【批判】一条工務店工場火災のその後と被害状況~無関心でいないために~

こんばんは。さすけです。

9月1日と言えば防災の日です。防災というと自分の家の地震や火災のことを書くべきかもしれませんが、今回は2月に起こった一条工務店フィリピン工場における火災について考えてみたいと思います。

今年に入ってから一条工務店で家を建てられた方は2月1日に発生した一条工務店フィリピン工場(HRD&HTI)の工場火災の影響を受けられた方も多いかと思います。

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ただ、一時は完全に停止していたウレタンの供給も2017年6月ごろからは徐々に開始されてきていると聞いています。まだ完全ではないかもしれませんが、国内の一条工務店の様子は火災以前の状態に戻ったように見えます。

火災直後はこれから契約される方の不安を煽らないよう配慮してきました。しかし、防災の日でもありますし、そういった配慮抜きで、一条工務店フィリピン工場の火災被害の規模、原因、そして、2012年に続いて2回も工場を全焼させるような火災を起こしてしまった背景についても考えてみたいと思います。そもそも一条工務店がフィリピンで火災を起こしたのは2回目だったって知っていましたか?私は知りませんでした。

今回の記事を読んでも、自分の家づくりに役立つことはないと思います。でも、、、もし、自分がこれから住む一条工務店の家が、危険で、賃金が適性に支払われていない状態でフィリピン人の労働者が働いてできたものだとしたら、私は嫌です

10年以上前の話ですが、洋服ブランドのGAPがインドで「GAP Kids」という子供服をインドの下請け縫製工場で生産していました。その縫製工場では親に売られ奴隷同然に扱われていた10歳前後の子ども達が子供服であるGAP Kidsの縫製をしていました。本来であればGAP Kidsを着る年代の子ども達が、自由時間も勉強時間も与えられず、暴力によって働かされていたというのです(AFP通信2007年「米GAP、インドの下請け業者で児童労働か」)。

自分たちの子どもに着せる服が同年代の子どもを奴隷として酷使されながら作られていたことを消費者は許しませんでした。その結果、国際的にも大きな批判を受けGAP社は直ちに調査を実施、縫製工場との契約解除と支払停止、そして、これまで縫製工場で働かされてきた子ども達には適正な労働の対価を支払い、さらに、義務教育を終えるまでの生活資金と就学資金の援助を発表しました。この動きは、途上国における衣料品縫製における児童労働撤廃に向けた動きの大きな一歩となりました。

話を戻して、私達家族がこれからの人生を過ごす「一条工務店の家」がどのような現場で作られているのか、やはり興味があります。

一応言っておくと、別に一条工務店のフィリピン工場で児童労働が行われていたわけではありません。ちょっとだけ賃金の不払いがあって、5年の間に東京ドーム1個分の工場を2回燃やしてしまって、その工場には適切な避難経路が設置されておらず、そこで亡くなられた従業員の方が5名おり、そして、事故調査の結果も、今後の対応も全く開示されていない、それだけのことです。児童労働に比べれば大したことはありません。。。たぶん、大したことないので事故報告も公表していないのだろうと思っています。なので、私がここで書く話は大した話ではありません。

少なくとも、火災発生から7ヶ月の間に一条工務店、日本産業、HRD、HTIのいずれからも火災のその後についての現地での対応については発表されていません。

一条工務店がフィリピン工場の火災についてその後の情報を一切示さない理由、事故調査報告書を出さない理由、今後の対応策を公開しない・できない、したくない理由は、全く無関係な私だってすぐさま100個ぐらい思いつきます。もしも、事故調査報告書を作成したら、そこには工場の規模、従業員の取扱、工場内の避難誘導経路を含めた生産設備の配置、そしてそこで施されていた緊急時の対策、マニュアル、そうしたものを全て開示しなければならなくなります。

これは、20年近くにわたってフィリピン工場の存在自体も含めて企業秘密として守ってきたものの崩壊を招きます。また、一条工務店の工場が立地するカビテ経済特区にある他の企業が今後事故を起こした場合には同様の開示を求められることになり、自社だけの問題ではないというのも理由としてあるかも知れません。

HRDの存在を隠すこと自体は企業の経営上の戦略ですから自由であって良いと思います。しかし、それは現地で先進国企業として適正な労働環境を提供している場合、という条件付きです。また、秘密にするのであれば、第三者の監視の目は入りにくくなるのですから、他社よりも遥かに高い倫理基準、安全基準を満たしている必要があります。

