【追記】一条工務店フィリピン工場操業停止:新型コロナウィルス感染拡大がこれから家を建てる人に与える影響

【追記】一条工務店フィリピンの再開目処が立ったとの情報がありました!(参考:経済区庁、カビテ経済特区の運営再開)本文中に書いていた政府との工場再開交渉がうまくいったようです(^_^)これで引き渡し遅延のリスクはかなり減少したと思って良いと思います。ただ、一条工務店がバスや従業員の滞在施設等を準備しての慎重な再開にはなると思われますので、今後も予断は許されない状況と思います。万が一、工場内などで感染者が出た場合は直ちに工場の操業も再度停止に追い込まれる可能性もありますので、今考えられることは考えて備えを採っておく必要はあると思います(^_^)それでも再開の目処が立ったことは本当によかったです。現地従業員の方たちが収入がなくなることを心配されていたのも多く確認していましたので、健康に十分注意しながら少しずつでも工場の本格稼働に至ってくれることを願っています!

【もう一つ追記】こちらもこれから家を建てる方にとって安心材料となる情報です。本文中で触れていた住宅ローン減税を受けるために今年中に家の引き渡しを受けなければならないという要件が本日緩和される方針が示されました!(参考:住宅ローン減税の要件を緩和 コロナで工事遅れを救済)様々な懸念事項に対して政策的な対応も進められていますので随時情報を求めないとならず大変ですが、どうぞご自身の状況に応じて最新の情報を得るようにしてください(^_^)

こんばんは。さすけです。

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックによる影響が世界全体に様々な影響を及ぼしています。

そして、2020年3月20日には一条工務店フィリピン工場がCOVID-19の影響によって操業停止に追い込まれており、一条工務店で家を建てる方にとっても無視できない状態となっています。

本日は、これから一条工務店で家を建てる方にとってCOVID-19の影響が及ぼし得る影響について書かせていただきます。

最初に注意点として、COVID-19の影響は個人、企業、国家のいずれにとっても最終的には何もしようがなく、「なるようにしかならない」問題です。また、私は疫学や医学の専門家ではありません。そのため、様々な対策が正しいのか、間違えているのかは判断できません。現在の状況を踏まえると、正確な情報以外は混乱を招くだけと認識しています。ですので、本ブログはあくまで個人の一意見と受けとっていただけますようお願いします。

ただ、私は一条工務店の工場の生産状況等については、おそらく一条工務店の大多数の営業さんたちのよりも正確な状況を入手できていると思っています。別に特殊な情報ルートを持っているわけではなく、正確な情報として、一条工務店フィリピン工場に勤める人たちがどのような情報発信をしているのか、また、工場の稼働状況をリアルタイムに知るためにはどのような情報にアクセスをすれば良いのかをブログを長く続けてきたことでそういった情報元を多く知っているというだけに過ぎません。私がアクセスできる情報と皆さんがアクセスできる情報には全く違いがありません。そのため、可能な範囲で情報のソースを記述させていただきます。私の書く内容がおかしい、事実か判断できない場合は、情報ソースを参照するようにして下さい。

目次

一条工務店フィリピン工場の稼働の状況

一条工務店フィリピン工場は本当に操業停止しているのか?

一条工務店のフィリピン工場が操業を停止した、という情報に間違いがないのか?という点についてですが、この点はかなり自信を持って確実であると言えます。

下の画像は、一条工務店フィリピン工場の社内で従業員に配布された資料となっています。

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一条工務店フィリピン工場の一つである「HTI」という名前が右上に見えます。このHTIについては後で説明をします。この文書はHTIの管理者が作成したものであることが確認できます。

また、文中にはCOVID-19の感染拡大防止を目的として「STOP THE OPERATION(操業停止)」が行われること、そして操業停止開始は「本日(2020年3月18日)18時以降」に実施される旨が記述されています。

操業停止期間は上記文書配布時点では3月22日までとされていましたが、3月24日時点においても停止期間が延長されており、実質的には操業再開は未定となっています。

上記は一条工務店フィリピン工場の操業停止を示す資料の一つですが、この他にも多数の情報から一条工務店フィリピン工場の操業が停止しているということは間違いないと断言できる程度に確認をしています。

一条工務店フィリピン工場、HRDとは

一条工務店フィリピン工場の操業停止を理解し、現状を正しく判断するためには、一条工務店フィリピン工場と一条工務店の関係を正確に把握しておくことが必要です。

先ほど私が「HTI」を一条工務店フィリピン工場の一つと表現していたこともこの点を知っておかないと理解できません。

一条工務店フィリピン工場については、下記の記事をご覧下さい。

一条工務店のフィリピン工場(H.R.D.)でかっ!!なんだか巨大化してます。。。一条工務店躍進の原動力

年間1万棟以上の生産を支えるフィリピン工場の敷地面積は1㎢以上、従業員1万8千人以上とかなりの規模の工場となっています。

一条工務店フィリピン工場では、一条工務店が建築する年間1万棟以上の国内の住宅部材、壁や断熱材、さらには外壁タイル、キッチンなどの住設、階段に至るまでほぼ全てを生産しています。また、設計打合せで提供されるCAD図面等もフィリピン工場で制作されています。

