

浮き上がるのは基礎断熱の住宅

このように住宅が浮き上がってしまい倒壊、大きく傾いてしまうなどの被害が複数報告されています。日経ホームビルダーの記事によれば同地域だけでも10軒以上が同様に浮き上がり倒壊するなどの被害があったことが報告されています。

日経ホームビルダーのレポートによれば、このように浮き上がってしまう事例は「基礎断熱」に起因している可能性が指摘されています。一条工務店は「床下断熱」であり、基礎断熱は採用されていません(風呂のみ基礎断熱です)ので基本的には今回確認されたような浮き上がって流れてしまうという問題とは直接は関係ありません。

日経ホームビルダーの記事においても住宅メーカー名は言及されていませんが「床断熱の住宅は軽微な被害」と題して、被害が少なかった事例として一条工務店のi-smartの平屋が掲載されています。

上記のi-smartの隣家であった「住宅D」は住宅が浮き上がってしまい大きく傾いてしまいました。

このように「住宅が浮き上がる」ということは、結果として周囲の住宅に比べて大きな被害をもたらす可能性のある危険な事象となっています。

これまでの一条工務店の住宅はソーラーパネルが搭載されており、かつ、総タイルといった比較的重量が重たいこと、そして、基礎断熱ではなく床断熱が採用されていることから、住宅そのものが浮き上がってしまうということはあまりありませんでした。

しかし、耐水害仕様では実際に住宅が浮き上がってしまうことが実験によって確認されており、また、最近分かってきた住宅が水害に伴い浮き上がることによって甚大な被害を生じさせる可能性が明らかとなってきたことから、直ちには販売できなかった、といった経緯があったのであろうと思われます。

そのため耐水害住宅ではこの「浮き上がり現象」をどのように回避するか?という点が販売に向けた焦点となっていたと推察されます。そして、今回耐水害仕様の販売が解されたことに伴い「その解」が示されました。

一条工務店が示した2つの解決策

浸水深が想定を超えたらあえて浸水させる「注水タイプ」

これは昨年の記事の段階でも想定していた仕様で、極々真っ当な、正攻法とも言える対策です。すなわち、水害の水深が限界を超えたら「あえて室内に注水してしまう」という仕様です

一条工務店のサイトでの説明にあった、下の写真の「小さな煙突」のような部品が肝となっています。地面から1.0m~1.3m程度?に設置された「下向きの穴」が空いた部材を設置し、浸水深が下の矢印の位置(1m超)を超えると「基礎内部」に浸水をさせていく仕様となっています。

仮に煙突部分の高さを1.2mとすると、水深が1.2mを超えると基礎内への浸水、すなわち「床下浸水」がはじまります。そして、基礎の高さ、ここでは仮に50cmとすると、水深が1.7mを超えると床上浸水に至るということになります。

従来浸水深が床面の高さ(約0.5m)を超えると床上浸水になっていたものが、浸水深が1.7mに達するまで床上浸水に至らないという仕様になっています。1.7mの水害となるとかなり大規模な水害となるため、水害の多い地域であってもほとんど起きないと想定されることから、十分に水害に強い住宅になると思われます。

また、仕様限界を超えて直ちに室内に浸水してしまうのではなく、煙突のような部材によって「先に基礎内に浸水させる」ことで室内への浸水を可能な限り避けるという点に工夫が見られます。

家が浮く!?なんじゃそりゃ?係留ボート住宅:浮上タイプ

注水タイプは誰もが考えつく(作れるとは言っていない)仕様であり、また、極めて合理的な耐水害仕様と言えるかと思います。私自身は耐水害住宅が販売されるとしたら「注水仕様」以外はあり得ないと思っていました。

しかし、一条工務店が示したもう一つの仕様が「浮上タイプ」です。。。。もうね、、、何考えているの?と思う仕様です

水深が仕様限界を超えるまでは注水仕様も浮上仕様もその挙動に変わりはありません。外部の浸水を室内に入れないよう「防水によって耐えて」います。しかし、仕様限界、おそらく1.2m~1.3mを超えてからが浮上タイプと注水タイプとでは大きく挙動が異なります。

注水タイプは、限界を超えたら「あきらめる」、水害をもたらす自然にはかなわないとして基礎内への浸水を優先するという「あがき」を魅せながらも、最後は室内への水の浸入を許してしまいます。注水タイプが「最後はあきらめる」のに対して浮上タイプは「刻々と深さを増す水の脅威から浮き上がって逃げる」という仕様です

