こんばんは。さすけです。\(^o^)/
これから一条工務店で家を建てようかと考えている方や、仮契約、本契約を経て間取りを検討されている方の中には、「営業さんからのプレッシャー」を感じている方もいらっしゃると思います。
一条工務店に限らず、家を建てる際に営業さんから強く契約を求められたり、早く着手承諾をして欲しい、と求められた方は多いように思います。
なぜ営業さんは契約を迫ったり、着手承諾を急かしたりするのでしょうか?
営業さん達は何も親切心で展示場を案内してくれたり、はたまた、打合せに同席してアドバイスをしてくれるわけではありません。
一条工務店に限らずハウスメーカーの営業さん達の仕事は「家を売ること」です。
そして、家を売って営業インセンティブを受け取ることで生活を成り立たせています。
ここで誤解の無いように言っておきたいこととして、私は営業さん達に親切心や、お客さんに寄り添う気持ちがあることを否定するつもりは全くありません。しかし、大前提は営業さんは仕事で家を売っており、それによって得た対価で生活をしているということは当然の事実です。。
これから家を建てる方は、この営業さん達が受けるインセンティブの仕組みを知っておくことで、様々な面で役立てることができると思っています。何故かと言えば、「営業さんがかけてくるプレッシャー」と営業インセンティブの仕組みには非常に強い関係があるためです。
契約を急かすのは当然として、なぜ着手承諾を急かす営業さんがいるのでしょうか?なぜ6月末に契約して欲しいと言う営業さんがいるのでしょうか?
一条工務店の営業さんはこちらがオプションを吟味したいと言っているのに、オプションをほとんど勧めてきません。一方で、他のハウスメーカーによっては、こちらがいらないと言っているのにオプションを勧めてくるハウスメーカーもあります。
これらはいずれも営業インセンティブの仕組みに依存しています。
繰り返しになりますが、今回の記事は決して営業さん達が全てお金のために行動しているということを言っているのではありません。仕事人としてプライドもあるのは当然ですし、こだわりやお客さんに喜んでもらえることのうれしさがあるのも当然です。
しかし、仕事である以上利益を出さなければならず、また生活をするためには給与を得ることが必要なのも当然で、その仕組みを知っておくことが私達が家を建てる際に役立つということが今回の記事で言いたいことです。
この営業インセンティブの仕組みについて書いてしまうことは、営業さん達にとってはある意味手の内を見抜かれた状態で営業をしなければならない状態となるため、これまで書くことを控えてきました。しかし、直近、そりゃないだろ?と思うようなご相談を複数いただき、きちんと書いて置こうと思った次第です。
営業職における給与の仕組みインセンティブ(歩合給)比率
固定給+営業インセンティブ
一条工務店をはじめハウスメーカーの営業さん達、もっと言えば営業職という仕事における給与体系は概ね
固定給(基本給+諸手当)+ 営業インセンティブ(歩合給)
となっています。
固定給は家が売れようと売れまいと関係なく支払われる給与です。それに対して、営業インセンティブとは家を売った「成果」に対して支払うお金です。営業インセンティブは歩合給などと呼ばれることも多いです。
これ自体は、住宅営業という仕事というよりも、営業職であれば概ねこのような形となっています。
ここで重要なのは「営業インセンティブ(歩合給)」の比率であることは言うまでもありません。
売れさえすれば高給が狙える住宅営業
一条工務店などのように「住宅営業」が通常の営業職と大きく違うのは、ハウスメーカーなどによっては極めて高額な年収が狙えるという点です。一般に営業職の中でも、投資営業、住宅営業、不動産営業は高給が狙いやすい、というか、高給をもらえっている営業さんが多い職種であるとされています。
不動産も住宅も、投資信託のような投資商品も1回の販売が数千万円、場合によっては1億円を超えるようなケースもある高額商品となっています。
そのため、うまく売ることができれば、一般的なサラリーマンを大きく上回る年収を狙える職種と言われています。
一条工務店の場合もおそらくは6~9%の営業さんは年収1000万円程度となっているであろうと推察されます。
売れなければ低い収入になることも
営業インセンティブと固定給には強い逆相関があります。
売れている営業マンは高収入を狙える一方で、売れなければ収入は一般的なサラリーマンよりもずっと低い水準になってしまうこともあります。
ただし、ハウスメーカーによっては固定給を高くする一方で、インセンティブが低いハウスメーカーもあれば、逆に固定給を低い水準に抑え、インセンティブを高額に設定するハウスメーカーもあります。
前者は、売れてもそれほど高い収入を受けることはできない一方で、売れなくてもそれなりの収入を維持できるハウスメーカーです。このタイプのハウスメーカーはパナホームや旭化成ホームズ(ヘーベルハウス)など比較的古くからあるハウスメーカーで多く見られる給与体系です。極端な高額年収は得られない一方で、営業成績が上がらなかったとしても一定の水準の所得を維持できます。
逆に、固定給を低く抑えつつ、インセンティブを手厚くしているハウスメーカーとしては、一条工務店やタマホームなどのように直近で成長を遂げたハウスメーカーに多く見られます。
これらの新興ハウスメーカーでは、家を売ることができないと一般的な平均年収と比較して、低い給与しか得られませんが、家が売れれば20代でも年収1000万円を超えるケースもあります。
一条工務店であれば、年間契約最低ノルマ3棟、追加1棟あたり80万円強と思います(根拠は後ほど)。
30代の営業さんであれば、年間10棟を販売することができれば年収1000万円が視野に入ってきます。ちなみに、後ほど示す推定では一条工務店の場合で年収1000万円を超える営業さんの比率は全営業さんのうち、少なくとも5%、多い場合は10%はいらっしゃると推定されます。一方で、ノルマを達成できない営業さんも3割から5割を占めている、完全な弱肉強食の世界となっていると推定されます。
それでは、ここからはもう少し具体的に一条工務店の営業インセンティブの仕組みを見ていくことにします。
一条工務店の営業インセンティブの額と仕組み
一条工務店公式サイトに掲載されている営業インセンティブの額:72万円/棟
一条工務店では、年間最低販売棟数3棟のノルマが課されており、4棟以上家を売ることができれば、1棟あたり72万円(86万円:2018/03/14情報を修正)の営業インセンティブを受け取れる仕組みになっていると推定されます。
営業インセンティブなど公開されていないのになぜそこまで断定的に書いているか?というと、誰かにこっそりと聞いたとか、どこかの掲示板に書いてあったといった怪しい情報などではなく、一条工務店の公式サイトの求人募集に、書いてある数字なのです。。。
一条工務店のキャリア採用(中途採用)求人募集ページにある「給与」欄をご覧下さい。
はい。一見するとインセンティブなど何も書いていないように見えますよね。。。
当たり前と言えば、当たり前ですが、一条工務店で家を建てる方も見る可能性がある求人募集ページにはノルマのことや営業インセンティブがいくらか書いてある分けはありません^^;
求人サイトに書かれいるのは、26歳で年間6棟受注した営業さんの年収が561万円、30歳で年間8棟契約された営業さんの年収が810万円、そして36歳で年間12棟契約された営業さんが1215万円の年収(゜д゜)と書かれているだけです。。。。
しかし、勘が良い方であればもうおわかりになったと思います。
ここには、明示的にはノルマがあることや、インセンティブの額は書かれていませんが、ちょっと計算すればすぐわかるように年間ノルマ3棟、1棟契約あたりのインセンティブ額86万円と書かれているのです。
年間ノルマ最低受注ノルマ3棟、追加1棟あたり86万円の営業インセンティブ
これから一条工務店の営業職に転職しようと考えている方は当然計算すると思いますが、顧客側が計算するのは面倒と思うので、年間ノルマや営業インセンティブがなぜ分かるかについて書かせていただきます。今まさに転職を考えている方にとっては極めて重要な数値と思います。
計算をするにあたって、2つの仮定を置きます。この仮定は別になくても問題はありませんが、わかりやすくするための仮定です。
- 住宅1棟の営業インセンティブは営業さんの年齢や役職によらず一定である
- 年間最低限達成しなければならない「営業ノルマ」が存在している
営業さん達は、ノルマを達成するまでは基本給のみが支給され、ノルマを超えて契約をしたら1棟毎に営業インセンティブが受け取れると考えます。実際はノルマがないとしたら、ノルマ=ゼロ、という計算結果になるのでノルマが存在するかしないかは現時点で分かっている必要はありません。
これを式にすると
年収=固定月給×12ヶ月+(年間受注棟数-ノルマ) × 営業インセンティブ
という式が成り立ちます。役職手当や扶養手当、さらには営業手当、自家用車の借り上げ費用は固定月給に含まれていると理解して問題ないかと思います。
ここで営業インセンティブをα、ノルマをnと起き、上の式に先の3人の方の年収等を当てはめると、
- 561=25.75×12+( 6 - n)× α
- 810 =30.75×12+( 8 - n)× α
- 1215=36.75×12+(12 - n)× α
という3つの式が成り立ちます。ノルマが年間3.3棟のように、少数になることは考えにくいため、nは整数であるとします。また、ノルマが存在しているかしていないかは分かりませんが、もしもノルマがなければn=0となるだけです。
上の式はあくまで給与の例なので様々な要素でぴったりと計算できるわけではない点に注意する必要があります。その上で式を変形すると
- 252=( 6 - n)× α 【式1】
- 441=( 8 - n)× α 【式2】
- 774=(12 - n)× α 【式3】
となります。ここで、252万円、441万円、774万円がそれぞれの営業さんが受け取った「営業インセンティブの年間総額」となります。
このとき、3つの式の差を最も小さくするような整数nとαを求めると