この一条工務店フィリピン工場の操業停止は、国内で一条工務店が提供する住宅建設に大きな影響を与えることはほぼ間違いありません。

私たちが一条工務店フィリピン工場と呼んでいるものについてもう少し詳しく説明させていただきます。一条工務店フィリピン工場はHRD、HTI、Wukong、SCADという大きく4社の企業に分かれており、多くの方が聞いたことがあるH.R.D. Singaporeがいわゆる持株会社のようなイメージで、一条工務店フィリピン工場の全体管理を行う企業(ヘッドクォーター)、HTI、Wukong、SCADの3社が実際の住宅部材を生産する工場を運営する企業となっています。H.R.D. Singaporeの日本国内の代理店?が「日本産業」となっており、ソーラーパネルなどは日本産業が一条工務店に提供をしています。

先ほどの操業停止を示す資料にあった「HTI」も、この一条工務店フィリピン工場の一つとなっています。

一条工務店とHRDは資本関係は(私が確認できる範囲で)なく、全くの別会社となっています。

では一条工務店とHRDの関係とはいったいなんなのか?というと、一条工務店とその他の一条工務店国内フランチャイズ店の全ては、HRDとフランチャイズ契約を締結しており、HRDで生産された建築部材の販売を行っているという関係になります。すなわちHRDをはじめとした一条工務店の商品開発から製造までを行う「一条工務店の実態」であり、日本国内の一条工務店はHRDが開発・設計・製造した商品を国内に提供する代理店のような存在と言えます。

詳しくは下記の記事をご覧下さい。

一条フランチャイズ店と一条工務店のびみょ~な関係?

一条工務店とHRDの関係を一言で言うと下記のようになります。

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しばしば、一条工務店の国内フランチャイズ店、例えば一条工務店群馬でなんらかの問題があって一条工務店本体に連絡をしても「別会社なので対応できない」と言われてしまうのは上記のような企業構造に寄っています。

一条工務店フィリピン工場というものは、実在はせず、一条工務店フィリピン工場とは、HRD,HTI,Wukong,SCADの総称となっているという点を知っておいていただくとこれ以降の内容が理解しやすくなるかと思います。

そして、今回のCOVID-19の問題で重要なことは、国内で展開される全ての一条工務店ブランドの住宅はその全てが「一条工務店フィリピン工場(HRD,HTI,Wukong,SCADの総称)」で生産されており、一条工務店フィリピン工場の生産が停止すれば、一条工務店の住宅の建築は行えなくなってしまうことを意味しています。

一条工務店フィリピン工場のマニラ首都圏との位置関係

一条工務店フィリピン工場とマニラの位置関係は下記の地図の通りです。

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マニラの中心部から一条工務店フィリピン工場までの距離は直線距離で約24km、陸路で約40km、車で1時間程度の距離にあり、カビテ州というマニラ首都圏の隣接州に一条工務店フィリピン工場は位置しています。ちょうど東京都横浜のような距離感と思って頂ければ良いかと思います。以下でマニラ首都圏という呼称が出てきますが、東京23区のようなものとお持って頂ければ良いかと思います。一条工務店フィリピン工場とマニラは比較的近い位置関係にあります。

フィリピンにおけるCOVID-19の状況

フィリピンにおける緊急事態制限~状況の深刻化

ここまで一条工務店フィリピン工場の概要を示してきました。続いて、フィリピン国内におけるCOVID-19の感染状況を確認します。こちらも事実関係のみを述べていきます。

2020年3月6日に海外渡航歴のないCOVID-19の感染が確認されたことから、3月9日、フィリピンのドゥテルテ大統領は「公衆衛生の緊急事態」を宣言しました(出典:JETRO)。これを受けて、マニラ首都圏の自治体では自主的な学校の休校などが行われました。

その後3月12日には、3月15日~4月14日までの1ヶ月間、マニラ首都圏を封鎖することが発表され、14日には医療従事者や食品宅配業者等を除く夜間の外出禁止令が発令されました(出典:JETRO)。

ただし、3月9日時点では、一条工務店フィリピン工場が位置するカビテ州では感染者2名が確認されていたものの緊急事態宣言には至っていませんでした。また、3月14日の時点でも、一条工務店フィリピン工場は稼働が可能な状態となっていました。

