住宅ローンの選び方:リスクで考える固定金利と変動金利

こんばんは。さすけです\(^o^)/

住宅ローンの借り換えについて悩んでいて、色々と調べているのですが、その中で、金利が安いから銀行が販売する変動金利型住宅ローンを勧める内容が多い印象を持ちました。

確かに、3000万円の借り入れをした場合、全期間固定金利のフラット35の場合、2017年8月金利で1.12%、10年間は0.3%優遇があるとは言え、団信を含めれば返済総額は3771万円にもなります。それに対して、現在の銀行が販売する変動金利の金利は安いところでは0.5%前後の金利となっています。仮に返済期間中の平均金利が0.7%であれば返済総額は3410万円で済む計算になります。しかも銀行住宅ローンには基本的には団信費用が含まれています。

上記の通り旨くことが運べば返済総額には350万円以上もの差が生まれます。

しかし、支払総額や金利だけで住宅ローンを選択することは非常に危険なことと思っています。

2つの住宅ローンはそもそも性質も、使用すべき人も全く異なる住宅ローンと思うのです。今回は、固定金利(フラット35)と変動金利(銀行ローン)の性質の違いと、変動金利と固定金利のどちらを選択すべきかについて書いてみたいと思います。

目次

変動金利の仕組み:金利はいつ上がり、いつ下がるのか?

景気が良ければ金利は上がる

変動金利型住宅ローンの仕組みを理解するには「金利」の仕組みを理解しておく必要があります。

銀行ローンである変動金利型住宅ローンの金利は毎月見直しが行われます。

この金利は様々な要因によって変化します。

金利の基本は経済の需要と供給と同じです。すなわち、お金を使いたい人が多ければ金利は上がり、お金を使いたい人が少なければ金利は下がります。←自分はいつでもお金を使いたいですが、そういうことではありません。。。。

最も簡単なのは、景気が良くなれば金利は上昇し、景気が悪いと金利は下がるとされています。バブル景気の時には銀行金利が8%台に達したこともありました。景気が良いときは、物を作ればどんどんと売れるため、企業は高い金利でお金を借りてでも設備投資をして、バンバン物を作ってお金を儲けることができるので、金利は高くなりやすくなります。

逆に景気が悪いときは、企業は作っても物が売れないので設備投資を控える結果として「お金の需要」も下がってしまいます。高い金利のままでは誰もお金を借りてくれないので、銀行は金利を下げてお金を借りてもらう必要が出てきます。

これが最もシンプルな金利の変動要因です。

海外の金利が高いと金利が上がる

海外、特に米国、イギリス、ドイツなどの金利が上昇すると日本国内の金利も上昇します。

理由は単純で日本でお金を借りて、海外の銀行に預ける(実際は投資に回す)と利益が出やすくなるためです。

例えば、日本で1000万円を銀行に定期預金で預けていても概ね金利は0.1%程度です。1年後には10万円の金利を受け取ることができます。

しかし、米国の銀行に預ければ金利は1.5%程度になります。日本国内にいながら外貨預金で預けいれをしても1.4%程度の金利を受け取れます。すなわち、1000万円預け入れれば140万円が金利として受け取れます。日本に預けておくよりも130万円もお得です!

もちろん、アメリカの銀行は「円」を預け入れはできませんから、一度ドルに交換して、それを預け入れて、ドルから円に戻して受け取ることになるため為替変動リスクがありますからそんなに単純ではありません。

しかし、海外の金利が上がれば為替変動のリスクを踏まえても、日本円を借り入れて海外で運用した方が儲かりやすくなります。結果的に、海外の金利が上がると日本の金利も釣られて上がりやすくなります。

上記で挙げた金利変動の要因は景気や海外の金利動向等の他にもマクロ経済環境、金融政策の動き、さらには日本の財政状況等々様々な要因によって動きます。

実際の金利予測は不可能

将来の予測ができたら、それは現時点で達成される

ここで、ちゃぶ台を返すようですが、先ほど挙げた金利変動要因は、経済理論に基づけば正しいものです。でも、通常私達がアクセスできる情報ではま~ったく当てになりません。