- n=3
- α=86
の時であることがわかります。
すなわち、一条工務店の営業さんは1年間に最低3棟契約を獲得しなければならないノルマを課されており、3棟を超えると1棟ごとに86万円のインセンティブを受け取れる、という給与体系であると結論されます。
多少の誤差はあるかも知れませんが、一条工務店の公式サイトに書かれていることですので4棟以上は1棟販売で80万円のインセンティブである点はまず間違いはないと思います。
これを高いと見るか、安いとみるかは人それぞれと思いますが、これでも数年前にくらべてインセンティブの額は大幅に引き下げられています。
営業ノルマ年間3棟の意味:一条工務店は実質完全歩合給
一条工務店の営業インセンティブで気になるのは「営業ノルマ年3棟」という点です。
この営業ノルマは、一条工務店の最後の優しさ?として、家が全く売れなくても固定給だけは支払ってくれると受け取ることもできます(実際はそんなに世の中、というか一条工務店は甘くないのですが。。。)。
完全歩合給というのは、家が一軒も売れなければ給与はゼロで、売れれば売れるほど給与があがる仕組みですが、これだと家が1軒も売れないとずっと給与がゼロになってしまいます。また、そもそも雇用契約を結んだ「正社員」を完全歩合給とすることはできないため、基本給が設定されています。
これがなぜ「実質完全歩合給」と言えるのかについてはもう少し詳細に見ていきます。
一条工務店のサイトでは営業さんの固定月給は21.75万円となっています。
仮に営業さんが年間に3棟以下の契約しか獲得できなかった場合、営業さんが受け取れる給与は年額261万円となります。
この261万円を3で割ると、、、87万円になります。
これはちょうど、4棟以上契約を獲得した場合の1棟あたりのインセンティブ86万円/棟とほぼ等しい値になります。
すなわち、営業さんの固定給には「年間3棟を販売する」という前提(ノルマ)が置かれた実質完全歩合給となっていることがわかります。
よって、営業さん達の給与は家が全く売れない場合の最低保障はされているけれど、4棟以上を販売してやっと営業職の旨味である、インセンティブがもらえるという仕組みになっており、結局の所受け取れる給与は
販売した棟数×86万円
という完全歩合給に近い形になっていると見なすことができます。
一条工務店に転職してきたばかりの営業さんの年間販売棟数を横軸、縦軸に年収を示すとしたのグラフのようになります。
転職してきてすぐは役職などに就いていないため、役職手当などはないとしています。役職手当の額も推定可能ですが、ここでは割愛します。
青線が営業さんの販売棟数ですが、3棟までは固定給のみが支払われ、4棟以上の販売ではじめて営業インセンティブがつきます。オレンジの点線固定給を3で割って、完全歩合給と見なした場合の線ですが、4棟以上のインセンティブと完全に直線となることがわかります。このことから、一条工務店に転職してきた営業さん達の給与体系は「実質」完全歩合給である、と言って良いかと思います。
契約できなかったら何が起こるのか?給与カット(手当のカット)
いやいや、それでも、年間3棟以下でも最低限の給与が保障はされているんだし優しい会社じゃないかと思うかも知れません?
残念ながら一条工務店はそんなに甘くはないようです。。。
ここから書かせていただく内容は、様々な就職口コミサイトを見て、おそらく正しいと信じることができた内容となっています。そのため事実と乖離がある可能性も否定できません。ただ、たぶんそんなにおかしなことはないと思います。
後で書くように営業さん達は半年毎にノルマ達成についての査定を受けていると推察されます。
仮にノルマが達成できなかった場合待ち受けているのは何か?というと、まずは営業手当のカットです。
具体的には月額24500円支給されている営業手当が、4500円にカットされます。
すなわち、月給が2万円減額されます。4500円だけ残すのは一条工務店の優しさ、、、ではなく、これもおそらく法律上の問題と思います。。。だって残業代出さないで営業手当を完全にゼロにしたら違法ですから。。。いや??でも残業しているのに残業代を出さなければそれはそれで違法な気も??と疑問はありますが、あくまで従来20時間程度の見なし残業手当が含まれていたのが、みなし残業時間が4時間程度に減らされます。
よって、半期毎のノルマ達成ができなかった場合、次の期は261万円から年額24万円がカットされ、年収は237万円となります。。。
本来年収を平均値で議論することに意味はありませんが、日本の平均年収はおおよそ420万円です。261万円という年収はかなり厳しい数値である、ということは間違いはないかと思います。。。
クビにはならないし、できない:ただ心機一転してもらうだけ・・・
ここで、ネット上などを見ていると、一条工務店に限らず厳しいノルマが課されているハウスメーカーでは、家が売れなければクビになる、といったことが書かれているケースがあります。しかし、これは一条工務店に限らず、クビになることはありません。している企業があったら、それは法的にアウトです。
確かに、営業として一条工務店に転職し、採用されてから3ヶ月は「試用期間」が設けられていることからこの試用期間中に一定の成果が出ない場合は、おそらく契約解除でいわゆるクビになることはあるかも知れません。
しかし、試用期間を終えて正式に雇用関係が成立した後は、企業は簡単に人をクビ(会社都合解雇)にしたりできません。日本の法律では解雇は簡単にはできないのです。
そのため、一条工務店においても仮に家が全く売れなくてもバンバン解雇にすることは通常あり得ません。企業業績の良い一条工務店であれば営業成績が悪いという理由だけで解雇することはまず無理です。
では何が行われるのか???というと、「心機一転新天地に行って頑張ってみないか?」という「アドバイス」が行われるとされています。
要するに、異動命令です。。。今までの人間関係なども全て捨てて、新しい地で頑張ってみては?という”優しい”アドバイを受けます。
残念ながら、日本の法律では異動命令は原則として拒否することができません。もちろん、それが権利の乱用であるとされるものであれば拒否はできますが、現実として契約が獲得できておらず、遠隔地であったとしても、新しい場所に「適材適所」の人事配置をすることは企業の権利であるため、拒否は難しいと考えるのが妥当と思います。
唯一異動を拒否する方法は自ら一条工務店を去るという選択をすることだけです。
ようするにそういうことと思います。。。
未達ノルマは繰り越される
それでも、1年、2年とノルマが達成できなくても、給与は低いかも知れませんが我慢して努力し続けたいという人も出てくるかもしれません。。。しかし、一条工務店ではこうしたことを許してくれません。
一条工務店ではノルマが達成できなかった場合、次の期にノルマが繰り越される仕組みを取っているとされています。
例えばある年に契約を2軒しか取れなかった場合、ノルマ達成に1棟足りないことになります。すると翌年のノルマは年4棟のノルマとなります。
私自身は営業職のようにノルマが課される仕事を経験したことがないので、これが一般的なことなのか、それとも厳しいことなのかは分かりません。
しかし、ノルマ未達が1棟であればまだ取り返しが効くかも知れませんが、ある年に契約ゼロだった場合、翌年のノルマは年6棟となります。1年間1棟も契約できなかったのに次の年に6棟の契約を取ることはかなり難しいことと思います。
そもそも、ノルマが繰り越されてしまうと、6棟の契約を取っても、やっとノルマがチャラになるだけで基本給しかもらえないことになります。しかも契約が取れるまでは営業手当の2万円の減額、ガソリン代の制約等々、金銭的な圧力、さらにおそらくは上司からの圧力も加えられると推察されます。正直、これではモチベーションが上がらなくなるのは当然で、そうであれば、いっそ退職して、再度転職をして別の会社に移った方が良いと考えるのは自然なことのように思います。
一条工務店は営業に冷たい会社なのか?売れる人は若くても厚遇
売れたら20代でも年収1000万円の世界
ここまで書いてきた内容を見ると、一条工務店がいわゆるブラック企業のように思う方もいらっしゃるかもしれません。
確かに、年間3棟のノルマが課され、これを達成できなかったときの営業さんに対する処遇は、控えめに言っても優しいとは言えません。
しかし、逆に契約さえ取れば世界は一変します。
一条工務店の年間契約ノルマは3棟です。これは、他のハウスメーカーのノルマと比較して、極端に高いものではありません。
そして、営業インセンティブに上限を設けてもいません。
すなわち、売れば売った分だけ営業インセンティブを受け取ることができるのです。
また、営業インセンティブに年功序列はありませんし、50歳の店長よりも平の営業さんのほうが契約さえ取れば給与が高くなることもざらに起こっているはずです。
例えば、先の年間6棟契約した26歳の役職のない営業さんが月に1棟ペースで契約を獲得して年間12棟を契約した場合、年収は1083万円となります。
20代で年収1000万円を超えるのは年収上位0.2%程度です。すなわち世の中の20代では500人に1人しか年収1000万円を超えることができません。。。。そんな会社はキーエンス、フジテレビ、あとはゴールドマンサックスやマッキンゼーなどでしょうか。。。それでも20代後半だと1000万円を超えますが、20代前半のサラリーマンでは1000万円を超えることは通常あり得ません。
しかし、一条工務店であれば、家を売りさえすれば20代だろうがなんだろうが、年収1000万円は十分に現実的なものとなります。もちろん、年間12棟となれば超激務になるとは思いますが、それでも不可能というほどの数字ではありません。
何しろ、一条工務店のサイトで執行役員の方が「求む1000万円プレイヤー」とキャッチコピーにしているぐらいです。。。
このことから、一条工務店では成果を出しさえすれば、それに対してきちんと対価を支払う会社という面も有していると言えます。
カイジのように命をかけなくても1000万円の収入が得られると言う点では、極めて善良な会社とも言えます。
一条工務店はブラック企業なのか?