その後3月15日には、フィリピン港湾庁(PPA)がマニラ港から輸出する貨物などを積んだトラックがマニラ首都圏を通過する際は事前に「貨物車通行許可証(CEWP)」を入手するよう通達され、即日実施されました(出典:JETRO)。突然の発令だったこともあり、マニラ港周辺で混乱が生じたとのことです。この時点で、一条工務店フィリピン工場で生産された日本向け貨物についても当然大きな影響を受けることとなったと推察されます。

事態が大きく動いたのが、3月16日で、ドゥテルテ大統領は3月17日から市民の移動を制限する範囲をマニラ首都圏から、マニラの首都が所在するルソン島全域に拡大することを発表しました。これによって、フィリピン国内の5700万人が移動制限の対象となりました。この発表に伴い、国内の公共交通機関の大部分が停止しました

一条工務店フィリピン工場の生産停止

その後、このフィリピン国内の大規模なロックダウンを受けて、一条工務店フィリピン工場が位置する経済特区(PEZA ZONE)も封鎖の対象となり一条工務店フィリピン工場の操業は停止しました。そのため、202031818時、一条工務店フィリピン工場の操業も停止されました。

一条工務店フィリピン工場が位置するフィリピンカビテ州の州知事、Jonvic Remulla氏のFacebookでも、一条工務店フィリピン工場の実名であるHRD/Wukongについて「18,000人の従業員を擁するHRD/Wukongは、最初の協力者の1社として操業を停止した」ことが述べられています

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一条工務店フィリピン工場操業停止期間(日々延長~未定)

一条工務店フィリピン工場の操業停止期間は、3月18日発表時点では3月22日までとされていました。その後、3月20日には操業停止期間が23日まで延長され、3月23日には24日、24日には25日までと連日操業停止期間の延長が発表されています。

操業停止は一条工務店フィリピン工場の意思とは関わりなく、フィリピンの政府の意思決定によって延長されていると考えられます。よって、現時点では操業停止期間は「未定」と捉えるのが現実的な捉え方と思われます

フィリピンのCOVID-19の深刻さ

日本の現状、そしてこれまでの政府対応を踏まえて見た時、フィリピンのCOVID-19に対する対応はあまりにも極端なようにも見えるかも知れません。

実際、緊急事態宣言が出された3月9日時点では1人の感染経路不明の感染者が出たとは言え、フィリピン国内のCOVID-19感染者は「たった」10人に過ぎませんでした。操業停止から3日が経過した3月21日時点でも、フィリピン国内感染確認数230人、死者18人、内カビテ州感染確認者数10人、死者1名でした。

日本の現状、3月23日時点でクルーズ船を除く国内感染者数1043人、死者41人と比較しても多いとは言えません。

こうした状況を見ると、フィリピンでは感染者数が少ないうちに強い政策的な対応を採ることでCOVID-19感染拡大を押さえ込もうとしており、早期に感染者の低下に繋がることが期待できるのではないか?という楽観的な観測を持ってしまいそうになります。

しかし、残念ながらフィリピン国内の事態は深刻さを増しています。

3月20日から21日にかけて1日あたりの感染者確認数の最大を記録し1日あたり77人の感染者が確認されました。また、21日から22日はその記録をさらに超えた可能性が高くなっています(出典:NNA ASIA)。

そして、何よりも危惧されるのは「致死率」の高さと思います。COVID-19の真の致死率、すなわち無症状感染者も含めた全感染者数に占める死者の比率についてはいまだ不明な部分が多いですが、先進国における「確認された感染者」に占める死者の比率は概ね2%~3%程度、当初事態が深刻化した中国武漢における致死率も4.9%でした。日本における3月23日時点の致死率は3.7%(感染者数1083人、死者41人)となっているのに対して、フィリピンは3月23日時点(日経データ)で致死率6.2%に達しています。そして、その致死率は3月24日には6.5%に上昇しています。

現在事態が極めて深刻化し、医療崩壊を招いているイタリアで致死率9.3%、スペインで6.0%となってはいますが、医療崩壊に至ってはいないと思われるフィリピンでこれらの国と同程度の致死率に達している現状は、極めて深刻です。万が一、感染が拡大し、医療崩壊を招いた場合にはより高い致死率になると予想されることから、現在がまさに瀬戸際となっていると言えるかと思います。

致死率の高さの原因は、医療体制の問題、国内貧困率の問題、そもそも検査が十分にできていない可能性等々様々な要素が考えられますが、いずれにしても感染者数の絶対数だけでは議論できない深刻さが垣間見えている状況にあると言えるかと思います。

そして、先にも述べた通り、感染者人数も直近では上昇傾向にあり、少なくとも数日で減少に転じる可能性は低いと言えるかと思います。

実際、速報値ではありますが3月23日午後4時時点のフィリピン健康保険省発表では、感染者数は462人、死者33人(致死率7.1%)に達しており、前日から80人以上の増加となっています。