将来の金利は誰にも確実な予測はできない、ということです。

なぜかというと、非常に簡単です。将来が予測できたら、その将来は現時点で実現してしまうのが経済だからです。

極端な話予言者がいて、明日の金利が確実に予測できる人がいたとします。しかし、その予言者でも明日の金利は予測不可能なのです

なぜならば、その予言者が「明日の金利は0.1%上昇する」と予想したとします。これを聞いた人は何をするかというと、明日金利が上がる前に銀行にお金を借りに行きます。結果として、お金の需要が上昇し、「明日0.1%金利が上がる」はずだったのが、「今日のうちに0.1%金利が上がる」ということになってしまいます。結果として、予言は外れてしまいます。

もちろん、その予言者が誰にも金利が上がるということを言わなければ、その予言は当たるかも知れませんが、誰もその予言を聞いていないので予言が当たったのか、外れたのか分からないのです。

予言というのはちょっと非現実的ですが、金融取引の世界では情報はほぼ瞬時に伝達されて処理されて、売買が成立します。

最近では高頻度取引として新聞などで議論されていることもありますが、2009年にニューヨークタイムズでゴールドマン・サックスが証券取引所に一定の費用を支払って、0.03秒だけ情報を早く入手して取引を行うことで多額の利益を上げていたことが報道され問題になりました。

日本でも、東京証券取引所が2015年からアローヘッドというシステムの運用を開始し、株式の注文を500マイクロ秒(0.0005秒)で行うシステムが運用されています。

多くの人が次の金利は上がる、と思った瞬間に金利は上がり、下がると思った瞬間に下がってしまうのです。

そのため、色々な経済評論家などが、金利が上がる、下がると言った話は全く当てにならないものと言って間違いありません。

景気が良くなると金利は上がって、景気が悪くなると金利が下がる?こんな基本さえ怪しくなる

先に書いた「景気が良くなると金利は上がり、景気が悪化すると金利は下がる」ということは中学校の社会科でも習っていることなので多くの方がご存じと思います。でも本当でしょうか?

下のグラフは、2004年1月から2017年8月までの13年間の東証TOPIX(青線)フラット35の金利(オレンジ線)推移を示したグラフです。

国内景気が良くなれば東証TOPIXは上昇し、景気が悪くなると東証TOPIXの指数は下がります。

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青線を見ると、2007年中旬から2009年にかけて大きく下落しているのがわかります。これは、リーマンショックによる影響です。続いて、2012年以降青線が上昇傾向にあることがわかりますが、これはいわゆるアベノミクスによる景気上昇です。

教科書通りならば、国内の景気が悪くなった時期(2008年~2009年)にはオレンジ色で示したフラット35金利は大きく下がるはずです。しかし、2010年あたりから下落傾向にはあるものの、100年に1度と言われたリーマンショックによる景気悪化ほど、金利は下がっていません。

また、2012年2月にはじまり現在も継続している(とされる)アベノミクス景気は、戦後3番目の長期にわたる景気拡大ですから、理屈通りならば金利は上昇に転じるはずですが、金利は底を這ったままです

景気が良くなると金利も上がり、景気が悪化すると金利が下がる、ある意味金利の超基本についてでさえ、実際にはその通りになっていません。

別に経済理論が間違えている分けではなくて、その他の要因とそれぞれの要因が絡みあった結果として金利が変化しているのが実態です。

そのため、経済学者が高度な統計処理を行えば、景気変動と金利の関係は東証TOPIXとフラット35の金利の間にも見られるはずですが、私達が実際にお金を借りるという段階では金利の変動要因を知ることはほとんど意味を持ちません。

そのため、一般消費者にとっては将来の金利を的確に予測するということは不可能です。一般消費者だけでなく、専門家にも不可能だと思います。。。。

ただし、ここで注意すべきは「将来の金利がいくらになるか?」ということを予測することは誰にもできませんが、「将来の金利の振れ幅がどの程度か?」ということについてはある程度予測可能であると考えられています。

良く誤解をされていますが、投資信託で務めるファンドマネージャーなどは、将来の利回りを予測しているわけではなく、将来のリスク(ボラティリティ)をコントロールしています。このあたりはややこしいので割愛します。見るべきは「リスク(金利の振れ幅)」だという点だけ覚えておいて下さい。

固定金利と変動金利の損益分岐点

フラット35(固定金利)と銀行住宅ローン(変動金利)では支払総額はどの程度変わるのか?