いやいや、でもそんな人いないんじゃないの?と思うかもしれません。
確かに、ブラック企業と言われる多くの企業は「絵に描いた餅」をあたかも誰でも手に入れることができるかのように見せかけておきながら、実際にはそのような給与を得ている人がほとんどいないということを行っているように思います。
ブラック企業という言葉は定義が曖昧ですが、私の感覚では、どれほど頑張っても成果を出してもそれを適切に評価せず、社員を使い捨てる企業と思っています。
そう考えたとき、一条工務店がホワイト企業か?と言われると、決してホワイトだ!とは言えないように思いますが、一方で、ブラック企業か?と言われると、それも違っているように思います。
何故かと言えば、一条工務店の営業さんの中には、年収1000万円を達成している方が少なからずいると思われるためです。
ブラック企業と言うよりも、売れる社員を厚遇し、売れない社員には厳しい処遇を課す、完全実力主義、成果主義の会社という方が適切なように思います。
実際に第二新卒で入社された20代で年間10棟以上を販売された営業さんが求人アピールに使われています。20代で1000万円程度の年収を実現している方は確かにいらっしゃいます。
こちらの営業さんは新卒で投資用マンション営業を1年経験した後、一条工務店に来られて2年目に10棟以上の契約をしたと紹介されています。
年齢的には25歳前後で、年収1000万円程度を達成したことになります。25歳と言えばまだ私は貧乏な大学院生でしたよ(T_T)
ただ、一条工務店には3000人もの営業さんがおり、1人、2人の成功事例があるだけでは、ブラック企業と言われても仕方ありません。しかし、後で示すようにおそらくは営業マンの6%~9%は1000万円以上の年収を得ていると推定され、このことから、ブラック企業というのはちょっと違うように思っています。
インセンティブは青天井だけど実際にはガラスの天井がある
一条工務店では契約さえ獲得すれば、営業インセンティブに上限は設定されていません。そのため、理論的には契約を増やせば収入は無限に上昇します。
しかし、洗濯機やエアコンを1日1台売るのと、家を一軒売るのでは話は全く違ってきます。
そのため、物理的な限界というものがあります。おそらく、年間20棟台の契約が、物理的な限界であろうと思います。
後ほど示す推計から、おそらく一条工務店の社内に約3000人以上いらっしゃる営業さんのうち、数人の方がこの年20棟~25棟の販売をしていると推定されます。3000人の中の本当のトップ営業の方が運も手伝ってやっと達成できるのが年間20棟の世界です。
仮に36歳店長が年間25棟を達成すると年収は2600万円ほどになります。20棟であっても2160万円となります。
通常のサラリーマンで年収2000万円を超える事は普通はあり得ませんが、おそらく一条工務店の中でも極々一部の営業さんは2000万円以上の収入を得ていると推定されます。
翌年の住民税が怖そうですが夢膨らむ世界です。
しかし、ここが物理的限界となっています。
年20棟というのは、月に2軒の新規契約を獲得しつつ、打合せをコンスタントにこなし、2ヶ月で着手承諾まで持っていくサイクルを全ての家でこなすということになります。ほぼ休みなしになってしまうのではないかと思います。これ以上の契約獲得をすることは時間等の制約から不可能と言えそうです。
一条工務店において稼げる営業インセンティブのMaxは2000万円程度と推定されます。基本給を含めても2500万円がMaxと思います。また、年間20棟を毎年続けると体を壊すこと間違い無しのため、トップクラスの営業さんでもコンスタントに得られる収入としては1000万円台が現実的なラインと思います。
もっと稼ぎたいという方がいらっしゃいましたら、大東建託など、基本給により厳しい制約を課しつつ、契約額ベースでインセンティブが支払われる企業に行くことになろうかと思います。
大東建託の場合は戸建住宅ではなく賃貸住宅が主力商品ですから契約額が1億円を超えるケースもざらにあり、トップ営業の方達の年収は数千万円を超えるとされています。。。
一条工務店の営業さんの平均的な販売棟数は?
一条工務店の営業さんの平均契約棟数は4.2~4.4棟/年
ここまで、一条工務店の営業さん達のインセンティブの金額やノルマの仕組みについて書いてきました。結果が出せなければ厳しい現実が待っている一方で、ブラック企業とは異なり、結果を出しさえすれば若くても年収1000万円を達成できるという夢もある世界だということを説明してきました。
しかし、実際問題としてトップクラスの営業さんは別として「普通」はどうなのか?という点も気になってきます。
まずは営業さん1人あたりの「平均販売棟数」を計算して見ましょう。これは非常に簡単です。
一条工務店の2016年度住宅販売戸数は約12495棟となっていました。
[kanren postid=”15454″]一方で、2016年12月時点の従業員数は4500人とされていました。このうち、各展示場にいる呼び込みスタッフは契約職員と思われるので、ざっくり500人を差し引きます。残った4000人が一条工務店の社員ということになります。4000人には、営業さんの他、監督や管理部署の方々も含まれていることから、営業さんはこのうち75%程度と推定して問題ないでしょう。すると、営業さんの人数は3000人であったと推計されます。住宅産業新聞の資料等によれば、2016年度の一条工務店の営業人員は2900人と書かれていたので大きくずれていないことも確認できます。
転職してくる方も転職して出て行く方も多いと思うので、計算上は営業さんの人数を2800人~3000人と仮定します。
住宅販売戸数を営業さんの人数で割れば、一条工務店における平均の契約獲得数が計算できます。すると
営業さん1人あたりの年間契約数は4.2棟~4.4棟であったことが分かります。
一条工務店の契約ノルマは年3棟ですから、平均すると営業さん1人あたり1.2棟から1.4棟分のインセンティブを獲得できていたことが分かります。
これを金額換算すると、一条工務店全体の平均インセンティブ獲得額は年額103万円~120万円であったことになります。
30歳の営業さんは固定給369万円ですから、平均年収は471万円~489万円となります。
また、36歳で家族手当が増額されている営業さんでは、平均年収は543万円~561万円であったと言えます。
ちなみに上場企業全体の30歳平均年収は483万円、35歳で545万円とのことなので、一条工務店は非上場ではあるものの平均給与水準は他の上場企業と同水準と言えそうです。
平均は。。。ね。
歩合給を平均で議論することは全く無意味
給与の話などのサイトを見ていると「平均年収」が書かれていることが多くあります。
しかし、平均年収が意味を持つのは、ある年齢で年収に差異が無い企業についてのみです。
一条工務店のように、年齢や役職とはほぼ関係なくインセンティブが給与の多くを占める企業では、平均年収がいくらであろうと結局は何棟の契約を獲得できるかだけにかかってくるので、平均年収に意味がありません。会社全体の動向を分析する上では平均年収は重要な示唆を与えますが、個人の給与を議論する上では全く無意味です。
いやいや、それでも平均で「4.2棟~4.4棟の契約を取れているんでしょ?」、そうであれば、平均すれば営業さん一人あたり1.2~1.4棟相当のインセンティブが得られているという計算は良いのでは?と思うかも知れません。
残念ながら私達と相対する営業さんのことを考えたとき平均値の議論は無意味です。
何故かというと、かなり多くの営業さん達は営業ノルマを達成するかしないかのギリギリラインにいると思われるためです。これは完全に推定ですが一条工務店の営業さんのうち4割~半数の方はインセンティブなし、もう少し甘めに見ても3割~4割の方はインセンティブが無い状態(契約棟数3棟以下)にあると推測されます。逆に6%~9%の方は年間契約棟数10棟以上を達成し、年収1000万円を超えていると推定されます。
ブラックorホワイト?:6%~9%が1000万円超、4割~半数はインセンティブゼロ(ざっくり推定)
以下はは、あくまで一条工務店の営業さんの契約獲得数が対数正規分布に従っていたら、という仮定の下での議論です。実際とはずれている可能性もありますが、平均で議論をすることが無意味であることを示すことを目的とした議論である点に注意してください。多分そんなに外れてはいないと思いますが??
