大日本印刷による壁紙(EBクロス)不具合補修費用は350億円以上!?情報は公開しないの?

こんばんはさすけです。

~情報更新のお知らせ~

大日本印刷EBクロス不具合について最新の情報を

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にまとめさせていただきました。最新の情報は上記記事をご覧いただけますようお願いします。

先日、一条工務店が標準クロスとして採用していたサンゲツEBクロスの不具合発生についてブログに書かせていただきました。

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今回は、この問題を引き起こし、また、EBクロスの補修を行っている大日本印刷の対応に焦点を当ててEBクロスの不具合、リコールの問題を考えて行きたいと思っています。

EBクロスの不具合問題がどれほど大きな問題となっているかが分かってくるように思います。

目次

大日本印刷・サンゲツが壁クロスの不具合を隠すことの問題点

言った者がちの現状

まず、事実として、今回、EBクロスの不具合問題について、不具合を申告してきた消費者に対しては大日本印刷が最終的な責任を負う形で不具合への対応を進めています。

しかし、このEBクロス不具合に対する対応については、重大な問題があると思っています。

それは、EBクロスの製造元である大日本印刷も、そしてEBクロスを独占して販売してきたサンゲツも自社が製造・販売したEBクロスに不具合があることを公式には一切隠しているという点です。

2016年12月現在、少なくともEBクロスの製造元である大日本印刷、販売元であるサンゲツはいずれもこの壁クロスに問題があることを公にはしていません。問合せをするとある程度は回答をしてくれることから、両社はEBクロスの不具合を積極的に隠している分けでもないようですが、最終消費者に積極的に伝えようという姿勢は全く見せていません。

あえて強い言い方をするならば不具合を隠蔽する対応には重大な問題があると感じています。それは、自分の家の壁クロスが何かおかしい?と感じた人のみが補修を受ける事ができ、壁紙とはこう言うものだ、子どもがいるから仕方ない、といったようにあきらめてしまった人々には一切の補償を行わないことを意味しており、「言った者勝ち」となっている点に大きな問題があると感じています。

なぜ大日本印刷・サンゲツはEBクロスの不具合を隠すのか?

これまでに大日本印刷等から対応を受けた方からいただいた情報をまとめると、大日本印刷、サンゲツがなぜEBクロスに大規模な不具合が生じていることを最終的な消費者、すなわちEBクロスの不具合に直接悩まれている人たちに公にしないのか?すなわち隠しているのか?と言う理由としては以下4つの理由を挙げています

言い分1:最終消費者がわからない

大日本印刷やサンゲツがEBクロスの不具合を公表しない理由として、第一に挙げているのは、製造元である大日本印刷には最終的な消費者が誰か分からないと言うことを挙げています。これは、EBクロスの製造・販売方式にあります。

下の図のようにEBクロスの製造は全て大日本印刷が行っています。製造されたEBクロスはライセンス契約を行っているサンゲツに全て納品され、サンゲツが一条工務店をはじめとする工務店やハウスメーカーに納品しています。

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そして、施工を行うハウスメーカーや工務店、マンション施工者、そして直接販売するホームセンター等を通じて不具合のあるEBクロスは最終消費者である一般顧客の住宅に施工されます。

この図で、大日本印刷から見えるのはライセンス契約を結んでいるサンゲツのみとなります。また、販売元であるサンゲツにしても工務店やハウスメーカーが顧客であるため、自社の製品がどの住宅でで使われているのかを把握できてはいません。

そのため、大日本印刷やサンゲツにとっては、最終消費者が誰かわからないため、「公表しない」としています。

私の感覚では誰が最終消費者か分かればそこにコンタクトして再施工を促せば良いだけなので、それこそ公表は不要と思います。最終消費者が誰か分からないからこそ公表するのが筋であるように思うのですが、最終消費者が誰か分からないから公表しない、というのが大日本印刷やサンゲツの言い分となっています。

なぜ、このようなことになるのかというのは、「言い分2」に理由があるように思っています。

言い分2:顧客(最終消費者ではなくサンゲツや工務店)に迷惑がかかる

個人的には、これは非常に不愉快な理由に思うのですが、大日本印刷やサンゲツがEBクロスに不具合があることを公表しない理由を、「顧客に迷惑をかけないため」としています

ここで言う「顧客」とは、最終消費者ではない点が非常に不愉快な部分です。ここでの顧客とは、言い分1の図で示した、大日本印刷とサンゲツにとっての「顧客」である工務店やハウスメーカーのことを指しています。

今回不具合を起こしたEBクロスを製造した大日本印刷や販売したサンゲツからは最終的にどこの現場で自社の製品が使用されたかが分からないと言うのは事実と思います。そのため、最終的にどの現場で自社の製品が使用されたかを特定するのは、「自社の顧客」であるハウスメーカーや工務店ということになります。

不具合の存在を公にしてしまえば、自社の製品を使用した多数の現場で「不具合の有無」を確認しなくてはならない状況になります。このようなことになれば、日常業務+不具合対応を「自社の顧客」であるハウスメーカーや工務店の関係者に強いることになるので、公表しない、としているのです