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(出典:Inquirer.netより)

フィリピンは経済発展が著しい新興国ではありますが、依然として国内貧困率は18.7%となっており、2割近い人々が十分な医療にアクセスできない国となっています(ここで言う「貧困」とは世帯月収が約22500円(10727ペソ)を下回る水準)。

そのような国で、COVID-19の感染が拡大すれば日本などの高い水準の医療にアクセスできる先進国に比べて事態は容易に深刻化することは火を見るより明らかです。

そのため、フィリピン国内のCOVID-19への対応は今後も強い政策的な対応が行われることが予想されます。

その結果として、一条工務店フィリピン工場が位置するカビテ州において、工場の停止等が長引くことは十分に予測される事態となります

一条工務店フィリピン工場は政府と生産再開に向けた交渉

一条工務店フィリピン工場は、工場が立地する経済特区を管轄するPEZA(フィリピン経済区庁)及び、工場が立地するカビテ州政府と工場の再開に向けた交渉を進めているとのことです。(情報ソースは、ネット上に公開されているものではありますが、個人の特定の可能性があるため差し控えさせていただきます。)

一条工務店フィリピン工場に政府と交渉する程の力があるか?と言えば、これは「ある」と思われます。

フィリピンの国内総輸出総額は2018年時点で674億ドル、約7兆円です。それに対して、一条工務店フィリピン工場の日本への輸出総額は、仮に一条工務店のグループ総売上高4392億円の3分の1程度としても1000億円を超えます。一条工務店フィリピン工場は実質1社に過ぎませんが国内の総輸出額の1.4%を占めていることを意味します。日本を例にすれば、日本の総輸出額81兆円の1.4%、約1兆円の輸出を1社が担っている状況です。また、雇用を見ても、先のカビテ州知事のFacebookにもあったとおり一条工務店フィリピン工場の従業員数は1万8千人を擁しており、地域経済安定上も無視できない存在であることは間違いありません。

そのため、自国経済にとって重要な役割を担う企業の要請を無視することはありません。通常であれば。。。

交渉の詳細については当然知る術はありませんが、おそらく感染防止対策を十分に行った上での操業再開についての交渉と推察されます。そして、これは、通常であればフィリピン国内経済にとってはポジティブなことですから限定的になるかもしれませんが認められる可能性は十分にあります。ただ、現状のフィリピンにおけるCOVID-19の感染拡大状況を踏まえると、今後少なくとも感染者数拡大が横ばいになるまでの期間については完全な操業再開は極めて厳しいと推測せざるを得ないと思われます。

可能性としては、既に生産済みの建築資材のフィリピンから船で移送を許可する等はあり得ますが、それもかなり遅れるということは十分に想定されるものです。

以上を踏まえると、一条工務店フィリピン工場の再開については、現時点では未定、少なくとも直近で完全な再開はかなり厳しい状況と推察されます。

フィリピン以外のサプライチェーンの問題

私たちの家の木材はどこから来ているのか?

一条工務店は木造住宅ハウスメーカーです。年間1万棟以上の住宅を建築するためには大量の木材が必要となります。

仮に一条工務店フィリピン工場が再開したとしても、現在抱える在庫木材を使い果たしてしまうと、それ以降は輸入元からの木材調達が遅れれば住宅部材の製造は行えなくなります。

一条工務店は自社住宅に使用する木材の輸入元を公開していません。

ただ、使用している木材はSPF、スプール(トウヒ)、パイン(松)、ファー(もみの木)といった針葉樹木材です。

一般に住宅1棟を建築するのに、針葉樹90本が必要とされています(出典:全国木材組合連合会)。一条工務店の年間住宅施工棟数1万4千棟とすると126万本の木材をどこかから持ってこなければなりません。

これほどの木材の生産地は世界的にも限定されており、カナダ、ロシア、北欧、そしてオーストラリアとなります。これほどの量ですから1カ国から輸入していることはないと思いますが、フィリピンの地理的な位置関係を考えると、北米(カナダ)、オーストラリアのいずれか、または両方からの輸入に依存していると推察できます。

カナダ、オーストラリアの両国は米国やヨーロッパ諸国と比較すると、感染者数は1000人台で推移しており、ヨーロッパやアメリカに比べると深刻な状況には至っていません。しかし、2月まではヨーロッパ、そしてアメリカがこれほど深刻な事態に陥ることはほとんど誰も予想していなかったにもかかわらず、たった1ヶ月でこれほどまでに世界全体が深刻な状況に陥ったことを踏まえると、予断を許さない状況にあります。