住宅ローンを変動金利にするか固定金利にするかを考える際、悩むのが「金利がどこまで上がれば固定金利よりも支払が増えてしまうのか?」ということと思います。

フラット35(全期間固定金利)で1000万円を35年返済した場合の支払総額は1186万円(当初10年0.3%金利優遇、金利1.12%、融資手数料0.4%:一条住宅ローンの場合)です。また、フラット35では団体信用生命保険料は別途掛ける必要がある(必須ではないです)ため、団信費用が35年間の累計で71万円必要となります。よって、繰り上げ返済をしなければ支払総額は1257万円となります。

上記では、多くの方が計算しやすいように1000万円の借り入れを想定しています。ご自身の借入額が3000万円であれば、上記金額を単純に3倍した金額、団信込みの支払総額は1257万円×3=3771万円となります

フラット35の返済総額は、繰り上げ返済をしない限り上記金額で「確定」となります。

一方で、変動金利について考えてみたいと思います。

どこの銀行でも構わないのですが、三菱東京UFJ銀行を例にすると、変動金利で借り入れを行った場合0.625%の金利となります。融資実行手数料は32400円で計算します。

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三菱東京UFJ銀行2017年8月実効金利

まずは、この金利が仮に35年間継続した場合を考えてみたいと思います。35年間0.625%が継続した場合の支払総額は1118万円となります。3000万円の借り入れをしていれば、3354万円が支払総額となります。

フラット35と比較すると1000万円借り入れあたりの支払総額の差は1257万円-1118万円=139万円となりました。3000万円を借り入れていれば、この4倍の支払総額の差となるため139万円×3=417万円もの支払総額の違いになってくることになります。

変動金利の金利は変動することが前提ですから、取らぬ狸の皮算用です。しかし、あわよくば生み出される支払総額の差額は1000万円借り入れあたり140万円程度ということはわかりました。

しかし、問題となるのは変動金利の金利がどこまで上昇したら、フラット35の支払総額を超えてしまうのか?ということが知りたくなります。

どこまで金利が上昇するとフラット35の方が得になるのか?

先に示したように将来の金利がどうなるかは誰にもわかりません。そのため、ここでは仮に借り入れから10年間は現状金利0.625%でそのままにしておいて、それ以降の金利がどこまで上昇するとフラット35の支払総額を上回ってしまうのかを計算してみます。

計算は面倒なので、割愛しますが、

10年目~35年目までの平均金利が1.95%を超えたら

フラット35の支払総額を上回ります。

いやいや、今後15年は金利は大きく変化しないと思われる方もいらっしゃると思います。その場合は

15年目~35年目までの平均金利が2.63%を超えたら

フラット35の支払総額を上回る計算になります。

このようにしてみてみると、変動金利の金利が将来2%程度で推移する可能性があると予測するならば、現時点でフラット35を借りておくという方がお得、という計算になります

借りた後には下がらない変動金利型住宅ローン?

変動金利型住宅ローンなのに、金利が下がらないのはなぜ?