そして、そういった対応こそが秘密を守るための武器にもなると思います。しかし、死者を出す事故を起こした以上、政府から法律違反の指摘を受けた以上、秘密は守りきれなくなったと考えるべきと思います。

だって、おかしいでしょ??一条工務店は私達顧客には「法律を守っている程度では不十分だ、超断熱だ、超気密だ、超省エネだ、超健康だ」と説明します。それが、安全や労働の問題になった途端「法的な基準は満たしている」と言います(実際はだんまりです)。

なぜ自社製品を作る工場は「超」安全、「超」安心、ではないのでしょう?←超超言っていると昔の女子高生みたいですね。。。

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一条工務店Webサイト:超省エネ×超健康

綺麗ごとと言われるかも知れませんが、一顧客である私は、そういった対応が「嫌」だ、と思っています。私は多少高くなっても、少なくともその国において法律を遵守し、できることならばより高い水準で安全な、そしてきちんとした賃金の支払が行われている環境において従業員が建築した家で自分の子どもたちを育てたいと思っています

少なくとも不適切な労働環境で「安くて高性能な住宅」が作られているのだとしたら、そんな家は嫌なだというだけです。

現在契約中の方は、是非営業さんに2月の火災はその後解決したのか?原因は何だったのか?2012年に続いて2回も工場を全焼させたのはなぜか?と聞いてみて下さい。

たぶん営業さんは「知らない」と答えると思います。だって、私が知る限り一条工務店の社内でも一切情報が公表されていませんから知らなくて当然です。

誰も感心を持たなければ、2度ある事は3度あるで、また大きな火災を引き起こすのではないかと思います。そして、そこでは現地従業員の方が亡くなられることになります。

そうならないためには、顧客が関心を持たなければいけないと思っています。そして、それこそが、火災の防止、すなわち真の意味での「防災」になります。

こんなバカバカしいことは私しか思わないかもしれません。でも、もしかしたら、私と同じように感じられる方もいらっしゃる方もいるかもしれません。この記事が興味を持たれた方の参考になればと思っています。

目次

一条工務店工場火災のその後を書くにあたって

忘れられてしまう前に

一条工務店のWebサイトにには、フィリピン工場やHRD、HTIといったグループ会社のことは一切触れられていません。しかし、2月1日の火災については国内のテレビでも報道されたことから、さすがに?「弊社グループ工場における火災について」というプレスリーリスを出しました。

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このプレスリリースは現時点でも存在はしているものの、一条工務店のWebサイトの過去のニュースリリースリストなどからも削除されてしまっており、URLを知らなければアクセスできない状態となってしまっています。

通常であれば、企業はこうした事故を起こすとその後の報告や、今後の対応などが発表されるのが一般的ですが、半年以上が経過して何も出てこない以上、おそらくは今後も発表されることはないように思います。この辺は非上場企業の強みと言えば強みなのかも知れません?(←嫌みですよ。)

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このまま誰もが忘れて、何事もなかったようになる前にこの記事を書くことにしました。

また、一条工務店からはなんら情報が公表されていませんが、GoogleEarthの画像が更新され、フィリピン国内で政府による勧告が公表され、第三者による批判も出てきた今であれば、第三者の立場であっても一条工務店の火災についてきちんとした証拠を示しながら議論ができます。

個人的にはこれから家を建てる人には知っておいて欲しい

これは、私の希望であって、色々な考え方があると思います。

今回の記事は、フィリピン工場の火災がどの程度の規模であったのか、その後どうなっているのか?といったことを中心とした内容です。そのため、この記事の内容を知ってもご自身の家を建てるためには何ら役立つことはありません。また、人によっては、このような事故があった工場で作られた家は縁起が悪くて嫌だ、知りたくなかった、という方もいらっしゃるかと思います。

今回の事故では、5人の死者も出ています。

新築の住宅が死亡事故のあった工場で作られているということを縁起が悪いとして目を背けたくなるかもしれません。

今回、一条工務店のフィリピン工場では火災後の調査で、安全基準の違反、給与の未払いや休暇の提供にフィリピンにおける法律上の違反があったことがフィリピン政府当局によって指摘されています。

私達の家がどのような場所で作られていても、顧客には関係ないじゃないかと思う方もいらっしゃるかもしれません。それが事実であれば、私は誰も知りたくもないような情報を発信しているだけと言う事になります。しかし、私はそうではないと思っています。