そして、木材原産国においてCOVID-19の感染が拡大した場合、木材の輸入遅延による生産遅延や停止と言った事態は想定しておかなければならない事態と思われます。

この他にも様々な要因、例えば、世界的な海運の状況変化、住宅建築において重要な部材(例えば耐震金物等)の生産遅延等々、様々な要因による生産遅延が想定されます。

現状では、一条工務店フィリピン工場だけではなく、世界的な情勢の変化によって住宅の引き渡しの遅れなどは想定せざるを得ない状況と言えるかと思います。

これから家を建てる人が考えるべきこと

一条工務店に怒っても仕方ない、そして見守るしかできない

今まさに家を建てようとしている方にとっては、多くの不安があろうかと思います。

逆に、世界的なCOVID-19の感染拡大の状況で家のことを考えるなど不謹慎だというお叱りもあろうかと思います。

しかし、私は「不謹慎」を理由に思考を停止されることは極めて危険なことと思います。

これから家を建てる方、本質的には一条工務店であるかどうかに関係なく、引き渡しの遅延は上記で述べたような様々な要因によって想定せざるを得ないものと思います。

そして、今後想定されることとして、「営業担当者が歯切れの悪い回答」しかしてくれないことも十分に想定されるものです。

例えば、引き渡しが遅延したことによって、つなぎ融資の金利負担が上昇したら保証してくれるのか?、引き渡しが遅れたことで来年3月に引っ越しができなくなった事に対してどのように誠意を見せてくれるのか?既に引っ越しを視野に入れて現在借りている賃貸住宅を解約してしまったがどうすれば良いのか?等々、たくさんの問題が出てきます。

残念ながら、今、上記のようなことを営業さんに聞いても正確な回答は得られないと思って間違いないかと思います。

そして、その場限りの歯切れの悪い回答を受けて、徐々に顧客側にも怒りがわいてくるのも当然と思います。

しかし、こと、今回のケースにおいては怒っても何も解決しないのは間違いありません

これが営業担当者の怠慢によるものであったり、一条工務店の製品上の問題であれば「怒ること」も意思表示の一つであり、その怒りが結果的に一条工務店の行動を促す力になることもあります。しかし、このような「怒り」を伝えることが意味を持つのは、「対応方法が存在している」という場合のみです。今回のCOVID-19の感染拡大に対しては、少なくとも一企業である一条工務店に「対応方法」は存在していない、と言えます。

正直、今は1ヶ月先にどのような状況になっているのかは、日本国内も含めて誰にも分からない状況です。

そのため、歯切れの悪い営業担当者に怒りをぶつけても何も解決しません。質問さえ意味を成さないかも知れません。

しかし、何もしないで良いかというとそれは違うと思います。

現時点でどのような問題が起こりえるかをできる限り正確に把握しておくことは極めて重要で、今後起こりえる事態に対して「自分自身」が備えを取っておくことで被害を最小化することができる可能性は十分にあります。

一条工務店が倒産したりしない?

考える上で、一番最初に「一条工務店が倒産してしまうことはないか?」という不安を感じる方もいらっしゃると思います。

一条工務店が倒産してしまえば、あらゆる被害を消費者が被ることになりますからそのような事態が発生すれば極めて深刻です。

しかし、これについては、少なくとも今住宅の建設を検討されている方にとっては「ない」と考えて良いことと思います。

一条工務店(とHRDを含めて)は少なくとも、手元に数百億円~1000億円近い現金または流動性の高い資金を有していると思われます。そうでなければ300億円も浜松市に寄付できたりしないので。。。

また、一条工務店がある意味誇りにしている「無借金経営」もあるので、銀行からの借り入れ余力も全く問題ないと考えられます。そうしたことを考えると、事態が深刻化して仮に家が一軒も売れなくても1年や2年は持ちこたえられるだけの体力があります。もちろん、家が一軒も売れていなければ銀行もお金を貸してはくれないので意味がない議論ですが。。。

そのため、当面、倒産についてはリスクとしては極めて低く、現時点で想定する必要はないと思われます。

私たちが考えるべきは、そのようなマクロなことではなく、もっとずっとミクロなことと思います。

これから家を建てる人が考えるべきこと

一条工務店で設計打合せ中の方

一条工務店で設計打合せ中の方への被害は一見は軽微です。

今回、一番問題になるのは「引き渡しの遅れ」です。

引き渡しが遅れることによって、これから想定していた引っ越しのタイミング等が期待通りにならない可能性があります。

一条工務店単体の問題であれば、他のハウスメーカーに乗り換えることも視野に入りますが、COVID-19の問題は一条工務店単独の問題ではないため、仮に住宅メーカーを変更しても引き渡しタイミングにずれがないことは保証されません。

ただ、一条工務店は着手承諾から引き渡しまで最低半年と他のハウスメーカーよりも長い時間を要するハウスメーカーであることは間違いありません。そのため、引き渡し時期に重きを置くのであれば国内生産をしているハウスメーカーへの変更も視野に入るかと思います。(個人的には一条工務店の家に住みはじめて7年が経過しますが、細かくは劣化も見られますがやはり冬の暖かさは既に手放せないもので、それを手放すのはもったいないのでは?とは思います。)