世の中のデータというのは概ね統計的な分布を持ちます。
一条工務店のように数千人の営業さんがいるような企業であれば、まず間違い無く1人あたりの契約数は統計的な分布を形成するはずです。
世の中の例えば年収分布や、資産分布など多くの分布は対数正規分布に従います。そして、契約数とその契約達成した社員数も、おそらく対数正規分布に従うと予想されます。
実際にはもう少し式の変形が必要ですが、シンプルに書くと、ある契約数nを達成できた営業さんの人数は下の式に依存してくると予想されます。
一見ややこしく見えますが、単純な対数正規分布の確率密度関数です。
この式を用いて、一条工務店である契約棟数を達成した営業さんの比率を計算してみることにしました。ここで不明な変数は分散σのみとなり、最も販売棟数が多い営業さんの販売棟数を25棟/年と仮定して、σを算定しました。
なぜ25棟をmaxとしたかというと、先の試算から営業さん1人が販売可能な物理的な限界が20棟台にあるであろうこと、そしてこれを裏付ける形で、一条工務店の営業さんのインタビュー記事中に「今年20棟以上のご契約をいただいた社員もいますし」という記述があり、事実として20棟以上の契約を獲得した営業さんがいらっしゃることも確認できるためです。
そのため、20棟以上の限界として、25棟をmaxとして設定することとしました。
計算の結果をグラフにすると下のようになります。横軸に年間の契約棟数、縦軸にその契約棟数を達成するであろう営業さんの人数が書かれています。
横軸に示した契約数を獲得できた営業さんが3000人中何人であったかを示したグラフです。例えば契約数ゼロの営業さんは3000人の営業さんのうち100人程度であったと試算されています。
このグラフから、営業さんの契約数と達成度合いに対数正規分布が成り立つならば、営業さんのうち約4割(39%)の方は、3棟以下の契約獲得となっておりインセンティブはゼロとなっていると推定されます。
一方で、年収1000万円のラインである年間10棟以上契約を取られる営業さんも9%程度存在すると推定されました。
上のグラフの「平均契約数」は4.4棟となっています。そして、「平均年収」を計算すれば36歳で543万円~561万円となります。
しかし、実際には平均値通りのインセンティブを受け取れている人よりもずっと多い約4割の営業さんは年間契約棟数3棟以下で営業インセンティブがゼロである、ということを意味しています。
平均で見れば決して悪くはありませんが、売れている営業さんは非常に多くのインセンティブを受けている一方で、多くのインセンティブゼロの営業さんがいらっしゃるという現実も見えてきます。
ちなみに分布上最も人数が多いのは3棟の契約を獲得する営業さんで全体の15%を占めています。年間契約数3棟ではノルマ未達でペナルティを受ける事はありませんが、インセンティブを得ることもできません。だからこそノルマが3棟に設定されているのだろうとは思いますが。。。
あくまで対数正規分に従うという仮定の下での計算であり、数値はぶれている可能性が高いですが、分布の形状は概ねあっているはずです。
一条工務店ではノルマが未達であればノルマが蓄積する仕組みなどがあるため、売れない営業さんは一条工務店を去らなければならなくなり、売れる営業さんだけが生き残っていくというシビアな世界であることがわかります。
一方で、年収1000万円以上を獲得する営業さんも毎年一定数おり、高収入を狙うことができる魅力があることも事実です。
完全実力主義の、よく言えば成果をきちんと評価してくれる会社であり、悪く言えばノルマを達成できない営業さんに対しては厳しい処遇をする会社と受け取ることができます。
一条工務店の転職口コミなどを見ていると、ブラック企業と言っている方がいる一方で、きちんと成果を評価しているホワイト企業であると言っている方もいらっしゃいます。その理由として、インセンティブを得られない営業さんから見たらブラック企業に見えるし、逆に1000万円以上の年収を得ている方から見たらホワイト企業に見えるというように、それぞれの営業さんの位置に大きく依存していることが背景としてあるように思います。
2013年に30万円以上減額された一条工務店の営業インセンティブ
以前は1棟契約で120万円が獲得できた
一条工務店の営業インセンティブは現在は、1棟あたり80万円程度となっていますが、2013年までは1棟あたり120万円でした。
2013年の前半に急遽営業インセンティブの見直しが行われました。
下は2013年3月に一条工務店の求人ページに掲載されていた募集要項記載の給与例です。
ぱっと見ではわかりにくいですが、先ほどと同様の計算をしてみるとノルマは現在と変わらず3棟であるものの、4棟目以降で得られる営業インセンティブが1棟あたり約120万円であったことがわかります。
現在の86万円と比べると、1棟あたり34万円も高かったのです。
普通はこういうのは5年ぐらい掛けて徐々に減らしていくもののと思うのですが、一条工務店ではある日を境に1棟あたり30万円以上も営業インセンティブを減額(しかも過去に遡って)したので怒りを感じた営業さんも多かったことと思います。。
それまでは年間8棟契約すると年収が1000万円程度になったのが、減額後は1000万円の収入を得るためには10棟を販売しなければならなくなりました。
2013年のインセンティブ変更はかなり大幅な営業インセンティブの減額だったことがわかります。
一条工務店の住宅単価を平均して2500万円と考えると、それまで1棟あたり約5%のインセンティブだったのが3.5%へと1.5%も減らされてしまったのですから営業さん達のショックは計り知れません。
しかも、、、普通はこう言うインセンティブの減額を行う場合は、それとあわせて基本給のアップをするのが一般的と思いますが、一条工務店は基本給は変えていないことからかなり横暴と受け取られる判断と思われただろうな~とは思います。ただし、この営業インセンティブの大幅減額にはきちんとした理屈があったであろうことも後で示します。
売上も伸びているし、1人あたりの契約数が増えていたら良いじゃん!