これから家を建てようと思っている方は、家を建てようと思ってから住宅ローンの金利なども気になるようになって、銀行サイトをご覧になるようになった方も多いと思います。

そして、ここ数年「金利がじりじりと下がっている」と感じられている方も多くいらっしゃると思います。

そのため、固定金利で借りるよりも変動金利で借りておけば金利も下がって良いではないかと考えられている方もいらっしゃるかもしれません。

借り入れ時の金利が徐々に下がってきているのは事実です。

例えば、私が住宅ローンを借り入れた2012年当時に三菱東京UFJ銀行の変動金利型住宅ローンを組んでいた場合、金利は0.875%でした

それが5年経った今、0.625%まで下がっています。借入時の金利は0.2%下がっていることになります

そうなってくると、お金を借りた後も徐々に金利が下がっていって支払総額が今の想定よりももっと減るかも?なんて考えている方もいらっしゃるかと思います。

残念ながら、一度住宅ローンを借りたら、変動金利の金利が下がることはほぼありません

もしも、私が2012年当時、0.875%の金利で住宅ローンを借り入れていたとしても、現在の金利は0.875%のままで、0.625%にはならないのです

これにはカラクリがあります。

銀行が引き下げているのは「優遇幅」なのです。

2012年当時の金利は、店頭表示金利(2.475%)から1.6%の金利優遇があって、0.875%となっています。この金利優遇幅は返済期間中変わることはありません

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(2012年時点の三菱東京UFJ銀行Webサイトより)

現在の0.625%という金利は、現在の店頭表示金利(2.475%)から1.85%の金利優遇が行われた結果として、0.625%という金利になっています。

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(2017年時点の三菱東京UFJ銀行Webサイトより)

そのため、2012年に変動金利型住宅ローンでお金を借りている場合、現時点でも「店頭表示金利=2.475%」から1.6%の優遇を受けて、

2.475%-1.6%=0.875%

の金利でお金を借りている状態になるのです。

そのため、変動金利型住宅ローンであれば、支払が下がる、というのは大きな間違いです

そんな馬鹿な?と思われる方もいらっしゃると思いますが、もう少し具体的に見てみます。

2006年時点に変動金利で借りていた人は要借り換え?

例えば、2006年時点の三菱東京UFJ銀行のWebサイトを確認してみると、当時の変動金利型住宅ローンの金利優遇は0.7%であったことがわかります。

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(2006年時点の三菱東京UFJ銀行Webサイトより)

2006年時点に変動型で住宅ローンを借り入れていた場合、現時点の借入金利は

店頭表示金利(2.475%)-0.7%=1.775%

で借り入れている状態にあります。2017年8月時点のフラット35の金利は1.12%ですが、固定金利よりも変動金利の方が高い金利でお金を借りている状態になってしまっているのです。ここまで来ると、ほぼ確実に借り換えをしなければ損をしてしまっている状態にあると言えます。

店頭表示金利は20年以上ほぼ横ばい

1996年以降、店頭表示金利はほとんど変化していません。

バブル期の1991年には店頭表示金利が8.5%を付けたこともありますが、バブル崩壊後は大規模な金融緩和なども行われた結果として、1996年以降、都市銀行の店頭表示金利はほとんどの期間で2.375%~2.475%の範囲にありました。

店頭表示金利は0.1%程度は動くことはありましたが、ほぼ横ばいで来ています。

銀行はあくまで「今借りてくれたらこれだけの金利優遇をしますよ」という約束を、その住宅ローン実行時点でするため、店頭表示金利が変わらない限りは、借り入れ金利が変わることはないのです(借り換えをすれば変わりますが手数料が必要になります)

銀行に取ってみれば、店頭表示金利を下げてしまうと過去に借りたお客さん全ての金利を引き下げなくてはならなくなるため、大きな利益の喪失に繋がります。しかし、他の金融機関が金利を引き下げている中で、自分たちだけが高い金利のままでは誰もお金を借りてくれなくなってしまいます。

そこで、「金利優遇」という考え方が採用されて、融資実行時点の優遇幅を将来も変更しないという仕組みを作り出したのだろうと思っています。

この金利優遇は、銀行のWebサイトやテレビコマーシャルでぇあ「ず~っとうれしい」などと表現されることが多いですが、実際には、銀行のリスクを最小化するための非常に良くできた仕組みだと思います。

銀行にとってみれば、万が一世の中の金利が上昇局面に転じたら、「店頭表示金利」を引き上げることで、過去に住宅ローンを貸した人全てからより高い金利を得ることができるようになります。一方で、新規貸し出しを維持したければ、優遇幅を広げるということさえできてしまうのです。

35年前に35年後の世の中を予測できた人はいたか?

20年も変わっていないなら、変動金利がベスト?