引き渡し時期が遅れることで、現在賃貸住宅にお住まいの場合は、賃貸期間が長期化することが想定されます。

ただ、総合的に見てCOVID-19の状況が深刻化しても住宅の建築という観点でのリスクは大きくないと言えるかと思います。

むしろ、住宅以外の要素、例えば自営業の方の今後の景気動向、観光産業に従事する方の今後の給与変動等、住宅建築以外の外的要因が大きな懸念事項となるかと思います。将来のローン支払いに懸念がある場合は、設計打合せ中であれば住宅の面積を小さくしてローン額を抑える、一条工務店以外のメーカーにして住宅本体価格を低く抑えるなどの手段が採れるチャンスと思います。

ただし、設計打合せ中の方については、設計打合せが短期的~長期的に止まってしまうという問題はあります。

これは一条工務店特有の問題ですが、一条工務店では打合せ後のCAD図面はフィリピンのHRDで作成しています。今回のフィリピン工場操業停止に伴って図面作成も停止しています。そのため、打合せを行っても図面が確定せず打合せが進まなくなることは想定されます。このようなケースは、残念な面もあろうかと思いますが、検討をする時間的猶予が得られたとポジティブに捉える方が良いかと思います。

ただ金銭的な損失が生じる可能性もあります。それは、期待していた税制上の優遇等が受けられない可能性です。その点に付いては後述する「着手承諾後~上棟前の方」の項をご覧下さい。

上棟済~引き渡し前

既に、上棟を済まされており、引き渡しが済んでいないという方についても、現状では影響は軽微と推察されます。

多少の工期の遅れ等はあり得ますが、上棟が終わっていればそれ以降は原則フィリピン工場から送られてくる部材はほとんどありません。

そのため、フィリピン工場操業停止の影響はほとんど受けないかと思います。

リスクとしては、今後日本国内の感染拡大に伴い一条工務店の営業に支障が発生するという事態が生じない限りは大きな影響はないかと思います。引き渡し時期についても大幅な遅れ等は出ないと思って良いかと思います。ソーラーパネルを搭載されるお宅では、ソーラーパネルは上棟後にフィリピンから遅れて送られてくるため、屋根にソーラーパネルが設置されていない状況が生じる可能性はあります。ただ、ソーラーパネルがなくても防水上は問題はありませんので、気分的には良くないと思いますが、現在のCOVID-19の世界的な状況を踏まえると我慢できる範囲と思います。

最も影響を受ける「着手承諾済~上棟前」の方

着手承諾済で上棟前の方については、最も影響が大きくなることが懸念されます。既に着手承諾を済まされており、今後引き渡しを予定されている方が想定すべき課題を挙げます。

つなぎ融資期間の延長による影響

既に着手承諾済で最も大きな問題は「つなぎ融資」の問題です。つなぎ融資は一般に住宅ローンに比べて金利が高くなっています。

一般的なつなぎ融資の金利を2.5%、変動金利での住宅ローンの場合の金利が0.5%として、つなぎ融資額3000万円とするとつなぎ融資利用期間が1ヶ月延びると約5万円金利負担が上昇します。引き渡しが3ヶ月延びれば15万円程度のつなぎ融資の負担が上昇することを意味します。

これから住宅を建てる方は手元現金が不足しやすい状況にあろうかと思います。そのため、こうしたつなぎ融資の金利負担上昇によって手元現金が減少する可能性があります。

税制上の優遇措置を受けられなくなる可能性の考慮

次に、様々な税制優遇措置等の期間の問題の考慮も必要です。現在着手承諾をされている方の中には、今年10月頃の引き渡しを予定されている方もいらっしゃるかと思います。しかし、これは2020年12月末までに住宅ローンの実行、すなわち引き渡しを受けることが控除の要件となっています。

例えば2020年12月までに引き渡しを受ければ、現在公表されている「住宅ローン減税」が利用できます。住宅ローン開始から13年間にわたって、最大400万円の税控除を受けることができます。実際には一条工務店の住宅販売価格を考えると、税控除額は300万円前後となる方が多いかと思います。さらに、今年に関しては控除期間が13年間であるため、実際の控除額は340万円前後となることが期待されます。加えて住民税も控除されるため、500万円近い大幅な税控除が期待されます。

今後フィリピン工場の再開が遅れ、2ヶ月から3ヶ月引き渡しが遅れた場合は現在公表されている住宅ローン控除が利用できなくなる可能性は考えて置く必要があります。

太陽光売電単価の下落による影響は現時点ではまだ考えなくて良い

次に、引き渡しが年をまたいでしまった場合の影響として太陽光の売電単価の下落による利益逸失の可能性が懸念されるかと思います。

これについては、現時点では「まだ」考えなくても良いかと思います。

10kW未満のソーラーパネルを設置した場合の売電単価は21/kWhで10年間固定されます。これは「2020年度」適用となっています。すなわち、2021年3月末まではこの売電単価は維持されます。