インセンティブが減っても契約棟数が延びていればチャラにできる
一条工務店の置かれた現状を見るために、2013年のインセンティブの大幅減額の背景をもう少し分析していくことにします。
[kanren postid=”15454″]で詳しく書いた様に、積水ハウスを追い抜く勢いで一条工務店の住宅販売棟数は躍進しています。
2010年当時に比べて販売棟数は1.6倍以上の伸びを示しています。
一条工務店の住宅が売れていることは事実ですので、2013年の営業インセンティブの大幅減があったとしても、営業さん1人あたりが獲得できる契約数が増大していれば結果的に収入が増額となっていた可能性もあります。
具体的に計算をしてみることにします。
一条工務店の従業員数は一条工務店の公式サイトに掲載されていた社員数を元に試算します。一条工務店の社員数は2010年当時が3000人に対して、2016年度は4500人となっていました。単純計算で販売棟数が1.6倍に伸びており、従業員数が1.5倍に伸びていたことになります。
この従業員数には監督や内勤の方なども含まれているので、この値から営業さんの人数を推定する必要があります。ここでは、先ほどとは若干係数を変えて、0.65を掛けた人数を営業人員と見なすことにしました。すなわち、一条工務店の全社員数の65%が営業さんであるとしました。こうすることで直近の公開されている営業人員数と良く近似できるためです。
一条工務店の従業員数から推定した営業担当者の人員数は下のグラフのようになります。
2010年時点で約2000人だった営業担当者数が、2016年度には3000人弱まで増加したことがわかります。
ここに、先の記事で示した各年度の年間施工棟数を営業人員数で割ることで営業担当者1人あたりの契約数を推定できます。
その結果は下の図の通りになります。
2010年当時は営業さん1人あたりの契約獲得数は3.7棟であったことがわかります。
その後営業さん1人あたりの契約棟数は上昇し、2013年度には1人の営業さんが4.7棟/年の契約を獲得するまでに至りました。
この営業さん一人あたりの契約棟数がハズレていると議論が破綻しますので、念のため検証をしておきます。したのページは2015年に公開された求人サイトの社員インタビューの内容です。
この中村さんという営業さんは2001年に一条工務店に入社され、その2年後に8棟の契約を獲得したと書かれています。それに対して司会の方が「当時は1年のご契約棟数は平均3棟くらいという時代」と応えています。
2001年に入社されて2年後なので2003年当時で平均3棟/営業程度であったことが確認できます。その後i-cube棟の発売などもあって、一条工務店の営業さんの1人あたりの獲得契約数も伸びていったと考えられます。2010年時点で平均3.7棟という数値は、少なくとも倍半分でずれているということはない、と言えるかと思います。よって、ここでの試算も大ハズレしているようなことはないかと思います。
1人あたりの契約棟数に各年度の営業インセンティブの額を乗じてみます。ここでは年間ノルマ3棟として、2010年~2012年までは1棟販売によるインセンティブを120万円、2013年以降は1棟販売によって得られるインセンティブを86万円として計算しました。
すると、このような図となりました。2013年度はインセンティブが120万円から86万円へと大きく減額されていたにもかかわらず、営業さん1人あたりの獲得インセンティブ額は前年の133万円から144万円へと9万円のプラスとなっていたことがわかります。それだけ一条工務店の家が売れたということです。
しかし、その後は1人の営業さんが獲得する平均営業インセンティブは減少を続け、2016年度時点では109万円となっていることがわかります。
ただし、2016年度時点でも過去に比べて「一条工務店の家が売りやすくなった」ことによって営業インセンティブの額は2011年度時点と同程度の水準に留められていることがわかります。
なぜ一条工務店は営業インセンティブを大きく下げたのか?
一条工務店はなぜこれほど大きく営業インセンティブを下げたのでしょうか?儲けを増やしたくなったからでしょうか?
おそらく違います。こうしてみてくると、一条工務店がなぜ営業インセンティブを120万円/棟から86万円/棟へと約30%も下げたのか?ということが手に取るように分かってきます。
2013年当時、営業インセンティブを従来の120万円で維持した場合、営業さん1人あたりが受け取る営業インセンティブの額は198万円に達していたと推定されます。
前年度比で約1.5倍の伸びであり、それまでの営業さん1人あたりが受け取る平均営業インセンティブが100万円程度であったことを踏まえると、一気にインセンティブが2倍に達していたと予想されます。
これは、ある意味異常事態です。
一条工務店で2011年に新発売をしたi-smartが爆発的ヒットとなり、復興需要、景気の上昇、さらに消費税増税の予定などが後押しして、営業さんがi-smartをバンバン売りまくった、と言えます。このこと事態は一条工務店にとって嬉しい悲鳴であったろうと思います。
会社としても家が売れているのですから、営業インセンティブを支払うことに全く問題はありません。営業さんは売りやすい商品が登場して喜んだことと思います。
しかし、ここで一条工務店全体としては大きな齟齬が生じたはずです。
このままでは、営業さんはi-smart発売の恩恵を受けているのに、i-smartを開発した開発部署、そして一気に忙しくなった設計さん、監督、そして内勤者はi-smartが売れたことの恩恵をほとんど受ける事ができないという問題です。
もしも、一条工務店の売り上げの急進が営業さん達の努力のみに因っているのだとしてら、営業さん達がそれまでの2倍の営業インセンティブを受け取ったとしても全く問題ありません。むしろ、成果主義の文化に合致しています。
しかし、2011年以降の販売棟数の急進は、営業さんの努力はもちろんある一方で、やはりi-smartという商品の登場があってこそだったことは間違いありません。
ところが、営業さんが従来と同様のインセンティブを受けたままだと、i-smartの開発担部署や設計部署、さらには調達部署等々の関連部署の人たちはその恩恵を大きく受ける事ができないままとなってしまいます。
そこで、考えられたのが「インセンティブの減額」であったのだろうと思います。
インセンティブを減額された営業さん達からは大きな不満が出たであろうことは想像に難くありません。しかし、前線の営業さん達だけが旨味を全て持っていってしまう状態は、会社全体のモチベーションを維持するためにもどうしても回避する必要があったのだろうと思います。そして、得られた利益を一条工務店の内勤者も含めた社員全体、さらに将来投資等に還元し、さらに将来投資に回すためにも営業インセンティブの減額は不可欠であった、ということがデータからわかります。
唯一の疑問は、きちんと社員の方に還元されたのか?と言う点ですが、それは分かりません。。。還元されたのですよね??
多くの営業さんにとっては減額がメリットに繋がった!?
これは一条工務店が、営業インセンティブの減額によって確保したお金を将来投資はもちろん、設計や開発部署、工事課の人々に還元していたという大前提に立つと、2013年の大幅な営業インセンティブの減額は、長期的には営業さん達にとってのメリットになるものであったと思います。
i-smartの発売開始で最も恩恵を受けた、そして現在も恩恵を受け続けているのは「従来ノルマ達成が困難であった営業さん達」です。
なぜならば、i-smartが発売される前の一条工務店の住宅は営業さん1人あたりの平均販売棟数は3.7棟でした。それがi-smartの発売が開始されたことで一気に4.7棟まで急上昇しました。
i-smart発売以前は、一条工務店の家そのものが現在に比べて売りにくかったため契約棟数が3棟以下の営業さんの割合は現在よりもかなり多かったはずです。
これらの営業さん達にとっては、それまでのインセンティブが1棟あたり120万円でも、仮に200万円でも関係ありませんでした。なぜなら、ノルマを超えた契約が獲得できなければインセンティブが入ってこないため、高いインセンティブは絵に描いた餅に過ぎなかったからです。
しかし、i-smartの発売が開始されたことで、従来よりも一条工務店の家は売りやすい物になり、結果的に従来は3棟しか売れなかった営業さんの半数の営業さんは4棟販売できるようになったはずです。また、2棟しか販売できずノルマ未達のペナルティを食らっていた方の中からも3棟、さらには4棟売れるようになった方が多く出てきたはずです。
どれほどインセンティブが高くても、売れなければ得られなかったインセンティブでしたが、インセンティブの額は30%減額になったとは言え、それまで受け取ることができなかったインセンティブが受け取れる状態になったということになります。
そのため、i-smartの発売とそれに続くインセンティブの減額は契約が取れなかった営業さんにとっては大きなメリットとなったと言えます。
一方で、減額の影響を最も受けたのが「トップ営業」の方達であったと思います。言い方は悪いですが、営業さんの中には家でも車での化粧品でも何でも売ってしまうような方もいらっしゃいます。そして、そうした方達の多くは、別にi-smartがあろうと無かろうと、コンスタントに年間12棟を達成していたような方もいらっしゃったはずです。
おそらくそれまでコンスタントに年間10棟を売っていた方の多くは、i-smartが登場したことで、12棟、13棟売れるようになったと思います。しかし、計算して見ると分かりますが、10棟売ってノルマを差し引いた7棟から得られたインセンティブが840万円、i-smartが販売されて13棟が売れてそれまでよりも3棟も多く売ったのに、インセンティブは860万円となってしまったのです。10棟販売から13棟販売では、労力は相当程度増えるのに、収入はたった20万円しか増えなかったということになります。
