【追記】夢発電は大丈夫?電圧上昇(出力)抑制が収益に与える影響は?夢発電が悪夢にならないために・・・

こんばんは。さすけです。

太陽光発電の状況が刻々と変化している状況で、一条工務店で夢発電を考えている方にとっても、不安が大きくなっていると思います。

そのような中で「電圧上昇抑制(出力抑制)」が大きな不安要因になることが懸念されます。そこで、本日はこの電圧上昇抑制がどの程度の日数発生するのか?そして、それが夢発電のような太陽光発電の収益悪化にどの程度影響を与えるのかを分析してみました。

また、この電圧上昇抑制の発生頻度は、お住まいの地域や契約する電力会社、そしてソーラーパネルの搭載量によって大きな影響を受けると考えられますので、誰でも簡単に計算することができるExcelシートを作成してみました。よろしければダウンロードをしてシミュレーションをしてみていただければと思います^^

電圧上昇抑制(出力抑制)とは?

電圧上昇抑制または、出力抑制とは、周辺地域の電力需要が少ないにも係わらず、ソーラーパネルがその需要を超えて発電をしてしまうような状況において、ソーラーパネルによる発電を停止させ、売電をストップさせる機能のことを示します

電力会社の系統電力は、瞬間瞬間で発電量と需要量を常に一致させる電力需給の同時同量性を確保しています。電力需要が少ないのに、その需要を超えて太陽光発電が行われてしまうと、電力システム自体が破綻し、大規模な停電等につながってしまいます。そのため、現在通常販売されているソーラーパネルに付随するパワーコンディショナーには電圧上昇抑制機能を組み込むことが義務づけられており、必ずこの機能が組み込まれています。

電圧上昇抑制が発生すると、発電がストップしてしまいますので、売電を行うことができなくなり、当初予定していた収益を上げることができなくなってしまいます。

一条工務店の夢発電で契約をしているような場合には、一条工務店のシミュレーション通りに売電が行えなくなると、夢発電によるローン返済が困難となってしまうことも考えられます。

そのため、ソーラーパネルの設置ではこの電圧上昇抑制のリスクを把握しておくことが重要になります。

電圧上昇抑制が30日を超えた場合は電力会社が補償してくれる(一般住宅は補償してくれませんでした【2014/11/4追記】)

現在の固定価格買取制度で電力会社と売電契約を結んでいる家では「30日を超えて電圧上昇抑制が発生した場合には電力会社が発電によって得られたであろう売電額を補償する」というルールになっています

【2014/11/04追記】

以下で30日ルールの適用が一般住宅でも受けられるように記述していました。これは私の理解不足で「500kW以上」でなければ30日ルールの適用は受けられませんでした。よって、現時点においても30日以上の出力抑制があっても補償は受けられません!

よってすでに契約済みの方であっても、30日ルールは存在しておらず、出力抑制が発生すれば収益が大きく悪化します。

根拠法である「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法施行規則」の6条3号イに「500kW未満は除く」と明記されているのを読み落としていました。

ただし、500kW以上のソーラーパネルで補償義務が存在していることは事実であり、これが存在する限り、一般向け住宅ソーラーの導入促進を阻害するのも事実と思いますので、以下では本文を修正せずそのまま掲載します。

【追記ここまで】

これはあくまで私の個人的予想ですが、「30日以上の出力抑制が発生した場合は電力会社が補償する」という仕組みは早晩変更され、電力会社の補償義務がなくなると予想しています。

なぜならば、10月1日に北海道電力、東北電力、四国電力、九州電力による新規売電契約の回答保留措置は、このルールの存在が引き金になっていると考えるからです。電力会社は「最小需要を超えた発電がされると大規模停電につながる」という説明を繰り返していますが、実際はこの電圧上昇抑制機能が存在するために、需要を超えて発電が行われることは考えにくい事態です。よって、仮に最小需要を超えた発電が行われそうになっても、電圧上昇抑制機能が動作し系統電源に影響を及ぼすとは考えにくいです。にも係わらず、回答保留措置をとった要因は「30日ルール」にあると考えるのが妥当と思われます。