現時点で着手承諾済の方については、遅くとも年末までに引き渡しを予定されている方となっているかと思います。そのため、仮に2ヶ月程度引き渡しが遅れたとしても、売電単価は引き渡しの遅れがなかった場合でも影響はありません。

今後フィリピン工場再稼働の目処が立っていない状況では予断は許されませんが、まだ考えるには早いと思っています。

また、仮に2021年度売電契約になっても、単価は予想では16円~18円程度と予想され、その影響は年間3万円~5万円の利益の逸失、10年で平均して40万円程度の利益逸失になることは想定されますが、税制優遇の逸失などに比べると軽微であること、また、利益の確定が10年先になること、一条工務店のソーラーパネル価格が安いため結果的には利益額の減少に留まり、損失には至らないことから現時点で考える必要はあまりないかと思います。

賃貸住宅の契約期間に関する問題

引き渡しが延長になった場合、大きな影響を受けやすいのが賃貸住宅の契約解除のタイミングの問題です。

これから家を建てる方の多くは賃貸住宅にお住まいと思います。そして、着手承諾を済まされ、引き渡し日が示されたことで賃貸契約の解除を申し入れた方もいらっしゃるかと思います。

しかし、引き渡し日が延長になることによって、契約解除タイミングの見直しが必要になる方もいらっしゃるかと思います。結果的に延長になった分の住宅の賃料負担が必要になります。

また、場合によっては引き渡しが延長になった場合、契約更新のタイミングを跨いでしまい2ヶ月分の更新費用負担が発生してしまうケースもあり得るかと思います。

こうしたケースでは、手元現金が失われるという観点で大きなダメージとなる可能性があります。

その他にも、引き渡し日が延長になることで様々な影響が発生する可能性があります。ご自身のお宅の状況を踏まえて、引き渡し日が仮に1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月延長になった場合、必要になる費用の試算をしておくことは現時点で行っておくべきことと思います。

そして、そうした費用は自分が負担しなければならない可能性も踏まえて手元現金の見直しを行っておくことが必要です。

損失が発生したら一条工務店が負担するのが筋ではないか?

今回は例外:期待せず、手元資金での補填を視野に

私は、これまで一条工務店で家を建築された方が様々な要因によって引き渡し期間が延長となってしまったケースを見てきました。

例えば、下記の一条工務店フィリピン工場の火災による工場生産遅れによる引き渡し遅延のケースなどがあります。

【追記】一条工務店グループ会社の工場火災とその対応・保証について

この他にも台風による引き渡し遅延、その他様々な理由によって引き渡し遅延が発生したケースがあります。

そして、これらのほとんど全てで、引き渡し遅延が発生した際に顧客側の負担が生じた場合、その損失を一条工務店が支払ってきました。

一条工務店が保証してきた範囲はかなり広く、つなぎ融資の延長による損失はもちろん、賃貸住宅の賃料、更新が必要となった場合の更新費用、その他、一時的な荷物の保管が必要になった場合の荷物の保管費用等々、契約書の範疇を超えた対応が行われてきたことを見てきました。

そして、そうした情報はブログ等でも紹介されていることもあり、今回も一条工務店が損失を補填してくれることを期待される方もいらっしゃると思います。

しかし、今回に関してはその期待は現時点ではすべきではないと思っています。

契約書上は、「一条工務店の責任によって」引き渡し日が遅延した場合はその損失を一条工務店が補填することが明記されているかと思います。仮に引き渡し遅延が発生しても、今回のケースは明らかに「一条工務店の責任」ではないことは明かです。また、契約書には特例として、紛争、テロ、震災等の自然災害等によって遅延が発生した場合も、一条工務店が責任を負わないという特例が盛り込まれているかと思います。

今回のCOVID-19の感染拡大は特例に「公衆衛生上の緊急事態」が明記されているとされていないにかかわらず、これらの特例に準じると理解すべき事象であることは明かです。

よって、原則として一条工務店に顧客が被った損失を補償する義務はない、と理解できます。

そして、現時点では一条工務店自身も、工場の操業停止期間が何時までになるかわからない、すなわち、顧客が被る損失額が確定できない状態にあります。そのような状況では、「補償する」ということは言えない状況にあります。

最終的に、今後の営業的なメリットと損失額を踏まえて、一条工務店が「顧客が被った損失を補償する」という判断に至る可能性も十分に期待はできます。しかし、現時点でその「淡い期待」で物事を判断するのは極めて危険な行為です。