いわゆるトップクラスの営業さん達にとっては、i-smartの販売はかなりの打撃になったと推察されます。本来は絶対に逃げないように囲い込まなければならないトップ営業の人たちに打撃を与えたという点では問題があっただろうと思います。
しかし、裏を返せば、一条工務店は一握りのトップ営業よりも、平均的な大多数の営業さんたちを大切にする施策をとったと見ることもできます。これは一条工務店が大企業になりつつ証左とも思います。
ここまでで、一条工務店のインセンティブの金額面についての分析を終えます。続いて、営業さんのインセンティブの仕組み面をもう少し詳しく見て行き、私達顧客に与える影響を考えて行きます。
一条工務店の営業査定は半期に1度、ノルマ1.5棟
契約で0.5棟、着手承諾で0.5棟がカウントされる
一条工務店では様々な情報を集約すると、6月末で1回、12月末で1回の年2回、ノルマ査定が行われていると推察されます。
年に2回ノルマ達成状況を評価され、その時点でノルマが達成できていない場合は、営業手当が2万円減額されます。契約が獲得できれば復活します。
一条工務店の営業ノルマは年3棟ですから、半期にすると1.5棟となっています。
ここで、0.5棟とはどういうことだ?と思うかもしれません。
営業さんのインセンティブ確定タイミングは、契約中2回あります。
1回目が、「本契約(仮契約を経て土地が確定した段階)」段階です。私達が一条工務店と契約をすることを決めて100万円の契約金を支払い土地が決定して打合せがはじまる段階になると営業さんには0.5棟の成果が計上されると思われます。そして、2回目は着手承諾し、お金が振り込まれた時点で残りの0.5棟が営業さんの成果として計上される仕組みになっています。
5月~6月、11月~12月は営業さんがプレッシャーを掛けてきやすい
半期毎に査定が行われるため、ノルマ達成ができていない営業さんは査定時期に大きなプレッシャーを感じていることになります。
ちょうど査定が行われる6月末と12月末は、ノルマ達成が確実でない営業さんはなんとかして、ノルマを達成すべく積極的な営業を掛けてくる時期になります。
ですからちょっとぐらい、強引な営業を掛けられても怒ったり、愛想を尽かしたりせず、大変なんだな、と理解をしてあげても良いかもしれません。。。
また、この時期に曖昧な返事で契約を悩んでいるそぶりを見せてしまうと、場合によっては「しつこい営業」となってしまい、その後契約をしてもわだかまりが残った状態になりやすいように思います。
6月中旬頃から契約を迫ってこられたとき、自分や家族と相談して、6月末までには決められないのであれば「6月末までには絶対に契約をしない」という宣言をすることをお勧めします。焦っている営業さんに契約しないと伝えることは厳しいようにも思うかも知れませんが、契約をしない可能性が高い自分たちに構っているよりも、自分たち以外の見込み客に営業を掛ける時間を作ることができ、お互いにとって幸せな結果になるように思うのです。
以下は、まさにこの問題に直面されて一条工務店に不信感をもとられてしまったふーちゃんさんの「一条工務店④グチ」という記事です^^;
この記事を読むと、営業さんが「6月に土地を買わないと損をする」的な話をして、なんとか6月中に本契約に持っていこうと必死になっており、突然夜家に押しかけてくるなどの猛烈営業を欠けている姿が見て取れます。
それが結果的にお客さん側の不信感へと繋がっているのですが、それでもお構いなしの必死な営業となっています。
しかし、ある時期(査定タイミング)を過ぎた途端、それまでの強引な営業が嘘のように顔も出さなくなったと書いています。それが結果的に契約に繋がるとは思えず、信頼関係も損なうため良いやり方ではないのは明らかですが、ノルマがあり、高額のインセンティブがある以上、どうしてもこのような強引な営業が行われてしまうのは事実です。
そして、あんなに必死だったのが、急に相手にしなくなると言ったような、顧客側からすると営業インセンティブの仕組みが分からなければ意味が分からないことばかりが起こります。
余談ですが、こちらの方は一条工務店では家を建てずに、仮契約は解除されて中古住宅をリノベーションされてお住まいのようです^^そりゃ、こんなコトされたら、契約解除したくなりますよね^^;仮契約段階だったので契約金100万円は全額返金されたようです^^
着手承諾を迫られるのは3月頃と10月頃
このあたりは仕組みが良く分からないのですが、経験やお聞きしている話として着手承諾を迫られやすいのは3月頃と10月頃となっています。おそらく成果計上のタイミングが3月に着手承諾するとちょうど査定タイミングの6月には着工が開始し、10月に着手承諾をすると12月に着工することと関係しているような気がします。
何らかのタイムラグがあるように思っています。
着手承諾時期によって「おまけ」が着く?(未確認)
これは全く未確認で、推測ですが、おそらく一条工務店では営業さんに対して着手承諾を急がせるような何らかのプレッシャーを掛けているように見受けられます。
しばしば聞くこととして、設計打合せが開始して2ヶ月ほどで着手承諾に持っていくよう促してくる傾向があります。
これは穿った見方過ぎるかも知れませんが、設計打合せ開始から2ヶ月または3ヶ月?以内程度で着手承諾をすると営業さんに何らかのインセンティブの上乗せがあるのかな?と思っています。
そうであったとすると、私自身は設計打合せに10ヶ月もかけてしまったので申し訳なかったな~と。。。。
ただし、これも推測に推測を重ねてですが、そこで失われるインセンティブがあったとしても1棟契約によるインセンティブに比べると僅かなものであると予想されます。むしろ、インセンティブが失われると言うよりもお小遣い程度のインセンティブにおまけが付くという感じかな?と思います。
[kanren postid=”5345,5295″]なぜこんなことを思うかというと、一条工務店という会社に取ってみれば、着手承諾を早めたいというのは当然のことだからです。
一条工務店では設計打合せ1回いくらのようなお金は取られません。顧客側にとってはじっくりと打合せが行えるというメリットがある一方で、一条工務店としては打合会数が多くなればそれだけコストがかかってくることを意味します。
そのため、営業さんにインセンティブを支払うことで、できる限り早く着手承諾に持っていこうとすることは当然のことと思います。
ただ、私達顧客がそれを考えてあげる必要は全くないので、着手承諾を早くするように促されたら、怒ったり焦ったりせず大変だな~と思えば良いと思います。
一条工務店の営業さんはオプションを勧めてこない、むしろ嫌う
一条工務店の営業さんはオプションをほとんど勧めてきません。
建前上は、「標準仕様が充実している」という一条工務店の住宅の特徴を踏まえて、オプションは勧めないという体を取っています。これ自体は事実と思います。
さらにはオプション外の施工は基本、もの凄く嫌がられます。いわゆる稟議は嫌われます。
なぜか?というと、これも営業インセンティブが関係しています。一条工務店では、営業インセンティブは「1棟あたり」を原則としています。
これはハウスメーカーの中でもかなり特殊です。
通常は「契約額あたり」のインセンティブであることが一般的です。2000万円の家と4000万円の家では企業として得られる利益が全く異なっていますから契約額あたりのインセンティブとする方が企業としては合理性があります。
例えば、契約額の2~3%のインセンティブのようになっています。この場合、100万円分のオプションを付けてくれたら2~3万円がインセンティブとして入ってくるため、オプションを積極的に勧めてくるハウスメーカーもあります。
しかし、一条工務店では「1棟あたり」のインセンティブとなっていて、契約額によってインセンティブが変わりません。もちろん、建売などは係数がかかっていると思いますが。。。
そのため、オプションを勧めて打合せ回数が増えれば打合せに同席する回数も増えて新規顧客獲得に使える時間が減ってしまいますし、営業さん自身が上司等から着手承諾を早めるよう掛けられているプレッシャーも気になってきます。
そのため、一条工務店では黙っているとオプションを全く勧めてこないこともあります。
そしてオプションよりも、本社に稟議を通す必要のあるオプション外の施工はもの凄く嫌がられることがあります。なぜなら、稟議には最低1週間はかかりますから、それだけ着手承諾までの時間が延びてしまうので。。。
ただ、嫌がられてもやりたいことはやった方が良いと思うので、大変だな~と思いながら稟議を通すようお願いするのが良いかと思います。。。
簡単には営業担当を交代させてくれない
おそらく一条工務店で家を建てる際に最も多いクレームは「営業と気が合わない」というものと思います。。。人間ですから誰でもあう人あわない人がいるのは当然です。
何人かの営業さんと話をして、気の合う営業さん、話や価値観のあう営業さんが自分の担当になってくれれば、このような事態はほとんど避けられるし、一条工務店にとってもより多くの契約が獲得できて良い様に思います。
しかし、一条工務店では、最初に展示場を訪れて対応をしてくれた営業さんが、自分の担当営業となります。これは一条ルールの中でもかなり絶対のルールです。
打合せを進めていくなかで、信頼関係が破綻してしまったようなケースでない限りは簡単には営業担当者の交代を認めてくれないのです。
また、これもよくあることですが、自宅に最寄りの展示場があるのに遠方でふらっと展示場を訪れて営業さんが説明をしてくれたら、いつの間にかその遠隔地の展示場の営業さんが担当になっていて、打合せが大変になってしまう、というケースもしばしば見られます。
顧客側から見ると、そんな遠隔地の営業さんが担当にならなくても、近くの展示場の営業さんを紹介してくれれば良いじゃないか?と思うかと思います。また、話がとことんこじれる前にもっと気軽に営業担当者を交代してくれても良いじゃないか?と思うかも知れません。
しかし、一条工務店では遠隔地だからと言う理由では担当者の交代を認めてくれません。
なぜでしょうか?