実際に不具合に悩まされているのは、工務店やハウスメーカーではなく、最終消費者である家に住む人々であるのに、そのことは全く無視して、言ってきたら対応をするということになってしまっているのです。

大日本印刷やサンゲツにとっての「客」は工務店やハウスメーカーまでであって、最終的な被害者を無視した対応には極めて不信感を持たざるを得ないというのが、個人的な意見です。

一応、大日本印刷やサンゲツとしては、これら自社の顧客であるハウスメーカーや工務店に迷惑をかけることで、そこで家を新しく建てている人たちに迷惑がかかるので、公表しないということも言ってはいるようですが、だからといって、実際に不具合商品を販売して被害を生じさせた住宅に公表しない理由にはならないように思っています。

ただ、この「自社の顧客に迷惑をかけたくない」ということさえ、本当に隠したいことを隠すためのイイワケのように思えて来ます。これは後ほどの有価証券報告書の分析から明らかにしていきます。

言い分3:問題のあるクロスは限定的

もう一つ、EBクロスに不具合があることを公にしない理由として「一部の製品の不具合に過ぎないから」ということを理由として挙げています。

すなわち、EBクロス全てにおいて不具合が生じているのではなく、EBクロスの一部分だけで不具合が生じているから、公にすると不具合を生じていない壁クロスにまで不信感を持たれたり、検査が必要になってしまい点件等の業務に支障を来してしまうと言うことを理由として挙げています。

しかし、調べた限り、不具合を生じさせているEBクロスは「一部」ではなく2011年の販売開始から2013年までに製造された大部分のEBクロスで不具合を生じさせており、「一部」というのには到底あたらない現状が見えてきます。少なくとも、補修に350億円をかけなければならない規模の不具合を「一部」とするのは無理があるように思います。

言い分4:健康に影響はない(と言っている)

今回の様に誰が最終的に購入したかが分からないけれど不具合を生じさせてしまって回収等をしなければならないケースとしては、食品などにおいて製造ライン上で異物が混入してしまったケースなどがありますが、このようなケースでは広く告知をして全てを回収することが広く行われています。

今回、大日本印刷やサンゲツが問題の存在を公にせずにリコールをしない理由として「健康上の影響はない」ということを理由として挙げています。

しかし、健康上の懸念がないというのは「不具合を出した大日本印刷やサンゲツが言っているだけ」で実際に被害に遭っている人はそれを検証できない、という点には重大な問題があると思っています。健康上への影響の有無は、不具合の情報を公にした上で、第三者の検証結果もふくめて公表して、これを最終消費者が判断してはじめて健康に影響がないと言えるものと思います。

さすがに、健康上の懸念がない言う以上は、第三者機関等に試験を依頼して健康上の懸念の有無を検証はしていると思っています。

しかし、私達最終消費者はそれが自社の都合の良いように改竄されていないかどうか?適切な試験が行われているかどうか?と言った点を検証することは全くできない状態にあります。

ここからは私の個人的推測ですが、大日本印刷やサンゲツが依頼した試験は一般的な接触・経口暴露試験と呼ばれるものではないかと思っています。すなわち、剥がれ落ちたEBクロスの粉末に触れても人間の健康に影響が出ないことを確認し、舐めたり食べたりしても健康上の問題が出ないかを確認しただけではないかと思っています。

これはもの凄く当然ですが、このような試験はほとんど意味はありません。なぜならば、そもそも壁紙に触っただけで健康被害を及ぼすようなものが使われている分けはなく、また、壁紙は子どもやペットも多く触れる場所でもあることから舐めたり、食べてしまったとしても健康に害を及ぼすような物質が使われている分けがないのです。むしろ、この試験で有害となったらそれこそ大問題です。このようなことは試験をする前からわかりきっていて、わかりきった試験をやってそれを持って健康上被害がないと述べているように思っています

しかし、今回のケースでは通常の壁紙では生じない健康被害の懸念が挙げられます。それは「吸入暴露」が懸念されます。下は先のブログの記事をアップした後、ブログをご覧の方からいただいたEBクロスの不具合が出ていたお宅の写真です。

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これは何らかの故意によって壁紙を削ったわけではなく、日常生活を行っていく中で壁紙が自然にぼろぼろと剥がれ落ちていった結果になります。

このような粉状になったEBクロスの粉塵は空気中を漂うことが懸念されます。粉のように舞っているEBクロスの粉塵は生活者が呼吸と共に吸入することになります。吸入によって生じる健康被害は、その材質自体が溶け出して健康被害を与えるのとは異なり、肺に付着することによって被害を生じさせることがあります

また、健康な人であれば問題はないけれど、喘息等の持病がある方がこれらを吸い込んだ場合どのような結果になるのかについては検証をしていないのではないかと思っています

例としては少し過激ですが、アスベストの例が分かりやすいものです。アスベストは一般に石綿と呼ばれる無機物で、アスベスト自体は仮に食べても触っても無害な物質です。しかし、呼吸と共に肺に入ってしまうことで中皮腫と呼ばれる癌を生じさせ、極めて重大な社会問題となりました。そして、吸入暴露によって中皮腫が生じるまでの潜伏期間は40年とも言われています。