そのため、現時点では上記で例示した事例やその他個々の住宅ごとの状況に応じて、将来発生する損失は契約者個人が負担しなくてはならない、ということを前提に手元現金の見直しを行うべきと思います。

最終的に一条工務店が補償してくれたらラッキーですし、そうでなければ今回ばかりは世界的な感染症の拡大による影響として損失を被る以外に選択肢はないと思っています。

また、このことに関しては一条工務店を責めても意味がありませんし、将来が見通せない現時点で一条工務店に怒りや不安を伝えても何ら期待する回答が得られることはありません。

現時点でできることは、自分自身が被りうる損失を計算し、その不安については、営業担当者などに懸念事項として伝えることが、今できる最大限のことと思います。

怒りとして伝えることは意味がありませんし、不安に対して一条工務店がどう対応してくれるのかを問うことには意味がありません。しかし、一条工務店に対し懸念事項を伝えておくことは意味があります

一条工務店もあらゆる顧客の不安を正確に把握することはできません。そのため、どのような懸念事項があるかは知りたいと考えていると思います。ですから、現時点での懸念事項は営業担当者に共有することは必要と思います

そして、最後は「なるようにしかならない」という気持ちでいるしか無いのだと思います。

現在の最大のリスクは「桜の開花」

以下は個人的な思いです。

現在、幸いにして日本は世界的なパンデミックの中で、なんとかギリギリの所で国内の感染拡大を抑え込んでいるように見えます。しかし、1ヶ月前に現在のアメリカの状況を予測できた人はほとんど誰もいなかったように、4月に入って、日本がどのような状況にあるのかは誰にも分かりません。

東京都知事の小池百合子氏が東京都のロックダウン(首都封鎖)の可能性を記者会見で述べていましたが、オーバーシュートが本当にギリギリギリの所で押さえ込まれている現状を踏まえると、来月末頃には東京都のロックダウンが現実となっている可能性も十分にあり得る状況と思います。

住宅の建築に伴うCOVID-19感染拡大による影響を検討することは「将来の経済的リスクへの備え」です。しかし、首都ロックダウンが発生した場合には、「現在の経済的リスクへの備え」を行わなければなりません。そして、さらに国内における感染拡大が起これば、「現在の自己と家族の生活へのリスクに備える」必要が生じ、最終的には「自己と家族の生命へのリスクに備える」ことも余儀なくされる可能性もあります。

日本国内では3月19日に専門家委員会による学校の休校解除に向けた指針が示されたことなどもあり、解禁ムードが漂っているように感じます。

しかし、複数の専門家(例えば北大の西浦博氏など)が解禁ムードへの継承をならしています。私自身は感染症はもちろん医学は門外漢ですが、論文を読むことはできます。

そしてその中でも特に衝撃的だったのが下記の図です。これは武漢市のCOVID-19の感染動向を示したグラフです。

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(引用元: Tomas Pueyo analysis over chart from the Journal of the American Medical Association, based on raw case data from the Chinese Center for Disease Control and Prevention

右側の黄色い棒グラフは、実際に感染が確認されたCOVID-19感染者数、そして、左側はそこから推測された「実際に感染が起こった日の感染者数」を示しています。実際に私たちが観測できるのは右側の黄色い棒グラフです。しかし、実際にはグレーの棒グラフのタイミングで感染が発生してたことを示しています。

この棒グラフでは、確認された感染者数のピークは、2月4日頃となっているのに対して、実際に感染がピークを迎えていたのは1月24日頃であったことを示唆しています。すなわち、私たちが「感染の拡大」に気が付いた時には、既に感染が拡大してから2週間を経てからと言うことを意味しているのです。こちらの図が気になった方はこちらのサイトもご覧頂くと良いかと思います。

仮に現在日本国内で感染が拡大していたとしたら、そのことに気が付けるのは2週間後ということになります。

そして、3月19日の専門家委員会の発表、そして、東京では3連休中に桜が満開になりました

これは、科学もへったくれもないのですが、日本人はなぜか桜が咲くとテンションがあがります。そして、もう一つ4月1日になると、実際には何も変わっていないのに、なぜか心機一転の気分になってしまいます。

このタイミングで一気にCOVID-19の問題が解決に向かっていると誤解して、人々が一気に行動しはじめたら、桜が散る頃になってから恐ろしい状況を目の当たりにする可能性は十分にあると思っています。

今はまだ半年先の家の建築のことを考えられますが、2週間後にはその翌週も見えない状況が発生していてもおかしくないように思うのです。

だからこそ、今、将来のことをしっかりと考えることが、結果的に、現在の認識をしっかりと受けとめるきっかけになり、そして感染拡大防止のための行動に繋がるきっかけにもなるように思っています。

そして、今はまだ日常でないことを認識し、1日も早く日常が戻ることを願っています。