太陽光発電が地球温暖化を加速させる!?

こんばんは。さすけです\(^o^)/

先日ブログのコメントで、「ソーラーパネルは熱を地球に貯めてしまい、温暖化に対して悪影響を与えるのではないか?」という意見をいただきました。

こう言う疑問って非常に面白いです!!

誰かが言っているからソーラーパネルに環境に良い!」と盲目的に信じるのではなく、疑問を持つというのは非常に大切な事と思います\(^o^)/

こういった疑問にたいして、きちんと答える機会もありませんし、せっかくいただいたコメントですから大まじめに考えてみたいと思います!

ということで、本日は「太陽光発電は地球温暖化を加速するか?」という内容でブログを書いてみたいと思います。興味が無い人には全く興味が無いマニアックな内容です。。。^^;;

余談ですが、私はこう言う疑問について色々計算したり、考えたりするのが大好きです。子供の頃一番最初に思った疑問は日本にある赤色の車の数は何台だろう?ということでした。小学生の頃家族旅行の時に疑問に持ち、旅行期間中見た車を全て数えて、そのうち何台が赤色の車であるかをメモしたのを記憶しています。完全に頭がおかしいですね^^;;自分の子供がやり出したら病院に連れて行くレベルです^^;;;その後も国内の電柱の本数、宇宙に存在する原子の数、宇宙全体のエネルギーの量、歩いてアンドロメダ銀河まで言ったら何年かかるか?新幹線だったら?といった本当に心の底からどうでもいいことを考えて計算するのが大好きでした^^;;

ということで、本日の内容は、家のこととは一切関係ありません^^;完全な趣味の時間です。

以下、私の説明能力の限界があり、できる限り簡易な説明を心がけますが、大学教養課程程度の物理の知識を使います。忘れたよ!!とか、そもそも物理も数学も大嫌いとか言う野次は無しですよ!!物理と数学は大切です\(^o^)/

常日頃娘が「数学なんてなくなればいいのに!!」と言うたびに、「我が家はそれでご飯を食べているのだからそういうことを言ちゃだめ!!」と言っています^^

ソーラーパネルで地球が温暖化!?

ソーラーパネルは光を吸収して温暖化を促進させる

いただいた意見の趣旨を私なりに理解するならば、

通常地球上に降り注ぐ太陽のエネルギーは、一定割合で反射され、宇宙空間に放出されるはずであり、そのことで地球の温度が安定的に保たれている。そして、ソーラーパネルのような真っ黒な表面を持つソーラーパネルを地球上に並べることは、「本来宇宙に放出されるはずのエネルギー」を地球内部に留めることになり、さらには電力に変換されたエネルギーも最終的には「熱」として地球上で放出されル事になるのだから、結果的に地球温暖化を加速させてしまうではないか!!

ということと思います。

要するに、ソーラーパネルは本来は熱に変わらずに宇宙に返されていたエネルギーを地球内部に留める仕組みであり、温室効果ガスである二酸化炭素は出さないかも知れないけれど、温暖化を加速してしまう!

と言うことだと思います。

確かに言われてみれば一見合理的な意見のようにも思えます。

誰がこう言うこととを言っているのだろう??

ネット上で「ソーラーパネル 温暖化 加速」で調べると同様の内容が散見されます。多くがYhahoo知恵袋のような質問投稿サイトのもので、科学者が言っている分けではなさそうです。中には理科の時間に理科の先生が言ったなどと言うのもありましたが。。。。オイオイ^^;;
あまり一生懸命調べたわけではありませんが、疑問の発信源はよくわかりませんでした。。。

質問投稿サイトの回答は概ね

・ 面積が少ないから考える必要はない

・ 火力発電に比べればまし

・ 誤差の範囲

などといった意見が多いように思います。中には

・ そういうこともある

・ ソーラーパネルを販売したい政府が隠蔽している

などといった意見もありました。。。。

どうも、私を納得させてくれる回答は見当たりませんし、そもそも議論がかみ合ってないし、抽象的な回答が多いように思えました。

一番最初にも書きましたが、こういった意見に対して疑似科学として無視したり、影響がないとして一蹴することは簡単です。しかし、間違った意見に対しては誠心誠意科学的な立場で反論をしなくてはいけないように思います。そうでなくては、こういった意見は一見科学的に見えるため多くの方が信じてしまう危険性もあると思うからです。

ソーラーパネルの温暖化効果を計算によって確認してみる!