これもインセンティブの仕組みが深く関わっていると推察されます。
なぜならば、顧客が担当営業を選べる状態になると、一条工務店の社内で「顧客の奪い合い」が発生する可能性があるということが、担当の交代を簡単に認めない背景にあると考えられます。
一条工務店という会社全体で見た場合、これは絶対に避けるべき自体です。会社全体で見れば、誰が担当であっても一条工務店で家が売れる限り、利益に違いは生じません。そのような状態で、営業同士で顧客を奪い合う自体が生じることは会社にとっては単なるコストにしかならないのです。
そして、営業さん同士の関係を極めてギスギスしたものにして、会社自体の風通しを悪化させます。
一条工務店という会社全体で見た場合、仮に1軒の契約が獲得できなかったとしても、営業同士の関係を破綻させかねないような事態は絶対に避ける必要があるため、担当の交代はできる限り避けようとする傾向があります。
というか、トータルで見た場合、営業同士の顧客奪い合いを容認すると1軒の契約を失うよりも遥かに大きな額の損失に繋がるのです。
だからこそ、営業さん同士にはお互いの顧客を奪わないという不文律があり、また、一条工務店という会社もそれを絶対としているのだろうと思います。
店長であってもノルマが課されています
一条工務店における展示場の店長というのは一つの肩書きに過ぎません。
店長になられている方は、過去にその展示場の中でも売上が高い水準にあった方が店長になっていることが多いようです。
では、店長は管理職だから、営業の現場から離れているか?というと、全くそうではありません。店長であっても、やはり営業ノルマは最低年3棟です。そして、おそらく「店長」であるが故に展示場の管理の責任も負わされています。もちろん、その管理については月々の固定給に役職手当を付けることで上乗せされていますが、正直「1棟あたりのインセンティブ」に比べるとそれほど多くはありません。
店長になって、同じ展示場の営業さんのサポートなどにかまけていれば自分の営業成績が下がり、店長なのに展示場の他の営業よりも給料が安くなってしまう、などということが起こります。
若い営業さんが頼りにならず、上司である店長を連れてきて、今後は自分がサポートしていく、と宣言したのにその後も店長が若い営業さんを全くサポートせずに放置してクレームに発展すると言うケースを見かけます。
なぜこのようなことになるのか?といえば、店長であってもノルマがあり、インセンティブを獲得しなければならない以上、他の営業さんに構っている暇はない、という実態があるためです。
何か問題があったときは「店長が出てきたからもう安心」と思ったりせず店長という肩書きは、あくまでそれまでの営業職としての成績が優秀であったことを示すものであって、展示場の他の営業さん達のサポートや管理はあくまで補助的な業務、ぐらいにしか思っていないと見ておく必要があるように思います。
こういった現状を踏まえると
[kanren postid=”10697″]で書かせていただいたような私自身が経験したようなことが出てしまうのも仕方の無いことなのかも知れません。。。
でもどこのハウスメーカーでも同じようなものでしょ?
営業職である以上成果を求められることはどこでも同じ?
営業職を経験したこともない私がこのようなことを言うのは不適切極まりないのですが、営業職に対して成果を求めることは当然のことと思います。
そして、営業職である以上はノルマがあり、また、ノルマを超えた成果に対してはインセンティブが支払われるのも当然であると思います。
そして、この「営業インセンティブの仕組み」こそが企業の雰囲気や、もっと言えば文化を創り出し、そして、私達顧客への対応の差を生み出していることもまた事実と思います。
いくつかの事例を挙げます。
一条工務店の営業インセンティブから見る風土:成果主義&個人主義
一条工務店は良くも悪くも、「個人営業」を主体とした営業スタイルと理解しています。これはインセンティブが1棟販売することで、契約を獲得した営業さん自身が80万円以上の営業インセンティブを得られる仕組みとなっているため、同じ展示場の営業さん同士であっても「ライバル」となるためです。
一条工務店の展示場を歩いていると、必ずお客さんに対して1人の営業さんが付き添い、その営業さんが接客している最中には他の営業さんは仮に目があっても軽く会釈をする程度で決して近づいてきたりしません。
営業インセンティブは1人で獲得するものであり、他の営業さんの邪魔をすることはあってはならないことであるためにこのような傾向があるのだろうと思います。
同じような営業スタイルのハウスメーカーとしてはタマホームなどがあります。
タマホームは契約額ベースの営業インセンティブですが、一条工務店と同様個人営業の成果に応じてインセンティブが支払われます。一条工務店と同様やはり求人サイトには「年収1000万円」をアピールしています。
一条工務店やタマホーム、そして急成長を遂げた多くのハウスメーカーはどうしても成果主義に基づいた個人営業を主体としたスタイルとなっています。
これが、古いタイプの企業だとかなり雰囲気が変わってきます。
チーム営業を重視するパナホーム
代表的な例はパナホームと思います。パナホームの営業インセンティブは「チーム」の成果に大きく依存しています。
もちろん個々の営業さんに対して支払われる部分もありますが、チームとしての成果が最終的な査定に大きな影響を及ぼします。
仮に自分が契約をたくさん取っても、同じチームの他のメンバーが契約を取れなければ営業インセンティブが得にくい仕組みとなっています。
すると何が起こるか?というと、他の営業が困っていたら積極的にサポートするし、逆に自分が苦手な分野であれば他の営業に頼ることもしやすい環境となります。
経験の浅い営業さんであっても経験豊富な営業さんの積極的なサポートを受けて長期的な成長が促されるという良い面もあります。
一方で、一人でガンガン営業を掛けて売上を上げられる営業さんにとっては、自分の仕事が適切に評価されていないように感じてやる気を無くしてしまうと言うことも起こります。
営業さん個人の営業成績は、あくまで基本給として評価をするというスタンスが強く見られます。パナソニック系列ですから「年功序列」が基本となります。
ガツガツしないヘーベルハウス
住宅展示場に行ってちょっと見学しただけなのに、その日の夜に家まで押しかけてくるような営業をかけてくるハウスメーカーが多々ある中で、ヘーベルハウスの営業さんは基本的に紳士的であると言われています。
その理由もやはり、営業さん達の給与体系にあると思います。
ヘーベルハウス(旭化成ホームズ)の営業さんは、基本新卒採用で、他のメーカーに比べると営業職の中途採用にそれほど積極的ではありません。
このことは、ヘーベルハウスの中途採用求人サイトを見てみるとわかります。
どこのハウスメーカーでもキャリア採用求人サイトには「社員のインタビュー」が掲載されています。
これは、実際に転職した社員の生の声を伝える為に中途採用サイトでは欠かせないものとなっています。
例えば、一条工務店であればキャリア採用の一番先頭には「営業社員のインタビュー」が大々的に掲載されています。
一条工務店はガンガン中途採用をしようとしていることがわかりやすいサイト構成となっていますが、ここまで派手ではなくても積水ハウスや大和ハウスなどでも求人サイトには、営業職の方のインタビューを掲載するのが極々一般的です。
しかし、ヘーベルハウスでは中途採用ページには「営業職」の方のインタビューという物がそもそも存在していません。
ヘーベルハウスでも当然営業さんには売れたらインセンティブが支払われます。しかし、そのインセンティブは一条工務店のように高額ではなく、契約数が多いか少ないかで100-200万円程度の収入差はあるものの、例えば新卒入社の営業社員が店長の給与を追い抜くということはないよう制度設計されているようです。
それだけインセンティブが低いとも言えますが、基本給は手厚いものとなっています。というかそもそもの給与設定が高くなっています。
サイトに掲載されている基本モデルで、営業職、技術職とも概ね30歳前後で800-900万円となっており、仮に家を売ることができなくても600万円~700万円をもらうことができます。
すると何が起こるかというと、一歩間違えると、やる気の無い人でも高い給与をもらってしまうということが起こりますが、社員を手厚く遇し続けることで、愛社精神を作りだしてガツガツした営業をする必要がなくなります。そこまでしなくても十分に生活できる水準の給与がもらえるので。。。あくまで営業は仕事として、そして会社への貢献を示す行為として行われるものとなります(あくまで理屈上は、ですよ。)。
また、ヘーベルハウスの営業さんは長く働いている方も多く、自分の会社に対する忠誠心が高い印象を持っています。そのため、自分だけが成績を上げるためにガツガツした営業を嫌い、チームワークや展示場全体での紳士的な営業を行う傾向が強くなっているのだろうと思います。
どれが良いわけではなく、インセンティブは社風を作り出す
一条工務店のように完全歩合給形式で、売れれば天国、売れないと地獄が待っているような営業スタイルの会社と、パナホームや旭化成ホームズのように年功序列を重視するハウスメーカーでは当然のように文化が全く違ってきます。というか社員の定着率が全く異なってくるはずです。
いずれかの営業スタイルが優れているわけではなく、いずれも一長一短あると思います。
一条工務店のように、担当営業が1人つき自分のインセンティブを獲得するという実利も踏まえてお客さんに向き合えば、うまくすれば「親身な営業」をしてくれることになるでしょう。逆に、売れなくても困らないスタイルのヘーベルハウスなどの場合、真剣味に欠ける、と感じられてしまうこともあるでしょう。
しかし、一歩間違えば、一条工務店のような営業スタイルではガツガツしていてお客さんの側が引いてしまうということも起こりますし、担当者がハズレであると、不満の連鎖が連なる結果になることもあります。また、これは一条工務店ではしばしば起こることですが、引き渡しの際に「これからが本当のお付き合いです」という決まり文句の挨拶をした営業さんが、翌年には退社してしまうと言うことがしばしば起こります。。。
パナホームやヘーベルハウスでは基本的に新卒採用されて長期間働く方が多いため、担当の営業さんが異動することはあっても会社からいなくなってしまうことはそれほど多くは起きません。
どちらが良くて、どちらがダメということではなく、そういった営業インセンティブの構造が営業スタイルにも大きく影響を与えていると言う点を理解した上で、家を建てるのが良いと思います。
まとめ:一条工務店も変わりつつある?