電力の最小需要を超えてソーラーパネルが発電をしてしまった場合、ソーラーパネル設置世帯の大多数で「電圧上昇抑制」が発生し、売電がストップします。今後、こちらにあるような規模でソーラーパネルの設置が進めば、30日を超えた電圧上昇抑制が頻発する可能性が高くなります。そうなったとき「30日ルール」が存在していれば、電力会社は多額の補償を行う必要が出てしまい、ただでさえ原発停止で苦しい財務状況をさらに悪化させることは容易に想像がつきます。

電力会社も民間企業である以上、収益を悪化させる要因を放置することはできず、今回の回答保留に踏み切ったと考えるのが妥当と思います。

しかし、昨今の国際的な温室効果ガス排出抑制に対する圧力、そして、原発再稼働が困難な状況下においてエネルギーセキュリティー(電源の多様性確保)の観点から、再生可能エネルギーの普及促進を停滞させることはできないという政治的な状況もあります。

電圧上昇抑制による30日ルールはおそらく撤廃または拡大される

このような現状を踏まえると、考えられるのは「30日ルール」の撤廃によって、更なる再生可能エネルギーを電力会社に受け入れさせ、その代わりに、再生可能エネルギー設備設置者に電圧上昇抑制のリスクを負わせることが、合理的と考えられます。そのため、今後、直近では回答を保留している電力会社については12月に予定されている接続契約の「回答」において提示される条件の一つとして「30日ルールの変更」が行われると予想します。

このことは前回の記事時点では私の勝手な予想として書いてきただけでしたが、実際に2014年10月31日に開催された「総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 新エネルギー小委員会 系統ワーキンググループ」(名前が長い。。)において示された修正案の中に「30日ルールの撤廃」が盛りこまれていました\(^o^)/(←予想が当たって嬉しいだけで、困ったことな訳ですが^^;)

実際の資料で見てみると、これまであった30日の前提が修正案では「-」となっており、なくなっていることが分かります。

また、より具体的な検討においても

再生可能エネルギーの導入拡大に向けて「再エネ出力抑制日数の拡大」が選択肢として示されています。

出力抑制の方式としては現行の「30日+n日」のように、電力会社が補償の責任を負わなくて良い日数を拡大する案も検討されていることが分かります。

以上の状況を勘案して、今後この30日ルールは撤廃または日数の拡大が行われると考えるべきと思います。

よって、今後ソーラーパネルを設置する方は電圧上昇抑制がどの程度の頻度で発生するのかが収益の大きなリスクになると考えることが求められます。

しかし、出力抑制が365日続くことはまず考える必要がなく、何らかの予想を行い、そのリスクがどの程度の大きさであるのか?そして、このリスクの大きさに応じて、夢発電のようなローンによってソーラーパネルを設置する方はどのように対応をすべきなのかを考えることが必要になります。

 

電圧上昇抑制を考慮に入れた発電シミュレーションの補正

一条工務店では以下のような形でソーラーパネルの発電シミュレーションを行ってくれます。

 

このシミュレーション値はNEDOのシミュレーションを使用したものと思われ、固定資産税や所得税など収益面に関するシミュレーションは十分とは言えませんが、発電量のシミュレーションとしては妥当なものとなっています。

しかし、上記のシミュレーションはあくまで「発電した電力が全て売電できる」という前提に立っているわけですから、電圧上昇抑制が頻発し、売電が行えなくなった場合はシミュレーション通りの収益を上げることはできなくなります。

そこで、電圧出力抑制の発生頻度を予想して、どこまで収益が悪化する可能性があるのかをシミュレーションしてみることにしました\(^o^)/

 

電圧上昇抑制を考慮に入れると収益は大きく悪化する

電圧上昇抑制簡易計算Excelシート

電圧上昇抑制を考慮に入れた売電収益を簡単に計算するためのExcelシートを作りましたので、興味がある方はこちらからダウンロードしてお使い下さい。

 

計算シートの見方

最初に注意点として、ここで想定するのは「想定される範囲で最悪の事態」に近い状態を想定しており、30日ルールが撤廃されたからと言って、ただちにここまでの収益悪化が発生するとは考えなくて良い点です。