何からどう考えようか?

こういう疑問にどう答えていこうか考えましたが、大変ではありますが、物理学の基本的な知識を使って、地道に計算していくことがいちばんわかりやすいと思ったので、計算して見ることにします\(^o^)/

以下、私の説明能力の限界があり、できる限り簡易な説明を心がけますが、大学教養課程程度の物理の知識を使います。忘れたよ!!とか、そもそも物理も数学も大嫌いとか言う野次は無しですよ!!物理と数学は大切です!!

常日頃娘が「数学なんてなくなればいいのに!!」と言うたびに、「我が家はそれでご飯を食べているのだからそういうことを言ちゃだめ!!」と言っています^^

ということで、計算をはじめます。

最初に、地球に降り注ぐ太陽光のエネルギーと地球が反射によって宇宙に「返す」エネルギーの量について考えます。

地球に降り注ぐ太陽光エネルギーの量

地球の大気圏外で観測される太陽光のエネルギーは「太陽定数」として知られており、1370[J/㎡・s]で定義されます。もう少し身近なW[ワット]で表すと1370[W/㎡]となります。要するに1平米当たり1370Wの発電能力を有しているのです。逆に言うと逆立ちしても㎡当たり1370W以上発電するソーラーパネルは製造できないと言うことになります。ただ、これを乗り越えるために集光するという手はあります。

この太陽定数を使って、地表面に届く太陽光のエネルギーを考えると、球の表面積が4πr^2で断面積がπr^2であることを考えると、地表面で観測される太陽光のエネルギーは地球全体の平均として

=1/4×1370[W/㎡]=340[W/㎡]

となります。

地球上に降り注いだ太陽光のエネルギーが地球から出て行かなければ地球の温度はどんどん上がってしまいまい、生物が生息できる環境ではなくなってしまいます。しかし、実際には私達は生きており、地球に入ったエネルギーは何らかの形で宇宙に出て行っています。

反射の影響

地球に降り注ぐ太陽光のうち30.6%の光は地上で熱や電力変換される前に反射によって宇宙に出て行ってしまいます。宇宙から見た地球が真っ黒な球体ではなく、「青い星」に見えるのはこの反射があるからです。

しかし、69.4%の光は地球に降り注いで熱に変換されることになります。このままではやはり地球は熱くなりつづけてしまいます。というか灼熱地獄になります。。。

そうならない理由は地球が「放射」を行っているためです。これを理解するためには「ステファン・ボルツマンの法則」を知っておく必要があります。

ステファン・ボルツマンの法則

あらゆる物体はその温度に従ったエネルギーを放射しています。そして、物体の放射するエネルギーは、その表面温度の4乗に比例することが知られており、これがステファン・ボルツマン法則です。

ステファン・ボルツマンの法則は

E=σT^4

として表されます。Eは物体が放射するエネルギー、σはボルツマン定数と呼ばれる定数で

σ=5.67×10^-8[W/(㎡・K^-4)]

として表される定数です。温度のある物体は外に向けて常にエネルギーを放射し続けることを示しています。

自分たちの生活に無関係?と思われるかもしれませんが、一条工務店の展示場を訪ねたことがある方でしたら皆さんたぶんこの法則を使っています^^

展示場に放射温度計って置いてあって、床も天井も同じ温度です!測ってみてください!等と言われたことありませんか?そのとき手にした放射温度計はこのステファン・ボルツマンの法則が使われている道具なのです\(^o^)/

ということで、結構身近な法則なのです^^ゼンゼンミジカジャナイ!