1996年以降、都市銀行の店頭表示金利がほぼ横ばいであることは事実です。

そう聞くと、じゃあ、今、優遇幅1.85%という高い優遇幅でお金を借りておくのがベストな選択なのでは?と思われるかもしれません。

先ほど書いたように、将来の金利は誰にも分からないので、それが正しいこともあり得ます。

しかし、住宅ローンの借入期間は20年~35年程度とかなり長期にわたります。

いまから、「たった」25年前の1991年には店頭表示金利は8.5%でした。今後万が一金利が8.5%まで上昇しても、1.85%の金利優遇は適用されますから、実質の金利は6.65%となります。

バブルなんてもう起こるわけないじゃん、と思われる方もいらっしゃると思います。

ただ、バブルまっただ中にいた1991年当時の人に、25年後には銀行の住宅ローン金利が0.5%程度になっていると話したとして、信じられる人はいたでしょうか?

多分、鼻で笑われたと思います。

35年後の世の中と35年前の世の中

これから35年の住宅ローンを借りる人は、返済終了は2052年です。

ヨーロッパでは、2040年までにガソリン自動車やディーゼル自動車を全廃すると発表しました

日本は2050年までに温室効果ガス排出量を80%削減するとしています。すなわち、私達の電力やガスの消費量を80%削減するということです。今私達が使っている電気の2.5ヶ月分で1年を過ごすことに等しい対策が必要です。

世の中がどうなっているかなんて誰にも分かりません。唯一、それが分かるのは、今2050年の世界を作ろうとしていて、そして2050年まで生き残れた人だけと思います。そして、私も含めて大半の人は残念ながらそうではありません。。。

35年という時間は、人生の約半分です。想像できると言えば想像はできますが、でも、予想するにはあまりにも長すぎます。

35年後を予測することの難しさは35年前の世界で、35年後の世界を想像できたか?と考えるとわかりやすいように思います。

今から35年前は1982年です。私は6歳でした。。。ちなみに幼稚園児だった私の将来の夢は「カブトムシになること」でしたが、残念ながら実現できていません。。。。当時の私には将来カブトムシになれないなんて想像もできなかったと思います。。。すいませんどうでも良い話でしたm(_ _)m

1982年、映画E.T.が大ヒットして、SONYが世界初のCDプレーヤーを発売しました。また、歴史の教科書にも載っているフォークランド紛争が起こったのも1982年です。

1982年には持ち運び可能な携帯電話はありませんでした(車載型のみ)。インターネットの原型であるARPANETは存在していましたが、商業利用はされていませんでした。

その当時に35年ローンを借りた人は、今年、住宅ローンの返済が終わっています。ちなみに当時の住宅ローン金利は概ね5%程度でした。

35年前に現在の世の中を予想できた人はどれくらいいたかと考えると、世界中を探してもほんの一握りであったように思います。

マイクロソフトは1975年に、そして多くの人がこのページをご覧になっていただくのに使われているiPhoneを販売しているアップルコンピュータは1976年に操業しています。

それこそ、ビル・ゲイツやスティーブジョブズなどは35年後の世界を予想できていたのかも知れません。というか、そうなるように作ってきたのだと思います。

話が逸れますが、私が見た中で衝撃的だった動画があります。

この動画は今から30年前の1987年にアップルコンピュータが制作した動画です。

この動画では、形はもちろん全く違いますが、iPadのようなものやインターネット、Google Earth、そして音声認識アプリSiriなどに近い物が描かれています。これを30年前に描いていたということは本当に驚かされます。そして、自分が35年後を想像することはできないとも思わされるのです。

住宅ローンから少し、話が逸れたので戻します。

35年前に35年後を想像することと、今、自分が住宅ローンを返済完了する35年後を想像することは等価と思います。

住宅ローンは「想像」ではなく、「現実」です。金利が上がることはない、という期待をすることは構いませんが、それに掛けてしまうのは少し危ないと思っています。

私がフラット35を選ぶ理由:変動or固定

固定金利に含まれる「保険料」

私は変動金利を選ぶよりもフラット35を選択した方が無難な選択だと思っています。

それは、将来金利が上がるかも知れないからフラット35を選んだ方が良いというものではありません。

フラット35は万が一の時に自分の生活を維持するための「保険」と思っていて、最悪400万円程度の高い金利を支払うことになる、この400万円を保険料と思っているからです。