このシミュレーションの目的は、「最悪の事態」に備えて、そのような事態に陥ったとしてもローンの返済を滞りなく行う事ができるかどうかの判断をするための材料として作成している点には十分注意して下さい。

また、実際の電圧上昇抑制は非常に狭い範囲で発生するのが一般的で、地域的に大きな偏りがある点にも注意が必要です。自分自身が住む地域で電圧上昇抑制が発生しやすいかどうかは、こちらのコラムなどが参考になるかと思います。一般的に、周辺にソーラーパネルを設置した家が多く、電力を消費してくれる工場がない値域などでは電圧上昇抑制が発生しやすいと言えます。

こちらのシミュレーション結果は、私が他の方からいただいた一条工務店のシミュレーションを元に電圧上昇抑制の影響をシミュレーションした結果となります。

19kWのソーラーパネルを設置し、10年4ヶ月で返済することを想定しています。

 

計算の結果、全ての電力が売電できた場合、20年間で約500万円の収益が上げられると予想されていたのが、電圧上昇抑制が発生した場合20年間の収益は約200万円まで減少してしまうと予想されることがわかります。収益の悪化率は62%となっており、当初予想された収益に比較して40%程度の利益しか手に入らなくなる可能性があることを意味しています。

見方によっては、そこまで収益が悪化するのか!と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、このシミュレーションは先に述べたとおり、かなり「最悪」に近い状態でも収益が赤字になることはなさそうだ、とういう結論と読むこともできます。このあたりは、ソーラーパネルの設置者の判断によると思います。

計算シートの入力方法

計算シートの入力は薄いピンク色の欄のみを埋めていただければ自動的に計算が行われます。

各月の発電量

は一条工務店からもらったシミュレーション結果の

の部分のグラフの下に書かれている数値を記入して下さい。続いて

の部分で、パネルの搭載量、返済期間、そして柱状変圧器等の設置等の金額が分かっている方はこの数値を変更して、契約を予定する電力会社を選択して下さい。中国・北陸電力については電力データが不足していたため、関西電力で設定して貰えればと思います。

柱状変圧器の価格が不明の場合はとりあえず50万円としておけばまず問題ありません。

この他緑色に塗られた部分については、必要に応じて変更していただければと思いますが直近ではこの金額のままで大丈夫と思います。

 

電圧上昇抑制シミュレーションの方法(読み飛ばして大丈夫です)

このシミュレーションは月ごとの電圧上昇抑制日数によって、売電額を減額して行っています。

 

電圧上昇抑制日数は電力会社毎に計算しており、その計算方法は各電力会社が公表している毎時の電力需要量に基づいて、太陽光発電量が最大となると予想される正午の電力需要を取得可能な全期間で取得しました。

取得したデータを365日の1日単位で電力需要量の平均値を取得し、1年間の電力需要を偏差値に換算し治しました。偏差値にすることによって、その電力会社で電力需要が少なくなる「日」を特定することができます。計算過程は配布Excelシートの「電力会社抑制Sim」というシートに入っていますので、興味がある方はご覧下さい。電力会社毎の365日の電力需要量を偏差値換算したものをグラフに示すと

 

となります。

北海道電力を除き、概ね電力会社によらず同様の傾向を示していることが分かります。短期間で周期が見られるのは土日の電力需要が少ないために生じているものです。

次に、これはある種の私が「えいや!」で決めた数値ですが、1年間の電力需要の偏差値が「40未満」の日では電圧上昇抑制が発生すると仮定しました。ただし、1月や2月といった冬場は太陽光による発電量も少ないため電圧上昇抑制が発生する可能性は低いと考え、「4月1日~10月31日」の期間で電力需要量が「偏差値40以下」になった日に電圧上昇抑制が発生すると想定しました。

以上から、各電力会社管内で各月における電圧上昇抑制の発生日数を予想しました。

 

概ね年間40日から50日程度の電圧上昇抑制が発生すると予想されます。多くの電力会社で電圧上昇抑制が起こりやすいのは4月、5月、そして10月であることが分かります。