今回のEBクロスがぼろぼろとなって粉状になり、それが粉塵として呼吸と共に吸入された場合、それがどのような被害を及ぼすのかについては不明です。直感的にはアスベストのような尖った微細構造を持つとは思えないことから、中皮腫は引き起こさないだろうとは推測しますが、それも素人の推測に過ぎません。

こういった試験をしているのならばその情報を公開すれば良いと思いますが、全ての情報が隠されている中で「大丈夫」としか言われていない状況では懸念を持たざるを得ないように思います。少なくとも、吸入暴露試験というのは、経口暴露試験や接触暴露試験に比べて大掛かりな試験になること、また、時間を要することから試験の規模が全く異なり、これほど短期間では結論を得ることはできないように思っています。そのような中で「健康に影響がない」とする根拠は何なのか?と言う点は気になるところです。

全ての情報を隠し、顧客としては工務店やハウスメーカーしか見ていない企業が「大丈夫」ということにどの程度の信頼性があるのかについては個人的には大きな疑問を持っています

大日本印刷が本当に隠したいことは??

これはあくまで個人的な推測に過ぎませんし、これは穿った見方すぎると言われるかも知れませんが、大日本印刷が壁クロスの問題を公にしたくない理由は別にあるように思えます。

それは、「株価への影響を最小限に抑えたい」という強い意思が働いているように思えてなりません。

今回のEBクロスの被害額は、不具合を公表していない状態で、自ら伝えてきたクレームへの対応費用として合計350億円以上が計上されています。この金額は、大企業である大日本印刷にとっても決して小さな損失ではなく、後で述べるとおり株価に影響を与えかねない規模の損失となっています。

EBクロスの不具合を広く告知すれば、これまでは不具合と気が付いていなかった人達からもクレームが上がってきます。そうなれば、当然対応費用はさらに上昇することになるでしょう。。。これ以上、被害を拡大させないためには「被害を認知させなければ補修費用が発生しない」そのような意思決定が成されているのではないかということを懸念しています。

先ほどから350億円の被害額という話をしていますが、これについてはしっかりとした根拠資料があります。具体的にEBクロスの不具合によって生じた損失の規模とその証拠資料を確認していきます。

大日本印刷は既に補修対策費用は350億円以上を出している!?

有価証券報告書に記載されているEBクロスの不具合

2016年6月29日付け122期 大日本印刷有価証券報告書では「住空間マテリアル関連はDNP(注:大日本印刷の略称)のEB(Electron Beam)コーティング技術を活かした環境配慮製品などの販売や海外市場の開拓に注力したが、受託建設設備需要の回復の遅れにより、前年を下回った。なお、一部の製品の不具合により、補修対策を実施した。」との記載があります。

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この「一部の製品の不具合」こそが、サンゲツEBクロスの不具合です。一般的に個別の不具合等が有価証券報告書に記載されることは希であることからEBクロスの不具合が企業経営そのものに影響を与える重要な内容であることがわかります。

EBクロス補修費用は1年目で77億円

有価証券報告書を精査していくと、EBクロスの問題がどれほど大規模な問題であるかも分かってきます。

有価証券報告書にはEBクロスの張り替えに伴う損害額(有価証券報告書上の記載は補修対策費用)として2015年度に76億7200万円の特別損失が計上されています

 

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(大日本印刷第122期有価証券報告書54ページ)

この補修対策費用の説明は下記の通りで、不具合への対応費用である事も明記されています。

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(大日本印刷第122期有価証券報告書65ページ:補修対策費用の説明)

大日本印刷は上場企業であり、また、日本を代表する大企業の一つです。大日本印刷の売上高は2015年度で1兆4559億円、経常利益526億円となっています。すなわち、問題がなければ経常利益は526億円+77億円=603億円であったものが、大日本印刷はEBクロスの不具合によって経常利益の1割以上を吹き飛ばしてしまった計算になります。

これは、一部上場企業としては経営上極めて重大な問題を生じさせたと言えると思います。。。

大日本印刷はさらに280億円の追加的特別損失を計上

大日本印刷は2016年9月12日付けで「特別損失及び特別利益の計上に関するお知らせ」と題して、さらに280億円の特別損失を計上しています。

社長名義にて「一部の壁紙に生じた不具合により、補修対策を実施していますが(中略)補修対策用280億円を特別損失として計上する見込みとなりました」として、新たに280億円の壁紙補修対策費用を計上しています

この280億円が今後対策が必要となる全ての住宅を対象とした対策費用であるのか、それとも、来年度も新たに追加的な補修対策費用としての特別損失を計上する必要があるのかについては情報が公表されていないため全く不明です。

現時点では大日本印刷は壁紙の不具合がどの型番に生じているのか、何世帯程度に販売が行われたのかという情報を一切公開していないため、昨年度の77億円、今年度の280億円合計350億円以上の特別損失で、損失が終わりになるのか、それともさらに損失が拡大するのかは全く不明な状態です

経常利益が500億円台の企業として、2年間で350億円以上の特別損失の規模は、企業経営に対して極めて甚大な影響を与えるものと推察します。

実際、株価への影響を回避することを目的としていると推察される、特別利益を計上することで、特別損失を有価証券報告書上では帳消しにして当期利益が上昇するよう修正を行っています。先のお知らせ資料によれば280億円の特別損失を計上する今年度は、同時に大日本印刷が保有するリクルートホールディングス株の売却によって390億9300万円の特別利益を計上することで、特別損失を相殺し、有価証券報告書上は当期利益を上昇させています。これは別に悪いことではありません。また、リクルート株の売却は大日本印刷が単独で行っていることでもありませんが、大日本印刷が特別損失の経常だけでは株主への説明が行えないという判断も踏まえて行われた決定であろうと推察されます。

大日本印刷による未公表のEBクロス不具合は特別損失なのか?