「水で浮いてしまうならば船みたいに浮き上がってしまえば良いじゃないか!」これは誰もが一度は思いつく、でも、普通ならすぐに「こりゃダメだ」とあきらめる仕様と思います。先ほども書いた通り、「家は浮いてはならない」ものです。一度浮き上がってしまえば住宅そのものが流されたり、流されないまでも大きく傾いてしまったりと、浸水以上に大きな被害をもたらします。家は船ではありません。しかも、水深1.5mを超えるような大規模な水害をもたらす「嵐」の中に漕ぎ出すことができるような「船」にはなり得ません。そのため、普通はこのような仕様は取り得ません。

でも、一条工務店が出した解は「浮き上がってもきちんとコントロールされていれば問題がないだろ」というものです。

実際に浮き沈みしている映像は下の動画(元動画はこちらのページの最下段)をご覧下さい。確かに水かさが増すに従って浮き上がっていることが確認できます。

なんだか、ツッコミ所はたくさんあります。ただ、、、、スゴイです。

別に技術が秀でている分けではありません。もちろん開発に携わった方は多くの苦労をされたと思いますが、それでも技術的には、どこのハウスメーカーでもやればできると思います。理屈も極めてシンプルです。防水を極めれば家が浮くのは当然です。理屈が通っているのだから、実験しよう、と考えて実験してみるのも分かります。ただ、、、これを商品として販売するのが、、、意味が分かりません^^;普通だったら「いや、これ売れないよね?万が一のときはどうするの?」となって、実験までで終わり販売に至らないのが「普通の企業」の判断と思います。しかし、一条工務店ではこの浮上タイプを「商品」として販売してしまうと言う点が、すごいと思うのです。

耐水害住宅の課題

仕様の制限が多い

これは既に多くの方がインスタなどで述べられていることですが、グランセゾンでは採用できないことをはじめとして、玄関ドアはかなり限定された商品からしかせんたくできないことや、1階の窓は全て「開き戸」となり一般的に多く用いられる「引き戸」を採用することができません。これは、純粋に外部か押しつけてくる「水圧」に耐える上で避けようがないことと思います。

その他、詳細についてはまだ十分に把握できていませんが、間取りなどにも多くの制限が生じると思われます。

良い面としては、間違いなく気密が上がるので、冷暖房の消費電力量は減る点と思います^^;一条工務店のi-smartの通常仕様では、気密性能C値0.59㎠/㎡となっています。これは、延べ床面積35坪の家で、68平方センチ、約8cm四方の正方形の穴しか住宅全体で空いていないという状態であり、住宅としては十分に高気密に分類されます。

しかし、この気密性能では総二階建てとしたら1階部分には34平方センチ、約6cm四方の正方形の穴が一つ空いている状態となってしまいます。快適な気温を維持するには十分な気密性能ですが「防水」としては全然性能が足りません。6cm四方の穴が空いた状態で水に沈めればドバドバと水が入ってくることは容易に想像できます。そのため、少なくとも水に沈むことが想定される部分については穴がほぼない「気密性能C値をゼロ」としなければならなくなります。結果として、気密性能は上がることが想定されます。ただ、それが実感できるかは微妙ですが^^;

このような仕様上の制限は、耐水害という特殊な仕様上一定程度仕方ない部分かな?と思いますし、もしもこの耐水害仕様に高いニーズがあり、売れ行きがよければ徐々に仕様の制限は解除される方向になると思います。

「実住宅」ならではの事情によって浸水の可能性が残る

耐水害仕様を採用すれば、万が一の水害が発生しても確実に浸水を防いでくれるか?というと、残念ながらそれはありません。

実験住宅と実住宅の違いによって一定の確率で、耐水害住宅でも浸水が起こると考えます

実験住宅は、ほぼ新品の住宅ですから、ゴミなどが窓や玄関ドアに挟まっていることはありません。しかし、実住宅では、玄関ドアや窓を頻繁に開け閉めします。その結果、小石が挟まっていたり、それこそ砂が貯まったりすることでどうしても「隙間」が生じやすくなってしまいます。

