一条工務店と値引き:値引きって何だ?

こんにちは。さすけです。

一条工務店は値引きをしない、そんな噂は他の方のブログなどを見ているとよく見かけます。

私も、一条工務店に初めて訪ねた際、おおよその価格を教えてもらいました。その際、営業の方が小さな声で、ぼそっと言いました。

「うちは値引きはできないので、このままの価格になります。。。」

それは自信なさげなとても小さな声でした。しかし、そのときは、ああ、ブログに書いてあったことは事実なのかという程度にしか思いませんでした。

しかし、ちょっと考えて見ると不思議です。

いや、値引きをしないことが不思議なのではなく、値引きが存在することが不思議なのです。

私は、一条工務店を訪れる前、一条工務店を訪れた後も含めて何カ所かのハウスメーカーをまわりました。いずれのメーカーでも、大まかな間取りで見積もりを作ってくれて、値段を提示してくれました。

そして、最後に営業の方から必ず一言

  さすけ様の予算に合わせてできる限りの努力をさせていただきます!

と言われました。努力とはすなわち値引きのことです。ハウスメーカーによっては、もっと単刀直入に、

 うちでは2段階の価格を提示しておりまして、まずは最初の価格を提示させていただきます。実際に検討を進めさせていただけるようでしたら、値引きを踏まえた価格を提示します。

と言われました。こうなるともう意味がわかりません。単なる2重価格です。

世の中には値引きがあふれています。私たちもそれが当然のことのように受け入れています。しかし、値引きって何でしょうか?

値引きには大きく3パターンがあるように思います。

1. 売れない商品を一気に売ってしまうための値引き(在庫一掃)

2. 大量購入してくれるお客さんに対して行う値引き(大量仕入れ)

3. 定価を高く設定しておいて、お客さんに買う気にさせるための値引き(吹っかけ)

です。

私たちが日本に暮らしている限り、日常生活の中で目にする値引きの多くは1と2です。

スーパーなどでよくおこなわれる「在庫一掃処分」は1の典型です。大型スーパーなどで見かける値引きの多くは2のパターンでしょう。

3のパターンの値引きは、最近の日本ではあまりお目にかかりません。途上国のお土産屋さんに行けば、非常にありふれた値引きです。旅先での値引き交渉も楽しいのですが、日常生活であれをやると疲れます。

家の値引きにもどりましょう。

一般的に、家は注文を受けてから作るので、作り置きの在庫はありません。よって1の値引きはありません。また、私たちは家を通常何軒も買うことはないですから、2の値引きもありません。

ということは、家の値引きとは3の値引きにあたります。要するに、

最初はふっかけておいて、後から値段を引いて買う気にさせるための値引きです。

別にこれが悪いわけではありませんが、ふっかけておいて値引きとはちゃんちゃらおかしい気もします。

本来、家の値段は一軒一軒、使用する資材、工賃を積み上げて原価を計算し、そこに工務店なりの利益を載せて販売する価格のはずです。ということは、原価計算さえきちんと行えているならば、値引きの余地はあまりないはずです。

しかし、現実には数百万円単位の値引きがざらにあります。なぜこのようなことがまかり通るのでしょうか?

私たちは日常の消耗品に関しては適正価格に対する感性、おおよその価格感覚とでも言うべきものを持っています。

例えば、缶ジュース1本は120円です。娯楽施設等で缶ジュースが150円で売られていたりすると、「ぼったくりやがって」と思いながら仕方なく買ったりします。

しかし、家は一生に1回、多くて2回程度しか建てません。そうなると、適正価格に対する感性、価格感覚を養うことができないため、手探りで適正価格に対する感性を養っていくしかありません。そこに、ある意味つけ込んできたのが値引きと言うことになります。

値引きをしてもらえばうれしいのは人情です。しかし、値引きの余地があるということには怖さもあります。

例えば2500万円の価格を提示した家で、原価が1500万円、企業の利益分が500万円、ふっかけ分が300万円とします。このとき、最初は2500万円で提示し、後から「お客様がそこまでおっしゃるなら、私たちも苦しいですが~」とか何とか言いながら100万円値引きしてみます。

これで買ってくれたらラッキーです。本来はないはずの利益が200万円も転がり込んでくるのですから、会社としてはこの「良い営業マン」には販売インセンティブの他に金一封の一つも包みたくなってしまいます。

しかし、これでも買ってくれなお客さんには、「本当に最後です。これ以上やると私が怒られてしまいます。」とか何とか言いながらもう100万円ひきます。大半のお客さんはこのあたりで折れてくれるのではないでしょうか?

しかし、手強いお客になると、まだ渋ってくるかも知れません。こうなったら、最後の茶番劇の開幕です。

「これ以上の値引きは本社の稟議が必要です。普段はこのようなことはしないのですが、○○様には我が社の家を大変ご理解いただいており、是非お力になりたいと思います。そこで、さらに100万円の値引きについて本社役員決裁に回させていただければと思います。ただ、稟議を回す以上、許可が下りた場合はご契約をいただけるというお約束をしていただけますでしょうか??」

とでも言っておいて、別に稟議に回す必要はありません。次のお客獲得に向けて努力をしつつ1週間待ちます。

「お客様!決済がおりました。私も、本社に○○様の状況や熱意などを説明して、何とか決済をもらうことができました。それでは、ご契約をお願いします~」

となるわけです。これはフィクションですが、おおよそこんなところだと想像しています。悪意に満ちた想像で済みません。でも自分ならやります!それに、別にこれが悪いわけではありません。

でも、私としては

値切り倒してやっと適正価格で売ってもらえる状況って、どうなのよ

と思ってしまいます。

これが、旅先のお土産程度であれば、少し歩いた先のお店で同じものが値切り倒した価格より安く売られていても、良い思い出です。しかし、一生に一度しか買わない家であれば、それは大きな後悔につながってしまいます。

こんなことがまかり通るのは、2000万円の家を2000万円で売ることの難しさもあるのだと思います。これは顧客の側に価格感覚が無いことも要因になっていると思います。

適正価格が2000万円で正直に2000万円ですと説明して、顧客が1900万円にならないかと言ってきたら、どうにもならなくなってしまいます。缶ジュースであれば、120円の缶ジュースを110円にならないかと思うことはありませんが、家のように価格感覚が無いものに関しては、もしかするともうちょっと安くなるのでは?と思ってしまうのが人情です。

そういったことへの防御策として値引きを前提とした価格設定も仕方ないとも思います。

一条工務店の見積もりに思うところがないわけではないですが、少なくとも値引きをしないというスタンスをとって、適正価格(かどうかまでは分かりませんが・・・)で販売するというのは勇気のいることだろうと感心してしまいます。

と書いてはみたものの、やっぱり

営業さん、値引きしてくれたらうれしいですよ!

と書いておいてみます。

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