少し本題とは離れますが、特別損失はと「反復経常的に行われる企業の営業活動や金融活動以外から生じた一時的性質をもつ損失のこと(神戸大学大学院MBAプログラム 専門職大学院課程ページより)」と見なすのが一般的です。すなわち、特別損失とは「一時的損失」または、その事業年度において特別な事情によって生じた損失を指します。

一方、EBクロス不具合の問題は自体を公表していない以上、今後拡大していくことが予想されます。。。少なくとも10年を保証期間として定めている以上、2023年までは問題は継続し続けます。その金額についてはわかりませんが、少なくとも問題が広く顕在化していない2015年度決算期間で経常利益の1割以上に達する77億円の特別損失計上されており、2016年度には今後の補修費用分も含めていると思われる280億円の特損を計上しています。

そして、一条工務店単独でも、今後1万軒以上の再施工費用が発生することが予想されます。1軒あたりの補修対策費用を40万円と見積もっても40億円の補修費用が発生します。さらに、マンションであれば管理組合の同意を経るプロセスなど複雑なプロセスが発生することから費用的にも増大する可能性があります。

今回のケースでは、大日本印刷の会計監査を担う明治アーク監査法人も記載内容に問題がないことを保証しているように、ルール上は問題がないのだろうと思います。当然、監査法人は株価への影響や株主利益に反しないと考えて、有価証券報告書の記載をチェックし、このEBクロスの「隠れ負債」の問題も把握した上で、監査を行っていることは当然と思われます。

本当に特別損失で計上することが株主利益に反しないのか?また、将来にわたってどの程度の特損が計上されるかを企業のリスク要因として公表していない姿勢が正しい姿勢なのか?には個人的には大きな疑問を感じます。ルール上問題ないのだから良いと言えばそれまでですが、、、

大日本印刷の利益は変わってないし大した影響はないのでは?

大日本印刷の連結売上高は2014年度が1兆4621億円、2015年度は1兆4559億円で、売上高はほぼ横ばいと評価できます。また、事業活動に伴う利益である経常利益は2014年度が538億円、対して2015年度が527億円で、11億円の減益ではありますが、微減といったところです。ここに、新たにEBクロスの不具合による76億7千万円の特別損失が計上されれば、100億円近い大幅減益となるはずです。しかし、あら不思議、特別損益を計算した後の、2014年度の当期利益511億円に対して、2015年度の当期利益は548億円となり37億円の増益となっています

こういう有価証券報告書では必ず何か「カラクリ」があると思っています。有価証券報告書を読み解くことでなぜ売上減、経常利益減なのに、当期利益が増大したのかが分かってきます

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それは先ほども少し触れた「特別利益」にあります。特別利益の中に記載されている「投資有価証券売却益」が2014年度が44億円に対して、2015年度は151億円となっており、107億円増大しています。これによって、経常利益減の11億円やEBクロス不具合による特別損失77億円を計上しても107-11-77=19億円の「利益」が計上できます。その他の諸々の損益を踏まえて、最終的な当期利益は37億円の増益となります。

このような有価証券報告書における当期利益の維持のカラクリ、またはテクニックは今年度も継続して行われています。

先に述べたように、今年度は特別損失として280億円を計上する一方で、リクルートホールディングス株の売却による特別利益を390億円計上することで、最終的な当期利益を110億円増やし、見かけ上の当期利益を上昇させることができます。

ただし、これは資産を切り売りすることで単年度の収益を上昇させているので、企業価値としては280億円が減ってしまっていることには違いありません。ぶっちゃけ一般消費者に取っては、特別損失を特別利益で相殺することの意味はいまいちよくわかりません。。。しかし、ここで特別損失を相殺できるかどうかで、株価に大きな影響を与える可能性があるためにこのようなことをしていると推察(邪推)できます。

大日本印刷は当期利益を維持して何を守ろうとしているのか?ROEの維持

これは推測ですが、大日本印刷が自社株やリクルートホールディングス株の売却することで、EBクロスの補修対策に伴う特別損失をうまく隠し、当期純利益必至に維持しようとしているのはROEの維持が目的ではないかと考えています。

ROE(株主資本利益率)は投資において企業の経営状態を知るための重要な指標です。

ROE=当期純利益÷株主資本

によって計算できる指標です。大日本印刷の2015年度ROEは

大日本印刷ROE=当期純利益:347億400万円÷株主資本:8947億5200万円

で計算でき

 大日本印刷ROE=3.88%

となります。決して高いROEとは言えない状況です。このような状況で、仮に昨年度の壁紙補修に伴う特別損失がそのまま計上されてしまうと、(税金等が変わるので数値は実際とは異なりますが)約30%の法人税等を考慮した場合、当期純利益は77億円×0.7=約54億円減少します。