一条工務店の耐水害仕様ではこのような点に対しても配慮はされており、中空のゴムパッキンが全ての窓や玄関ドアに取り付けられているとのことです。

車のドアパッキンと全く一緒と考えて良いかと思います。車のドアパッキンを想像すると、相当な階数のドアの開け閉めや多少の小石で直ちに水漏れすることはないかと思います。しかし、水深が1m近くになるような状態では、「完全」ではありません。そのため、100棟の耐水害仕様住宅が水害にあえば1棟ぐらいは一定の浸水は起こると思われます。もちろん、何も対策をしていない住宅に比べれば影響は軽微と思います。

耐水害住宅故の危険性

以下の指摘はあくまで「そんなこと考えていなかった」ということが少なくなるよう指摘するものであって、「だから耐水害住宅はダメ」ということでは全くありません。むしろ、耐水害仕様は素晴らしい「選択肢」を提供してくれる商品と思っています。だからこそ、そういうリスクがあり得るということを知っておいて欲しいと思っています。

注水仕様住宅が「浮き上がる」可能性

注水仕様住宅は、煙突のような部材から注水することによって浮き上がり現象を回避する仕組みです。しかし、以下の2つのパターンでは「注水の失敗」が起こり浮き上がりと流出による倒壊、住宅の急激な破壊が起こりえると思われます。

1つめは、「注水口」が塞がってしまうケースです。実大実験に使われたような「泥水」であれば十分な太さの注水口を設けておくことで、万が一1m以上の浸水深に達したとしても、適切に基礎に水が誘導され浮き上がることはありません。しかし、実際の水害地では、流れてくるのは「泥水」だけではななく「様々な漂流物」が流れてきます。住宅が倒壊した際の木材片、紙や家屋内にあったはずのプラスチックなど一定の大きさを持ったゴミが流れてきます。そうしたゴミが「注水口」に詰まってしまえば、うまく注水が行えない可能性が生じます。

一条工務店の耐水害仕様では、そうした自体も想定して「複数の注水口」が設けられており、1箇所が詰まってしまったとしても他の注水口から注水が行われるようになっています。しかし、全ての注水口が詰まってしまう可能性は決して否定できるものではありません。また、一部の注水口が詰まってしまっただけであったとしても、注水速度は落ちてしまうため、水害による水深の上昇速度に注水速度が追いつかなくなる可能性も考えられます。ただ、これは回避策は比較的簡単で将来そうした自体が実際に確認されたら注水口に大きな「金網」のようなカバーをすることになり、問題は解決できると思います。

2つめは、「津波」や「河川の決壊」「ダムの崩壊」といった極端に水量の大きな水が流れてくることによって、注水口の能力を超えて水深が上昇するといったケースです。このようなケースではやはり浮き上がりは避けられないかと思います。

ただし、いずれのケースにおいても、上記のような状態になっている場合は耐水害住宅が耐えられる限界を超えているとも考えられ、それによって結果的に浸水したり倒壊したりしたとしても、それは自然の脅威に対する耐水害住宅の限界、とも受け取れるものと思います

浮上仕様は「漂流物」によって被害が拡大する可能性もある

注水タイプが浮き上がったりしてしまうケースというのは、そもそもそのような自体になった場合には周辺の耐水害仕様でない住宅はほぼ壊滅的な状態となっており、仕方がなかったとあきらめられる状況と思います。

しかし、浮上仕様の場合は以下のようなケースによって周辺住宅よりも「被害が拡大してしまう可能性」があるように思います。

それは、一度浮き上がった住宅と基礎の間に「大型の漂流物」が流れてきた場合です。下の画像をご覧下さい。

大規模な水害が発生した場合、浮上タイプの耐水害住宅は浮き上がります。浮き上がった際に、住宅が流されないよう「船の係留ポール」のような部材によって住宅と地盤が強固に繋がった状態となっており、水害が去り、水が引いていけば住宅は基礎の上に戻るのが浮上タイプの耐水害住宅の基本的な挙動になります。

しかし、大規模水害発生時(少なくとも住宅が浮き上がる1.5m以上の水害)が発生すれば、周辺の多くの住宅が倒壊し、大型の漂流物が多く流れてくる状態となっていることは想像に難くありません。そして、浮上タイプの耐水害住宅はそのような中ではどうしても「ゴミだまり」となりやすい状態になり、浮き上がった住宅と基礎の間に漂流物が挟まってしまう可能性は十分に考えられます。

現時点では一条工務店の資料から上記のようなケースにおいて住宅がどうなるのか?についての情報は公開されていません。直感的には上記のような状態になれば室内の冷蔵庫は転倒し、その他家電や食器は落下を免れないように思います。そして、水害だれば1階部分しか被害に遭わなかったはずなのに、2階部分についても同様に傾くためおおきな損傷が生じます。