で、地球に到達するエネルギーは342.5[W/㎡]で、このうち30.6%は反射されてしまうので

342.5[W/㎡]×69.4%=237.695[W/㎡]

となります。よって、ステファンボルツマンの法則により

237.66[W/㎡]=σT^4

となり、

T=(237.66÷σ)^(1/4)=254.454[K]=-18.546[℃]

となります。すなわち、大気のない地球の気温はマイナス18.5℃になります!

しかし、実際の地球の温度は全球平均で約16℃です。34℃も高いことになります。

この34℃は大気中の水蒸気や二酸化炭素による温暖化の効果です。

悪者扱いされている温暖化が無ければ、地球は生物が住める環境になっていないと言うことになります^^

例えば冬場の「放射冷却」などは良く聞くと思いますが、放射冷却は地球が放射するエネルギーが宇宙に出て行ってしまうことによって地表が冷えてしまう効果です。夜の気温は曇りの日の方が温かい事があると思いますが、曇りの日は雲が存在する事によって地表から放射されたエネルギーが雲で跳ね返されて地表に戻ってくるので、温かくなるのです^^

ソーラーパネルの温暖化効果

さて、ここまでうだうだと書いてきましたが、本題のソーラーパネルの影響を考えてみます。

ソーラーパネルを地球上に大量に設置するということは、地球の反射率を変えるということになります。先に述べたように通常の地球の反射率は30.6%でしたが、この反射率を下げてしまい地球内部に熱を蓄えてしまうのではないか?ということです。

ここで究極にソーラーパネルが普及した世界を考えてみたいと思います。

世界の人口60億人、4人家族世帯のみの世界を考えます。世界の世帯数は15億世帯です。すべての世帯は2F建て40坪の住宅に住んでいるとして、全世帯にソーラーパネルが設置されているという状況を考えましょう。

1世帯当たりのソーラーパネルの設置面積は66㎡になりますから、世界全体のソーラーパネルの総面積をsと置くと、

s=15億世帯×66㎡=99,000平方キロ

の設置面積になった世界を考えましょう。ちなみに北海道の面積が83000平方キロですから、北海道全体にソーラーパネルを引き詰めた程度の広さのイメージです!
このとき、地球の反射率が現在の平均値30.6%からどの程度変化するかを考えれば良いわけです。ソーラーパネルは何も反射をしない真っ黒な物体、黒体と仮定して反射率0とします。
このとき、地球全体の反射率は現在の30.6%からどの程度変化するでしょうか?
地球の半径rは6400kmで、その表面積は4πr^2によって表されますから地球の表面積をS[㎢]と置くと、
 S=5億1472万[㎢]
となります。
ソーラーパネルを敷き詰めたことによって
 地球の反射率μ={(S-s)×30.6%+s×0%}÷S
で表せますから
 地球の反射率μ=30.594%
となり、ソーラーパネルを世界中の全世帯に載せたことによって地球の反射率は0.0059%だけ下がった事になります。これによって、太陽光からのエネルギーが従来より0.0059%分だけ多く地球に吸収されることになったわけです。
先ほど、ステファンボルツマンの法則を使って計算していた地球の温度がどれだけ上昇するかを計算してみます。
太陽光から降り注ぐエネルギーのうち地球に吸収されるエネルギーは
 342.5[W/㎡]×69.40589%=237.715[W/㎡]
となります。よって、ステファンボルツマンの法則により
 237.715[W/㎡]=σT^4
となり、温度T’として
 T’=-18.5406℃
となります。
ソーラーパネルを考慮していない場合の温度
 T=-18.546℃
でした。対して、世界の全世帯にソーラーパネルを設置したケースの地球の温度T’は
 T’=-18.540℃
となりました。
よって、ソーラーパネルの設置による温暖化の影響は
 T’-T=0.0054℃
となります。
すなわち、確かに最初の議論の通り、ソーラーパネルのような黒い物体を地表に並べれば温暖化は起こります。しかし、世界中に15億世帯があって、全ての世帯が戸建住宅に暮らし、それら全ての世帯にソーラーパネルが設置されているという究極の世界を考えたとしても予想される温度上昇は「0.0054℃」に過ぎません。
現在問題となっている二酸化炭素等の温室効果ガスによる温暖化の効果は地球の平均気温を+2℃押し上げるほどの影響があるとされており、これに対して0.0054℃は370分の1の温度上昇に過ぎません。
いやいや、それでも温暖化はするではないかという方もいるかも知れません。しかし、先に1370W/㎡とした太陽定数というのは完全な定数ではなく、11年周期で0.1%程度の変動をしています。太陽常数を0.1%変化させると、地球の平均気温は0.06℃変化するのです。
すなわち、この程度の変動は人類に取っても、生態系に取っても許容範囲の気候変動と言えるのです。
対して、究極まで普及したソーラーパネルを設置した世界を考えても気温上昇は0.005℃程度であり、許容可能な温度変化の10分の1に過ぎません。よって、まず無視できる温度上昇と言えるのです。