よって、特別利益を計上しないままROEを計算すると3.28%となってしまいます。全年度のROE3.16%からわずかなROEの上昇に留まってしまいます。単年度の問題であれば何とかなりますが、今年度の280億円の特別損失になってくると、仮に今年度の株主資本や経常利益等が今年度と同一であった場合、280億円×0.7=約196億円の当期純利益の減益となり、ROEは1.69%まで落ち込んでしまいます

ROEが1%台まで落ち込むというのは、外的要因によって当期純利益が赤字となった2011年度決算以来となる、低ROE状態となってしまいます。そして、2011年度決算発表の翌年には、大日本印刷の株価は直近10年で株価が最安値となる503円となっています。

大日本印刷は上場企業である以上、企業価値、すなわち株価を高値に維持する責務を負っています。よって、壁クロスの補修に伴う特別損失を自社が保有する株式の売却によって、フォローすることで当期利益を維持し、調整局面に入っている自社の株価をなんとか維持しようと考えているのではないかと感じます。

このような特別利益による特別損失のフォローは、会計処理としては正しいものですし、また、株主対策としても必要な対策なのだろうと思います。そして、有価証券報告書において、財務状態の自社評価として下記の記載に至ります。

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「特別利益は、投資有価証券売却益の増加等により、前期に比べて116億円増加して164億円(前期比240.4%増)となり、特別損失は、前期に比べて67億円増加して143億円(前期比89.6%増)となった。
この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は335億円(前期比24.8%増)となった。1株当たり当期純利益は、前期に比べて11.28円増加して53.09円となった。」

とあります。すなわち、特別損失はあったけれど、特別利益が増えたから、1株当たりの利益は増大した、すなわち財務状態は良くなったと記載されています。これは自社の資産を現金化してその年の利益を「綺麗にする」行為です。これは企業経営として、株主対策としても決して間違えたことではありませんし、当然のことと思います。ルール上も全く問題がありません。

しかし、ここで言える事は「EBクロスの補修費用は特別利益によって有価証券報告書のような経営上極めて重要な書類を『綺麗に』しなければならない程度に深刻な問題であった」とも見ることができます。すなわち、EBクロスの補修費用は経営判断上見過ごし得ない損失であったと判断されたと強く類推されるものと思います。

そして、大日本印刷は今期(2016年度)、当初の利益予想を大幅に下方修正し、経常利益の見通しを33.3%下方修正するに至っています。(日本経済新聞2016年11月10日「大日印が一転営業減益に 17年3月期、液晶向けが低迷

この収益の下方修正は壁クロスの不具合対応が直接的な要因ではないとは言え、経常利益が180億円下方修正されたことを踏まえると、仮に280億円の壁クロスの不具合に対する補修費用280億円が発生しなければ、このような下方修正を発表する必要もなかった、と見なすこともできます。

ここまで有価証券報告書の情報をベースにEBクロスの不具合問題を見てくると、1兆円を超える売上を誇る大日本印刷にとっても経営上無視し得ない問題と捉えていることが分かってきます。では、この350億円という不具合による損失の規模を他の不具合と比較して見たいと思います。

リコールの規模で見た今回の壁クロス不具合の重大性

タカタのエアバック問題の単年度特別損失で556億円

問題を自動車のエアバックのような人命に直結する問題と比較することは適切ではないかも知れませんが、大日本印刷が計上した単年度280億円という壁クロスの「リコール」費用がどれほどだ規模であるかを確認してみます。

タカタのエアバック問題は昨年度連日のように報道されていたので記憶されている方も多いかと思います。このタカタのエアバック問題で2015年3月期にタカタが計上した特別損失は556億円でした。

今回の大日本印刷が計上した損失280億円よりも規模は大きくなりますが、全く報道もされていない大日本印刷の壁紙不具合の規模がタカタのエアバック問題に匹敵する規模の特別損失を計上していることに驚きを隠せません。

また、直近では、韓国のサムスンが販売するギャラクシーノート7の250万台リコールにかかる費用が1000億円と言われています。

タカタにしても、サムスンにしても世界全体でのリコール問題の費用であるのに対して、大日本印刷のEBクロス不具合は国内に限定された問題であること、利用世帯数は多くても10万軒の規模であることを踏まえると、大日本印刷のEBクロス不具合に計上された特別損失が極めて巨額なものとなっているかがおわかりいただけると思います。

率直な感想:大日本印刷で良かった

どうでも良いことですが、今回の問題を見ていく中で、一消費者としては問題を起こしたのが大日本印刷で良かったとも感じました。一条工務店単体で1万軒以上の住宅の壁クロス張りかえが発生します。一条工務店の経営状態は健全であるとは言え、企業規模、経常利益から考えて50億円程度の損失は、正直無視できない損失となり、結果的に今後の商品開発等に影響を与えることが懸念されます。また、EBクロスの販売主体であるサンゲツにしても、上場企業であるとは言え経常利益90億円規模の企業です。おそらく、数百億円規模の今回の補修対策費用を賄うことは企業の体力的に不可能なものとなっていたように思います。

しかし、今回のEBクロスについては製造元である大日本印刷が全ての責任を持って対応を進めていることで、それならば大丈夫だと感じました。先にも述べたように大日本印刷の企業規模は一条工務店やサンゲツと比べると5倍以上の開きがある企業です。大日本印刷にとって無視できる金額ではありませんが、年間100億円程度の損失に対して耐えられるだけの体力を有している企業ではあると思います。少なくとも100億円が毎年失われたとしても、株主利益は損なわれますが、それによって経営が傾くことはありません。これがサンゲツだったら、おそらくサンゲツが市場から消える、少なくとも上場維持は困難な状況になっていただろうと思います。。。

大日本印刷が掲げる果たすべき責任に矛盾はないのか?