一条工務店フィリピン工場火災の規模と範囲

一条工務店フィリピン工場の大きさ

フィリピン工場の火災当初は、一条工務店のフィリピン工場全体が燃えたかのようなイメージでしたが、実際には全体の20分の1程度だったようです。

比率で言えばフィリピン工場のうち5%が燃えてしまった、に過ぎません。

たった5%の火災であんなに大騒ぎになったの?と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、燃えた面積は東京ドームの1.5倍に相当する面積です。それだけ一条工務店のフィリピン工場が大きいと言うことです。

一条工務店のフィリピン工場の大きさについては下記にまとめています。

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一条工務店のフィリピン工場の面積については今回改めてGoogle Earthを使って計測しなおしてみたところ、1.07平方キロメートルでした。

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(Google Earthより)

どこからどこまでがフィリピン工場であるかが定かではないので、なんとも言えませんが、火災のニュース映像や資料等、そしてなによりソーラーパネルが乗っているという目印を踏まえると、概ね1平方キロメートル前後であることは間違い無いかと思います。

1平方キロと言われてもいまいちピンときません。。。

ディズニーランドの面積が0.465平方キロメートル、ユニバーサルスタジオジャパンが0.54平方キロメートルですから、ざっくりディズニーランドやユニバーサルスタジオの2倍の面積です。

ディズニーランドとディズニーシーを足すとちょうど1㎢程度、皇居が1.4㎢といった感じです。東京ドームの面積が0.047㎢ですから、東京ドームだと20個分に相当します。

航空写真だとわかりにくいので、地上から撮影した写真を見ると下のような工場となっています。

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(Google ストリートビューより)

かなり離れないと全体がわからないくらい、相当に大きな規模の工場です。

下は工場の脇を走る国道から撮影された写真ですが、工場に近づくと工場の全体が見えません。

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(Google ストリートビューより)

 

年間住宅建築棟数が1万2千棟、伸び盛りなこともあってかなり大規模な工場です。

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(出典:日経アーキテクチュア一条工務店が積水ハウスに迫る理由

航空写真から見るフィリピン工場火災規模:東京ドームの1.5倍

実は先ほどのフィリピン工場の航空写真は火災後の写真だったのですが、どこが火災に遭ったか気が付かれたでしょうか?

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(Google Earthより)

ちょうどフィリピン工場の航空写真の中央下部分に明らかに火災にあった写真が写っています。この写真は2017年2月4日(火災から3日後)に撮影されたものです。

火災によって燃えてしまった工場の面積は、0.0694㎢となりました。これは一条工務店フィリピン工場全体の面積と比較すると約5%となります。

サイズを比較すると、火災の範囲は東京ドーム1.5倍の面積、といえます。

東京ドームの1.5倍におよぶ面積が火災で焼失した、と言えば火災の規模としてはかなり大きかったことがわかります。

火災ということで言えば、テレビや新聞で多く報道されていたので記憶にあるかたも多いと思いますが、昨年あった新潟県糸魚川市の大火災で焼失した面積が4万㎢でしたから、糸魚川の大火災の1.75倍です。

また、一条工務店フィリピン工場の火災のすぐ後に国内で発生した工場火災である、アスクルの基幹物流センターの火災が4万5千㎢でしたから、それよりも1.5倍以上の面積を焼失したことになります(参考:アスクル、倉庫大規模火災から学ぶべき教訓)。

フィリピン工場火災の前後比較

火災にあった一条工務店フィリピン工場は、全体に占める割合が小さいため上記の写真では少し見にくいので拡大します。

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上は、火災に遭う前の工場の様子です。それに対して下は火災後の様子です。

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火災の様子がはっきりとわかるかと思います。サイズ感がわかりにくいので火災があった工場に縦横の長さを書き加えました。幅が320m、奥行きが310mあります。

今回火災にあった工場の奥には、さらに大きな工場があったことを考えると、そちらに延焼しなかったことは運が良かったことと言えそうです。

写真を見る限りでは、写真左手の薄緑色の工場の屋根がかなり煤けていることや、火災の跡が写真左手に行くほど顕著に黒くなっていることなどから、2月1日の火災当日は、おそらくは写真左方向に向かって風が吹いていたと思われます。

そして、写真左方向には火災にあった工場と薄緑色の屋根の工場の間に幅30m以上ある道路が走っているためにこれが緩衝地帯として延焼を防いだのだろうと思います。もしも、火災当日の風向きが写真上の方向だったら、、、火災の規模はどこまで広がっていたかわかりません。。。