私の場合は3750万円の住宅ローンを組んでいます。10月までには借り換えを行う予定ですが、それでも繰り上げ返済をしなければ支払総額は4800万円ほどになります。それに対して、2012年の借り入れ当時に0.875%の変動金利で住宅ローンを借り入れていて、今後30年以上にわたってこの金利が続いた場合は、支払総額は4400万円になるはずです。

すなわち、変動金利を選んだ場合に比べて最大、400万円多く支払を行うことになります。

金利は誰にも予測できないと言っておいてなんですが、おそらく総支払額ベースで見た場合、変動金利よりもフラット35の方が多くなるだろうとは思っています。しかし、それでも全期間固定金利を選択します。

なぜならば、この400万円は保険料と思っているからです

月々または1年の支払総額の限界を考える

3750万円を借り入れた場合の月々の返済額はおおよそ10万円です。

将来、何らかの要因で金利が6%前後の金利が5年間続いた時、時期にもよりますが、月々の支払い額は16万円~20万円に達します。

単純に今の住宅ローン支払いが倍になる計算です。この支払いは家計に大きな打撃となります。おそらく、現在と同様の生活水準を維持することは困難になるでしょう。また、子どもが私立の大学に通ったりしたら、海外旅行はもちろん、国内旅行もできないでしょうし、もしかしたら床暖房もオフにしなければならないかもしれません^^;;

もちろん、金利が6%等という異常な事態が起こる可能性は高くはないように思っています。しかし、25年前には6%以上の金利であったことも事実です。

「保険」とは自分自身では対応しきれない万が一のことが起こった時に備えて、お金を支払っておく仕組みです。

フラット35の金利は変動金利に比べれば確かに割高です。しかし、35年間金利が変わらないということは、少なくとも私は月々10万円、年間120万円を支払う能力だけを維持できれば、現在の生活水準を維持することができます。

変動金利を選択すれば、目先の月々支払額は1万円程度安くできます。しかし、月々1万円が浮いても、嬉しくないとは言わないまでも、生活水準が大きく上がることもありません。

私自身はこの月々1万円、年間12万円、35年で約400万円の支払増は、生活水準を安定させるための保険料と思っているため、フラット35を選択しています。

生命保険料、就業不能保険料等々、の保険料が月々1万円~2万円程度と言うのは不自然さはないと思います。

生命保険、できれば起こらないで欲しいですが、私が死んでしまえば家族の家計を維持できなくなることへの備えです。そして、就業不能保険は、私が病気や怪我で働けなくなってしまった場合の生活を維持するための備えです。火災保険は、万が一家が燃えて焼け出されてしまった時の備えです。

いずれも、35年以内に起こる確率は高くはないものの、起こってしまうと生活を破綻、または生活水準を大きく下げざるを得ないことに備えた保険です。

私にとってのフラット35の選択は、生命保険、就業不能保険、火災保険と同様に、生活水準を維持するための保険として月々1万円の保険料を支払っていると思っています

ただし、私以外の全ての人がフラット35を選択すべきだ、とは全く思っていません。むしろ、必要のない保険を支払うのは馬鹿げており、変動金利を選択した方が有利な人もたくさん居るように思います。