大日本印刷が掲げる3つの果たすべき責任

大日本印刷は、そのCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)報告書において大日本印刷が果たすべき3つの責任を大きく掲げています。

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DNPグループCSR報告書2016より)

ここには大日本印刷(DNPグループ)が果たすべき役割として

  1. 価値の創造
  2. 誠実な行動
  3. 高い透明性(説明責任)

の3つが大きく掲げられています。EBクロスという新しい価値を創造したという点で、第一の責任は果たされました。問題が生じた事に対して、「クレームを伝えてきたユーザーに対しては」しっかりとした再補修に応じるという誠実な行動を見せています。クレームを伝えてこないお客さんはおいてけぼりですが。。。。??

そして、大日本印刷は「高い透明性(説明責任)」を果たすべき責任であるとして掲げています。今回のEBクロスの不具合についての説明は、残念ながら「高い透明性(説明責任)」は果たせていない、と私は考えます。説明責任とは、相手に対して自社の良い部分も悪い部分も含めてしっかりと説明をして理解をしてもらう努力のことです。「相手が文句を言ってきたら対応をします」という対応はそれがどれほど誠実な対応であったとしても、説明責任を果たしているとは到底言えないように思います

なぜ大日本印刷、サンゲツはEBクロスの不具合を公表しないのか?(再)

繰り返しになりますが、EBクロスの不具合を公にしない背景には、自社の顧客(ここではサンゲツやハウスメーカー、中小工務店等々)の現場を混乱させたくない、という考えがあるのだろうと推察します。一条工務店のようにどの品番の壁紙をどの顧客が使っているかを把握していれば、対象住戸に対して直接コンタクトし、補修を促すことができます。

しかし、中小工務店や分譲住宅の場合、どの型番の壁紙をどこの家に使用したか記録していないケースも多数あると思います。さらには、サンゲツのような代理店を通じてしまえば、サンゲツが工務店に販売した壁紙を誰が使っているかは全く分からなくなっているだろうと思います。

このような状況下でEBクロスの不具合を公表してしまえば、大日本印刷の顧客であるサンゲツ、そしてそのサンゲツの顧客である工務店の現場を混乱させる可能性が高いのは事実と思います。そして、その混乱に伴って発生した費用を負うのは大日本印刷になると思われます。ここまでは理解できます。しかし、このとき、一般消費者であるその家に住む人々は無視されていないでしょうか?一般消費者への説明責任は本当に果たされているのでしょうか?

大日本印刷の方がこのブログを読んでくれることがあったならば、是非考えていただきたいのは、「大日本印刷が果たすべき役割としての説明責任」には、ステークホルダーである最終消費者への説明責任は含まれているということを思い出していただきたいということです。そして、それは惹いては顧客と同時に重要なステークホルダーである、株主への説明責任にも通じてくるものと思っています。大株主には知り得て、個人株主や一般投資家には今後どの程度の特別損失が計上されるのかが見えない現状は、決して説明責任が果たされている状態ではないと考えます。

今回の10年間の保証期間延長、不具合品全ての無償再施工、施工期間中の仮住まい費用の補償、という保証内容は企業の経営判断として十分に評価される判断と思います。しかし、それが一般に公表されていない現状には一消費者として疑問を感じます。

EBクロスの不具合はリコールしないまでも情報公開はすべきでは?

ネット上で徐々に広がっていく不具合の情報と大日本印刷の対応

今回の大日本印刷製サンゲツ、及び一条工務店標準のEBクロスについては一般的なリコールを行うことが必要であるかは議論を要するところと思います。一方で、今回のEBクロスの不具合については、製造元である大日本印刷も販売元であるサンゲツも公表を行っていません。

これまでの情報では、マンションや建売住宅等では売り主が顧客に対して不具合の存在を伝えて、張りかえを促すケースがあるようですが、その他については家に住む人が「何かがおかしい」と感じて問合せを行って、はじめて「不具合でした」と伝えられるケースが大半です

他のハウスメーカーについては不明ですが、私が認知している範囲では中小工務店では自社顧客への伝達をしているメーカーもありますが、1万軒規模の大規模に張りかえを要するケースでは一条工務店がはじめて顧客に対して、不具合の存在を自主的に連絡しているような状態と思っています。

そのような中で、ネット上で広がっていくEBクロスの不具合や、クレームを伝えてはじめて「不具合でした」と言われた方達の気持ちは不安と不満が澱を成しているように思います。