新卒採用を重視して、大切にしている?
ここまで書いてきた、一条工務店の個人主義的、ノルマ達成ができない者は去れ、というのはあくまで「中途採用者」のみに限定されたものとなっています。
これは色々と調べた範囲でしかありませんが、中途採用社員と新卒採用社員では一条工務店の対応は全く異なっているように見受けられます。
一例として、中途採用社員については、営業成績が出せなければペナルティ、心機一転といった強い圧力をかけてくる一方で、新卒採用社員については、営業職について成果が出せなかった場合は配置換えを行うことが多いようです。すなわち、営業職から内勤であったり、工事担当であったりに異動をさせています(中途採用された営業さんは原則営業職以外に配置換えはありません)。また、工事担当から営業職に異動することも多く行われています。
このような取り組みを見ていると、転職で入社したキャリア採用社員に対しては結果が出せなければ去れ、という成果主義を敷く一方で、新卒採用社員については大切に育てていこうという意思を感じます。
就職人気ランキング上位、年間300人の大量採用~離職率は?~
リクナビを見ると、2014年度の新卒採用人数は296人、2015年度189人、2016年度337人となっており、毎年総社員数の1割近い採用を行っていることがわかります。
これは個人的には意外?だったのですが、一条工務店が就職人気ランキングにおいてもかなり上位に食い込んでいます。
マイナビが実施した就職ランキングにおいても、理系男子では一条工務店は、全体順位37位に位置しており、38位の住友林業、40位の積水ハウスよりも就職人気ランキングが高くなっています。
離職率も高くない:大切にしている?
ただ、これほどの大量採用をしているのを見ると離職率が高いのでは?使い捨てているのでは?と思ってしまいますが、過去の新卒採用者の離職率は、2014年42人、2015年が22人、2016年が16人となっています。
一般に新卒採用後3年離職率を一つの指標として使うことから、2014年の離職率を参考にすると296人を採用して、42人が離職していることから、採用後3年離職率は14.2%となっています。
同業種である積水ハウスは2014年度に574人を採用し、81人が退職しているので、やはり離職率は14.1%となっています。
厚生労働省の資料において、従業員1000人以上の企業における2014年の新卒採用者離職率は24.3%となっており、大手の中でも離職率は高くない水準となっています。
定着率が高いとまでは言えませんが、それでも中途採用者に対する完全実力主義的な社風とは異なった社風が形成されていることが伺えます。
ちなみに先ほど止める人が少ないとした旭化成ホームズ(ヘーベルハウス)の同離職率は9.9%となっており、やはり一条工務店、積水ハウスよりも高い定着率となっていることが分かります。
新卒採用者だからこそのクレーム
このような話を書くと、中途採用されたガツガツした営業さんよりも、新卒採用されたほんわかした営業さんの方が良いと思う方もいらっしゃるかも知れません。
ただ、新卒採用された営業さんも、中途採用された営業さんとは異なった形のクレームをお聞きする面もあります。
これまで、色々な営業さんや監督などのご相談をいただいてきましたが、たまに新卒採用された営業さんのクレームも聞くことがあります。だいたいパターンが決まっていて「知識がない」&「謝れない」というケースが多い印象です。
このあたりは中途採用された方々は営業職を長く続けていて、知識が無くてもその場を凌ぐテクニックを持っていたり、また謝った方が話が早く済むケースでは謝ってしまうという潔さがある印象です。一方で、新卒採用され営業となられた方の中には、知識がないことをうまくごまかせない、というある意味正直な面があり、それがクレームとなってしまうケースをしばしばお聞きします。
そして、これは自分がおじさんになったから?かもしれませんが、「謝れない方」が多いというのも印象として持っています。
悪かったらすぐに謝ってどうするかをきちんと説明すれば大抵のお客さんはそれほど怒ったりしないと思うのですが、自分が悪くないというイイワケをしてしまいお客さんを怒らせてしまうケースをしばしばお聞きします。若さ故の面もあるのかな?と思います。
一方で、新卒採用された営業さんは、中途採用された営業さんに比べて人的ネットワークは広く、困ったときに同期などのネットワークで助け合っているのをお聞きするケースもあります。
営業さん達へ1つだけ「命をかけて」までやることはないです。一条工務店と過労死
先日、一条工務店のグループ会社である一条工務店仙台において過労死が発生し、遺族が訴訟を起こしたというニュースがありました。
確かに家を買う私達にとっては、生涯で1軒だけしか建てられないかもしれない大切な家です。
その私達の住まいに対して一生懸命になってくれることは嬉しいことと思います。
でも、営業さんや監督を死ぬほど働かせてまで建てるほどの価値はありません。
過労死された方は営業職ではなく監督だったようですが、河北新聞の記事では震災前に比べて倍近い住宅の監督をさせられ月に15軒以上の監督をしていたとされています。結果として100時間以上の残業を強いられ、くも膜下出血で亡くなっています。
もちろん、ご本人も死ぬなどとは思っていなかったことでしょう。でも、こんな働き方をさせられれば必ず一定の確率で過労死が発生します。
どこの会社にも「昔は自分も100時間以上の残業をしたことが何度もあるのだから、頑張れ!」というような上司がいるかも知れません。正直、これは完全な生存者バイアスのかかった意見で何の価値もありません。そういうことを言う上司がいたら「死ななくて良かったですね」と言う以外の言葉はないように思っています。月に80時間以上の労働を強いられれば、人は一定の確率で死ぬということは科学的な事実です。
営業さん達の中には、契約が取れずに焦って、契約してくれたお客さんのために何とか頑張ろうとして、過度な過重労働になってしまっている方もいらっしゃるように思います。
一条工務店の営業職は何度も書いているように「個人プレー色」が強くなっています。そのため、そのような過重労働も「自分の判断でやっている」と見なされて、アドバイスや助言をもらえないケースもあるはずです。
お客さんは一生懸命やって欲しくはありますが、命をかけてまでやって欲しくはない、と思っていると思います。。。。
社員が死なないよう管理するのは、決して自己管理などではなく一条工務店の仕事です。
おわりに:顧客視点から見た営業インセンティブ
今回の計算は多くの推測と仮定に基づいているので、数値自体は違っている面もあるかと思います。しかし、ここまで書いていたように、一条工務店の営業さんは新卒採用された方を除いては非常にシビアな実力主義が採用されていることは間違いありません。
これは営業所やエリアなどによっても雰囲気が大きく異なるため一概に言えることではないのですが、良い面としては真剣に営業をしてくれるため、こちらが家作りを進める上で様々なサポートをしてくれる面があります。しかし、ここまで書いてきたように厳しいノルマが課せられており、また、一度契約をして成果が計上されると、対応が遅くなる営業さんがいらっしゃることも事実です。
私は、このあたりは「割り切り」が必要と思っています。
営業さんの多くは、契約を取ってしまえば後は知らない、という気持ちで仕事をしている分けではないと思います。せっかく自分と契約してくれたお客さんには喜んで欲しいというのは当然持っているであろう感情と思います。
しかし、営業さんは厳しいノルマの中で仕事をしており、契約が決定したお客さんよりも、契約前のお客さんに対する労力を割くというのは、これは仕方の無いことと思います。優れた営業さんはそのような雰囲気をお客さんに見せないよう配慮できますが、ノルマが達成できていなければどうしても焦ってしまい、目の前のことしか見えなくなってしまい、契約済みのお客さんへの対応をおざなりにしてしまうのも人間である以上仕方ないように思います。
別に顧客側が全てを理解する必要はないと思いますが、そういうことを知っていれば怒りも収まる面もあるのかな?と思いますし、逆に契約であったり着手承諾のプレッシャーを掛けられたときもうまくかわすことができるのかな?と思います^^