仮に5月に電圧上昇抑制がなければ1000kWh発電できたのに、電圧上昇抑制が10日間発生してしまった場合は

1000kWh/(30日/20日)=667kWh

として計算し、667kWhしか発電できなくなってしまうと仮定して計算することができるようになります。しかし、実際に電圧上昇抑制が起こるのは「晴れの日」が想定されており、1ヶ月の中でも他の日に比べて発電量が多いと予想されます。そこで。ここでは安全係数として、発電上昇抑制が発生する日は他の日に比べて1.5倍の発電量があると仮定して

1000kWh/(30日/20日*1.5)=444kWh

となるように補正して計算しました。1.5の係数の根拠はありません。。。感です。。。いずれ自分の家の太陽光発電実績から係数を見直すかも知れません。。

あとはローン等の計算を行い、売電額からコストを差し引いてシミュレーションを行っています。

もう少しマニアックな設定をしたい方は「System」シートに記載されているパラメータを適宜変更して下さい。偏差値40以下ではなく、偏差値50以下だった場合などのシミュレーションも行えます。

 

【必読】電圧上昇抑制にどのように備えるべきか?

計算は非常にざっくりとしたものですが、シミュレーションで電圧上昇抑制が発生した場合太陽光発電によってどの程度収益が悪化するのかは理解できると思います。

概ね予想される収益が半分になってしまうことは想定の範囲内と言えると思います。一方で、基本的には20年間の収益がマイナスになる事態はまずないということも分かるかと思います。

しかし、これはあくまで20年間のトータルの収益である点には十分に注意が必要です。

月単位、または年単位では収益が大きなマイナス、すなわち夢発電のローン返済額に対して売電額が大きく下回ることは十分にあり得ることだと理解することが重要です。

現状で、一条工務店の夢発電では10年程度の返済期間と20年の返済期間(らくらく返済?)という2つのプランが用意されています。

今後、電圧上昇抑制の30日ルールが撤廃されることになった場合には、4月と5月の2ヶ月間売電がほとんど行えないという事態は十分にあり得る事態と予測できます。

30kWといった大容量のパネルを搭載しているケースでは10年返済だと月々の返済額は10万円近くになり、2ヶ月間売電が停止するということは、結果的に20万円を持ち出さなければならなくなります。これが10年間続いた場合、200万円を持ち出しにして、その後、利益を回収するということになり、トータルでは黒字が確保できても、返済中の10年間は大きな自己負担を余儀なくされることを意味します。

家のローンもある中で100万円を超える持ち出しは相応にキツイ事態と思います。このようにならないためには、返済期間を20年間として、月々の負担額を軽減しておくことが良いと考えます。

当然支払い金利は上昇するため、収益は10%弱悪化すると思います。しかし、収益を上げることを目的として設置したソーラーパネルのローン返済が家計を圧迫するというのは本末転倒と思います。

今後の報道等で電圧上昇抑制による電力会社の補償がなくなるという報道があった場合には、返済期間延長を考慮に入れた対応を強くお勧めします。

20年間の返済ではなく、短期返済プランを選択しても問題がないのは、「夢発電のローンを余剰資金で一括返済可能な人」だけと思います。

テレビなどで「電圧上昇抑制、出力抑制が云々で、30日の補償が撤廃される」等と言われても、いまいち自分のこととしてピンと来ない方も多いと思います。ですので、そのような報道が行われたら、夢発電の返済プランを見直す、ということだけ頭の片隅においておいていただければと思います^^

夢発電が夢と散ったあげくに、悪夢とならないためにも、返済期間を含めた全体的な検討を強くお勧めします\(^o^)/

最後に、今回のシミュレーション等はあくまで私の個人的な予想ですので、外れる可能性も大いにあります。また、電圧上昇抑制は地域差も大きいため、あくまで参考程度に留めていただければと思います。地域差についてはこちらの方が掲載されている地図が非常に参考になると思います。Excelシートについても、30分程度でやっつけで作ったものですので、間違い等にお気づきの場合はお知らせいただけると幸いです^^

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