広がる不安や不満

ネット上で見つけた今回の不具合対応と思われるケースをいくつか列挙します。

・ 2015年5月16日 Yahoo知恵袋

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「サンゲツの壁紙EBシリーズについてです。うちは、新築して4年目なのですが、1年過ぎた辺りから、特に日光の当たる窓際の壁紙の劣化が気になっていました。最近では、少し触れただけでも白い粉がポロポロと落ち、悲惨な状態です。EBシリーズは、強いはずなのに、こんなことってあり?壁紙ってこんなものですか?
この壁紙にしてすごく後悔していますが、経年劣化以外の要因はあるのでしょうか?一度、工務店かメーカーに見てもらったほうがいいでしょうか?壁紙に詳しい方から、良いご意見が頂けたら幸いです。」

・ 2015年6月16日 工務店.com

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「新築して3年。指でこすっただけでボロボロとはがれてくるクロスに悩まされ、(サンゲツの不良品だったようです)ハウスメーカーに全面張り替えていただくことになりました。木造2階建て・4LDKとロフト、全部屋の天井と洗面室と和室を除く全ての壁が張り替えの対象です。生活をしていて家具や家電、子ども用品もそれなりにあります。一般的にはどのくらいの期間かかるでしょうか。工事期間中は在宅できますか?また、カーテンレールや大きな食器棚など、動かしてもらえますか?(追加費用の場合は相場も知りたいです。)まったく初めてのことで、工事の具体的な打ち合わせまでにざっくりと知っておければと思いご相談させていただきました。
ご存知の方いましたらよろしくお願いいたします。」

・ 2016年1月29日 Yahoo知恵袋

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「2階建て新築住宅で、3年位住んでいますが、壁紙の表面が少し触るとボロボロと剥がれてきました。壁紙メーカーは、サンゲツでEBクロスと言う商品です。
住宅会社に相談した所、メーカーと現場担当者の方が調査して、全部の壁紙を貼替える事になりましたが、生活している状態で、1部屋ごとの順番に貼替え工事となり、工事期間が3週間から4週間かかるようで、精神的に過大なストレスや不便さが生じます。メーカーのクレームですが、慰謝料や損害賠償等の請求は可能でしょうか?可能ならば、請求金額の相談を知りたいです。みなさんの意見をお願い致します。」

・ サンゲツ販売、大日本印刷が作ったクロス(壁紙)が問題ある。クレームでもいいんじゃん。2016年5月22日

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こちらのサイトのコメント欄をご一読いただくと被害に遭われた方の報告が多数掲載されています。

残念ながら真贋混ざっているためリンクは差し控えますが、ネット掲示板等においても多数の報告が上がっています。

我慢する人が損をする状態はおかしい!!

今回の記事で一番言いたいこと、そして、大日本印刷やサンゲツに是非分かって欲しいことは、「我慢する人が損をする」状態は間違っていると言う事です

一条工務店のように自ら不良品であるEBクロスを使った住宅にコンタクトを取り、張りかえをアナウンスする企業もありますが、現時点では、大日本印刷も、これを販売したサンゲツもWebサイト等では不具合の存在を一切公表していません。

大日本印刷は有価証券報告書において「株主」に対しては、部分的にではありますが不具合の説明を行っていますが、最終顧客である消費者に対しては不具合の存在自体を明らかにしていません

隠している、というと言い方は悪いですが、しかし、私達顧客から見たときには「不具合隠し」と捉えられても仕方の無いような状態にあるように思います。

そして、今回、声を出してハウスメーカーや分譲会社、サンゲツ等に「この壁紙おかしくない?」と伝えた方は、不具合品の交換を受けることができます。

一方で、

  • 子どもが壁紙をいじるからクロスがはげちゃったんだな
  • 安いクロスを選んだから仕方なかったな
  • 建て売りの壁紙なんてこんなものか
  • いつも歩く場所だから壁紙がはげても仕方ないな

というように、お客さん自身が「EBクロスなんてこんなものだな、宣伝文句に騙されちゃったな」と思って、納得をされてしまったら補修を受ける機会さえ与えられない状態となっていることに強い違和感を感じます。

今回、不具合の報告をして下さった方のお宅の写真をご覧下さい。

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こちらのお宅では、住み始めて1年目で症状が出始めて「何かがおかしい」とは感じていたそうですが、今回ブログをご覧になるまで「壁紙のハズレを引いてしまった」と思われていて、壁紙自体の不具合とは考えていなかったとのことでした

また別のお宅の写真ですが。下の写真のお宅は被害の程度はまだ少ない状態ですが、不具合のある壁紙として壁紙の脆化が見て取れます。

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こちらのお宅にお住まいの方も「壁紙はこんなものなのかと不良品とは疑いもしてませんでした」とのことでした。

多くの方にとって、壁紙は身近ではあるものの、どの程度の耐久性や耐用年数があって、丈夫さがどの程度が「正常であるのか」を判断することができません。そのため、不具合品をつかまされた多くの(本当の意味での)お客さんは「この程度のものか」とあきらめてしまう方が大半です

結果として、我慢をしてしまい、不具合が発覚しない状態となってしまいます。このことは大日本印刷にとっては補修費用を削減できて好都合なのかも知れません。しかし、それは結果的に顧客の大きな不満に繋がっていくように思うのです。