変動金利を選ぶか迷っている方へ:変動金利を選んだ方が良い人

金利6%の支払に5年程度耐えられる方

金利上昇と言っても無限に金利が上昇することは考える必要はないと思っています。そんなこと言っていたら、明日隕石に当たって死ぬ心配をしなければならなくなります。

一つの基準は過去の金利水準が参考になります。日本が高度経済成長を終えた後、最も高い金利水準だったのは1980年代広範から1991年までのバブル期と思います。

1987年から1991年までのバブル期において、住宅ローン金利は6%から8%で推移していました。

現在、変動金利で借り入れを行えば2%近い金利優遇を受けることができます。そう考えると、実質的な最高金利は6%程度と見なすことができます。

バブルの期間は概ね5年程度であったことから、万が一としては5年間金利が6%に達する、という事態は想定しておくべきと思います。

この場合、ざっくり、現在の支払額が2倍になります。

そのため、現在の想定する借入額を踏まえて月々返済額が2倍になっても生活を維持できる場合は、変動金利を選択しても良いと思います。

逆に、月々の支払い額が2倍になったら生活そのものを維持できない、家を手放さなければならない、と言う方は変動金利を選ぶべきではないと思います

35年以内に金利が6%になることを想定するなんて馬鹿げている、と思われる方は多いと思います。しかし、何度も言いますが、25年前、金利が8%を超えていた当時、20年後には金利が1%を下回る、等という話は誰も信じてくれなかったはずです。

もちろん、これは万が一の備えです。月々1万円程度の保険料をこの「万が一」に備えて支払うかどうかは、個人の判断と思います。

一方で、そもそもフラット35を選択すべきではない人もいます。

一括返済可能な貯蓄または現金か可能な資産がある方

フラット35を選択すべきではない人の最も典型的なパターンは、「いつでも一括返済可能なだけの資産」を持っている方です。基本的に税金対策として住宅ローンを組まれている方はフラット35は使うべきではないと思っています。

そういった方は、万が一急激な金利上昇が発生してしまったら、一括返済すれば金利上昇の影響を受けることがありません。

そのため、そもそも「保険」をかける必要がありません。いつでも一括返済可能な資産を持っている方がフラット35を選択するということは無駄な保険を掛けることと同じと思います。よって、このような方はフラット35を選択すべきではないと思います。

残高の半額を繰り上げ返済可能な方

フラット35を選ぶべきではない、とまでは言わないまでも変動金利でも良いと思われるのは、「借入残高の半額」をいつでも繰り上げ返済可能な方です。

借入残高の半額を繰り上げ返済をすれば、月々の支払い額はおおよそ半額になります。

万が一、金利が6%に達した場合、月々の返済額は倍になりますが、そこで借入残高の半額を繰り上げ返済してしまえば、月々の支払い額はいままでと同じ水準を維持できます。

結果的に生活水準に影響を与えることはありません。

もちろん、この繰り上げ返済に用いる資産は、当面使う予定がないお金である必要があります。

まとめ:固定金利と変動金利の選択

1000万円借り入れあたり月々3500円の保険料をどう考えるか?

固定金利と変動金利は、将来の万が一の金利上昇に備えて、保険料を支払って金利上昇のリスクを回避するか、それとも自分自身でそのリスクを追うか、という問題に帰着します。

35年返済、1000万円の借り入れを行った場合、フラット35の月々の支払い額は団信込みでほぼ3万円ちょうどです。それに対して、現行の銀行ローンを使えば0.625%の金利で借り入れた場合月々の返済額は26500円です。

この差額、3500円が「保険料」ということになります。

3000万円の借り入れの場合、保険料は3倍で約1万円となります。

この保険料を支払っておくことで、将来急激な金利上昇が生じても支払額が変わることがない「権利」を得ることができるのが全期間固定金利型住宅ローンの本質と思います。

概ね支払額の1割の保険料です。

これを高いと思うか、低いと思うかは人それぞれと思います。

過去の経験に基づいて将来の金利上昇リスクの幅を踏まえた場合、支払が2倍になることに耐えられる世帯においては、おそらくはトータルの支払総額を低く抑えられるであろう変動金利の方が有利なケースもあります。

また、収入の状況等によっても考え方は大きく変わってくると思います。

子どもがまだ小さく、将来の教育費が多くかかる世帯では住宅ローン支払が2倍になるのは死活問題と思います。そのような場合は「保険」を掛けて生活水準を安定させることができるフラット35の方が良い選択と思います。一方で、子どもがすでに大きかったり、いなくて、夫婦共稼ぎで収入にも余裕がある場合には、必ずしも「保険」を掛ける必要がないケースもあります。

これから住宅ローンを組まれる方は、是非目先の金利や支払総額だけではなく、一時的な金利上昇による月々の支払い額上昇に伴う「保険」として固定金利型住宅ローンを検討してみてはいかがかと思います\(^o^)/

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