温室効果ガス削減効果からの議論

いやいや、僅かであっても温暖化するのだからそれを無視なんてしたらダメだ!と思われる方もいらっしゃるかも知れません。ということで、温室効果ガス削減効果についても検討してみます。
ソーラーパネルの温室効果ガスの排出量は1kWhあたり、17g~48g、平均33gと計算されています。
ただし、寿命が30年と長いケースを考えていますので、寿命を甘く見積もりすぎだという批判もありそうですから寿命15年にして1kWhあたり66gと仮定します。
原発停止前の日本の電力1kWhあたりの温室効果ガス排出量は二酸化炭素換算で360g程度です。よって、同じ1kWhを発電するのに排出される温室効果ガス排出量は6分の1になる計算になります。
先ほどの世界の全世帯にソーラーパネルを設置した例を考えたとき、現在我が家に設置されているのと同程度の効率のパネルが用いられたと仮定します。そうすると、概ね先ほどの66平米で10kWのパネルが設置できます。
よって、
 15億世帯×10kW=150億kW
のパネルが設置されることになります。年間の発電電力量を大ざっぱに1000kWhとすると150兆kWhの電力量が得られる計算になります。
2008年時点で世界の総発電電力量は20.2兆kWhでした。
電力の安定性の議論などを一切無視しますが、現状の世界全体のエネルギー消費の10倍を太陽光発電によってまかなうことができます。世界のエネルギーのうち、電力として利用されるのがざっくり2分の1であるとして、この電力を全て自然エネルギーでまかなうことができたならば、世界全体の温室効果ガス排出量300億トンのうち、150億トンが電力消費に伴って発生していることになります。
ソーラーパネルを全世帯に普及させるということは、この150億トンの温室効果ガス排出が6分の1になって、25億トンの排出になることになります。
よって、世界の温室効果ガス総排出量は175億トンになり、温室効果ガスは42%削減された状態になります。IPCCの報告書によると、現在の温暖化を止めるためには世界全体で40%程度の温室効果ガス排出抑制が必要であるとしていますから、これをクリアできます。結果的に、0.0054℃の気温上昇と引き替えに+2℃の温度上昇を抑制できることになります。
この計算は色々と雑ではありますが、結果的には太陽光パネルを設置したことによって、極僅かな温暖化加速はおこるけれど、温室効果ガス排出削減による影響の方がずっと大きいことを示しており、結果的にどのようなパネルを設置したとしても温暖化が加速するようなことはないという結論になります。

まとめ:確かに温暖化効果はあるけど、温室効果ガス排出削減の効果の方が遥かに大きい

うだうだとややこしいことを書かせていただきましたが、上記から「ソーラーパネルの設置は温暖化を加速する」というのは厳密には正しいのですが、その影響は無視できる程度に小さく、また温室効果ガス排出抑制効果も考えれば温暖化を抑制する効果の方が大きく、温暖化が加速することはないと言えることがわかりました\(^o^)/ワカンネーヨトカナシデ^^;
ソーラーパネルが温暖化を加速させるというのは非常に面白い発想ですが、影響としては十分に無視して良いレベルでありそうとです^^
環境にも良いと思ってソーラーパネルを設置したら、逆に温暖化を加速しちゃったなんて言うのは嫌ですからね^^きちんと計算して、確認しておけば安心です\(^o^)/