そして、そのような方の中には、サンゲツなどに連絡するのではなく、むしろ、サンゲツの壁紙がぼろぼろになってしまったからこそ、別のメーカーの壁紙でリフォーム会社に張りかえをしてもらおう、と思ってリフォーム会社に連絡をされている方もいらっしゃいます

EBクロスで大規模な不具合が出ていることを知っていて、良心的なリフォーム会社は「この壁紙は不具合が出ているものだから問合せをすれば補修してもらえますよ」とお客さんに伝えています。しかし、リフォーム会社でもこの不良のことを知らない会社などでは、お客さんの要望に従って新しい壁紙に張り替え工事をしてしまっているケースも多数存在するように思います。

最終顧客である消費者に「自分の選択が間違えていた」と思わせてしまう大日本印刷やサンゲツの情報公開姿勢はやはり間違えているように思えてなりません

大日本印刷、サンゲツの方には是非下記のサイトをお読みいただければと思っています。

popologさんは一条工務店で家を建てられた方ですが、一条工務店標準の不具合があるサンゲツのEBクロスを多く利用されている方になります。

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今年7月のブログで「住んでから気づくクロス選びにおける5つの後悔」と題した記事をアップされています。

そして、壁クロスがぼろぼろになっていくのを「ご自身がケチったから」と表現されています。そして、「もっと慎重に検討すべきだった」と述べています。

そして、ご自身で補修も試みています。

実際には、ご自身がケチったからでも、慎重さに欠けていたからでもなく、純粋に「不良品」だったことが原因です。

今回、popologさんには既に一条工務店から不具合の連絡があったと聞いています。しかし、企業側からの連絡がなければ、「自分の選択が間違えていた」と考えられるお客さんはたくさんいらっしゃるはずです。

自社の製品を選んでくれたお客さんに「後悔」をさせている状況は本当に正しい企業姿勢なのか、今一度考えていただければと思っています。

一条工務店に責任はないのか?

最後になりますが、一条工務店の責任にも言及をします。

今回、不具合のある壁紙を製造してしまったのは大日本印刷であることは間違いの無い事実と思います。そして、そのEBクロスに不具合があることは、製造時点では大日本印刷も、サンゲツも、そして一条工務店やその他の工務店等の施工者のいずれも知り得なかったことだろうと思っています。

そのような意味で、このサンゲツのEBクロスを一条工務店の標準壁紙としてしまったことは失敗ではあるけれど、予測はできないものであり、適切な対応さえとれば一条工務店の対応自体は問題のないものと思っています。

現時点では、一条工務店は自らクレームを伝えてきていない顧客に対しても自主的に不具合の存在を伝えています。この点は高く評価されるものと思います。

しかし、これは過渡的なものであると思っていますが、現時点では全ての再施工は大日本印刷が行うこととなっているようです。個人的にはこのことには強い違和感を感じています。

一条工務店の内部でも多くの議論があって、自主的な告知に繋がったと思っています。そのことを踏まえてもなお、おそらくどこかに「自分たちも被害者である」という意識があるのではないかと思っています

これは一条工務店に限らず、不具合のあるEBクロスを使用してしまったあらゆるハウスメーカー・工務店に共通したことですが、個人的には、不具合品を使ってしまった一条工務店は確かに被害者としての側面もあると思います。ただし、それは対サンゲツ、対大日本印刷に対しての立場であって、対顧客については「一条工務店は加害者である」と言うことは間違わないで欲しいと思っています

一条工務店は自社が被害に遭った立場として、顧客の利益を損なわないよう、積極的に被害者の対サンゲツ、対大日本印刷に対して自社を被害者の立場と位置づけて、危害を加えてしまった顧客を守るよう強い交渉力を発揮して欲しいと願っています。

私達は一条工務店の家を買ったのであり、大日本印刷が製造し、サンゲツブランドのEBクロスを一条工務店が標準品として使っていた、などという「裏事情」は知ったことではありません。

今後、一条工務店が自社の顧客に通知を出す中で、「自分たちも被害者」という立場だけでは取らないで欲しいと思っています。自分たちは被害者だから元凶である大日本印刷が再施工をすれば自分たちは知らない、そんなことだけはあってはならないように思います。現場の最終確認の責任は、不具合を生じさせた「標準クロス」を施工販売した一条工務店の責任と思っています

一条工務店はおそらく1万軒規模の被害住宅が出ているはずです。それ故に、大日本印刷やサンゲツ対してより良い条件を引き出す潜在的な強い交渉力を持っています。最終消費者が大日本印刷と交渉をしても、場当たり的な補償しか受けることができませんが、1万軒単位で交渉をすれば違った条件を導き出させるはずと思うのです。

私達が家を買った一条工務店が責任を持って対応をしてくれることを願っています。近いうちに、再施工際の仮住まいのホテル代がいくらまでなのか、食事は?ペットはどうするのか?といった具体的な大日本印刷の補償範囲を書いていきたいと思います。

~情報更新のお知らせ~

大日本印刷EBクロス不具合について最新の情報を

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にまとめさせていただきました。最新の情報は上記記事をご覧いただけますようお願いします。