それでも、住宅そのものはジャッキで持ち上げて戻せるのであれば、水害に遭うよりもましと考えることはできます。しかし、上記のように住宅が大きく傾けば住宅自体に不自然な大きな力がかかることになり、住宅そのものが破壊しないまでも「窓ガラスが割れる」といったことは十分にあり得るように思います。そして、水が引いていく状態で窓ガラスが割れれば、、、一気に水は室内に浸水し、結果的に住宅の1階も2階もぐちゃぐちゃになった挙げ句に室内は泥水、といった自体も想定できます。何らか対策が成されている可能性はありますが、現時点の耐水害仕様では上記のような自体がどこまで想定されているかはわからないように思います。

「安心」が「安全」を脅かす

耐水害仕様は「安全」は提供してくれない

ここまでは、耐水害仕様住宅が損傷する可能性の指摘でした。ここからは「安全」について考えます。

これは、一条工務店自身が一番分かっているはずなので、耐水害仕様住宅を販売する際に営業さん達に「言っては行けないこと」は十分に周知されるものと思いますが、耐水害仕様住宅に住んでいる人も「水害」が予想されるときには「避難」が必須です

耐水害住宅は上でも挙げたように「完全に水害を防ぐもの」ではありません。あくまで、水害が発生した際に財産への損害を最小化し、さらに、水害が終わったあとできる限り早期に通常の生活に戻すといったことが目的の商品です

耐水害住宅であっても、今まさに水害が発生している状態にあっては室内は極めて危険な状態となります

注水仕様住宅については水害発生時は室内ドアは空かなくなります。すなわち避難が困難となります。窓は強化ガラスですから簡単に割ることはまずできません。しかも防犯ガラスの場合フィルムが入っていますのでまず割ることはできません。そのまま浸水心が1m程度で引いてくれれば、安全は守られますが、過去の複数の水害では浸水深6mのケースなどもあったことは事実です。そのような場合、「耐水害住宅だから安全」という思い込みは「命取り」となりかねません。

浮上タイプでは「浮き上がり」が生じた状態から家の中は「極めて危険」な状態となります。浮上状態においては強固に係留されているとは言え、「家は地に足が付いていない状態」となります。周囲が氾濫した状態においては室内は大地震並みに揺れることは容易に想像できます。1時間以上も続く地震は通常はあり得ませんが、まさに1時間以上も大地震にさらされたかのような状態に置かれることになります。家具の転倒による怪我の可能性など、避難していれば防げるものを失う可能性が十分に起こりえます。

以上はかなり「異常な状態」と思われるかも知れません。しかし、水害によって1m近い浸水に晒される状態が既に十分すぎるほどに異常な状態なのです。ですから、ハザードマップを確認して水害に晒される地域においては耐水害住宅であるかどうかとは全く関係なく「避難が必須」という点には変わりないという認識が必要です。

一条工務店もこの点は十分に理解しており、一条工務店の耐水害仕様紹介ページにおいても「一言も『安全』という言葉は使われていません」。また、ページ内では「安全に避難できる場合は、(中略)避難していただくようお願いいたします」という記述もあります。

耐水害仕様が提供するのは「安全」ではなく「安心」

耐震住宅の場合は、「安全」を提供してくれます。地震は事前に予知することができないため、突然襲われます。その際、慌てて外に飛び出せば耐震構造をとっていない外壁に潰されたり、周辺の住宅の瓦の落下などに晒されることになり、「危険」に晒されます。それ故、耐震住宅内に留まる方が安全と言えます。

一方で、耐水害住宅は津波、川の氾濫、河川の決壊等々、水害の要因の多くは一定程度事前に警告が発せられるものが多いのが事実です。「安全な場所」への避難が可能であるならば、水害が発生する前に避難を行うことが第一となります。

耐水害仕様が守ってくれるのは「住宅や家財などの財産」であって「安全」ではないということは耐水害仕様を選択する上で常に頭に置いておかなければならないように思います。

安心が安全を脅かす

耐水害仕様を採用したお宅では、災害に直面したとき、「耐水害仕様だから大丈夫」というあまい悪魔のささやきが聞こえてくると思います。しかし、それに騙されないために、家族で事前に共通認識を持っておくことが必要と思います。

耐水害住宅だから安全だよね、という考えを少しでも持ってしまうと、通常だったら避難するような災害の予想があっても、「耐水害仕様だから大丈夫じゃないか」と思ってしまい、「安全に避難をするタイミングを逸することに繋がります。」一条工務店が書いているように「安全に避難できる状態」のうちに避難をするのは必須という考えを家族で共有しておくことが必要と思います

耐水害住宅が提供してくれるのは、そういった避難した際に「水害が終わって家に帰ってすぐに日常に戻れる」という安心なのだろうと思います。水害が発生した状態での不安は避けようがありませんが、水害が終わって家に帰って室内への浸水がなければ、本当に安心すると思います。

しかし、「耐水害住宅だから大丈夫」と考えてしまうと、結果的にその安心が「安全を脅かす」ということは重々理解しておくことが必要と思います。

水害発生地域に家を建てる際に新しい選択肢ができた

水害が発生しない土地を探すことは重要、、、でもそこに住まなければならないこともある

家を建てる際に、水害が発生しそうな地域に家を建てないようにするということは非常に重要です。しかし、現実としては水害が発生する可能性がある地域に家を建てざるを得ないケースがあるのも事実です。

家を探す際、土地から探すのであれば是非ハザードマップを活用して下さい。現在公開されているハザードマップは「1000年に1度」の水害を想定して設定されています。ハザードマップ外であっても水害に遭うことが絶対に無いわけではありませんが、ハザードマップ内の地域に比べればずっと確率は低くなることは多くの研究事例が示している所です。ですから、土地を探す際はハザードマップを確認しながら土地探しをするのが一番と思います。

ハザードマップをご覧になっていただくとわかりますが、地域にもよりますがほぼ全域がハザードマップの水害地域になっていることも多くあります。また、小学校や通勤、親の住まいの関係、その他非常に多くの要因によって「そこに住まなければならない」ケースがあるのも事実です。

これまでは逃げることしかできなかったが、新しい選択肢が生まれた

従来はそうした地域に住み、そして水害に見舞われた場合、逃げることしかできませんでした。

水害が起こりえる地域に住まざるを得ない状況にあっても、「家」そのものを守る術はほぼ皆無でした。

そのような中で、一条工務店の耐水害住宅は、「完璧」ではなくても、十分に現実的な金額で、「家自体を水害から守る選択肢」を提供したという点で、画期的なものと思います。

仕様が制限されたり、万が一の水害時でも浸水を100%防げる分けではない、保険の適用がどのような形になるのか不明など、問題がないわけではありません。

しかし、従来は「逃げることしかできなかった水害」に対して、生活者として「家と財産を守る」方法が提供されたという点で、極めて偉大な商品と思います。あとはその選択肢を採用するかしないかはこれから家を建てる方の判断と思います。

おわりに

でもそんなに売れないだろうな~^^;

先でも言った様に、耐水害住宅は新しい選択肢として画期的と思います。

でも、一方で、現時点では耐水害住宅はそんなに売れないだろうな~とも思います。

現時点では、耐水害仕様を採用する場合の制限が多く、採用に躊躇する方が大半と思います。そのため、河川に隣接した住宅地など水害のリスクが極めて高い地域では一定程度採用される可能性はあるものの、商品として馬鹿売れすることはないようにも思います^^;

そろそろ全館床暖、高断熱高気密に続く何かが欲しい?

一条工務店のすごいところは、耐水害住宅や免震住宅のようにそれほど売れないだろう商品も実際に開発して商品として販売していく力にあると思います。

しかし、「売れない商品の開発」にはお金がかかります。これまでの一条工務店は標準仕様の充実、全館床暖、高断熱高気密、大容量ソーラーパネルといった「売れる商品」に下支えされているのは間違いないように思います。

一方で、高断熱高気密であれば従来は大手ハウスメーカーの中で群を抜いていた一条工務店ですが、近年はZEHやZEH Readyなど、一条工務店が突出していた部分に多くのメーカーが参入してきて差別化が難しくなってきているようにも見えます。

低価格の大容量蓄電池と太陽光のセットなどは新しいですが、高気密高断熱や全館床暖に比べるとやや決定力には乏しいようにも思います。

そう思うと、耐水害住宅のような商品を提供するためにも「次の決定打」がそろそろ欲しいように思います。例えば、電気代ゼロの家や、サブスクリプション型の住宅、生活価値のサービス化など、全く新しくて、ほぼ全世帯が採用したくなるような何かが出てくるころかな?と期待しています\(^o^)/