一条工務店フィリピン工場全体の面積からすれば、全体の20分の1の工場が焼けただけと言えますが、火災単独で見れば東京ドーム1個分の面積が消失しており、かなり大規模な火災であったことがわかります。

ニュース映像で見るフィリピン工場火災の様子

国内ではほとんど報道されませんでしたが、その火災の様子はフィリピン国内では大きく報道されていました。

 

(出典:Manila bulletin:Fatality not a factory fire victim, HTI worker: Cavite Crisis Management Committee

(出典:The Summit Express)

上記は出火直後の映像ですが、かなりの規模の火災であったことが分かります。

また、消火作業終了後の映像も報道されています。

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(出典:IN PHOTOS: After the fire, EPZA’s HTI building:Rappler

上の写真では工場の前に止められたコンテナ(長さ約12m)が焼け焦げているのも写っています。建物から離れたコンテナ後部も燃えていることから相当な火の強さであったことが伺えます。

下記は消火終了前の映像です。

事故直後の報道に感じた違和感~統制された報道~

下記は火災後に報道陣に公開された事故現場の映像です。

これはニュースの取材映像ですが、これを見たとき若干の違和感を感じました。それはメディアがバスから降りて撮影をしていないという点です。

火災直後であることから報道陣の安全を考えて、ということもあるのかもしれませんが、日本の感覚で言うならばこれだけの規模の事故現場であれば報道陣が周辺に入り、それぞれの視点で報道を行うのが一般的のように思います。しかし、ちょうど日本の原発事故の報道のように報道陣がバスと思われる車にのって、そこから撮影をしているのです。当然この火災現場には報道陣を守らなければならない高線量の放射性物質が飛散しているわけではありません。

この点については、後で紹介するレポートによれば、一条工務店フィリピン工場が立地する経済特区では、報道や取材等が強く規制されていたためとのことです

一条工務店フィリピン工場火災は2度目だった

一条工務店は2012年にも同じ地域で大規模火災を起こしていた

これは、今回一条工務店の工場火災を調べている中ではじめて知りましたが、今回一条工務店が火災を起こしたフィリピン工場では2012年10月19日にも、今回よりやや規模は小さいものの、工場一つ丸ごと燃やしてしまう火災事故を起こしていました

参考:Japanese firm in Cavite loses P15M to fire(News info 2012/10/21)

このニュースによれば、2月に火災が起こったのと同様フィリピンカビテにあるHTI(一条工務店のフィリピン工場)で2012年10月19日午後3半に火災が発生し、その後木材乾燥工場1つを燃やして10時間ほどで鎮火したと書かれています。

幸いこの火災では死傷者はなかったとのことでした。

これだけだと火災の規模などがわからないため、Google Earthで過去の画像と比較していくと火災があった痕跡がはっきりとありました。

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左側の2010年2月時点の写真には赤丸の中に工場の屋根が見て取れます。しかし、火災があったとされる約2ヶ月後の2012年12月の写真からはその工場がなくなり、真っ黒になっています。

工場があった場所には火災による影響と思われる真っ黒い煤が見て取れます。この場所で火災があったと考えて間違いないかと思います。

2012年10月の火災と2017年2月に火災があった工場の両方の位置関係は下の写真の通りです。両社は同じ敷地内にある一条工務店のフィリピン工場(HTI)です。

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写真だとサイズ感がわかりにくいので2012年10月に火災があった工場のサイズを下に示します。

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縦260m、幅150m、面積にして39000㎡です。東京ドームよりもやや狭い程度の面積の工場が焼ける大火事だったことがわかります。ここは木材の乾燥工場だったようです。

我が家引き渡し1週間前の火事

今回、この記事を書くことにした最大の理由はこのニュースを知ったことにあります。

私が一条工務店から家の引き渡しを受けたのが2012年10月27日です。我が家の引き渡しのたった1週間前に私の家を作ったフィリピン工場は燃えてしまっていたのです

火災自体は故意に起こすものではないので、仕方ないものと思います。

しかし、それはできうる限りの安全対策をしていれば、の話です。1度目は偶然、または、不幸な出来事かもしれません。しかし、同じことを2回繰り返すのは、故意とまでは言わないまでも不作為と言われても仕方ないように思います。

何よりも、1回目の火事では死傷者が出ていません。2回目の2月の火事では5名の若者が亡くなり120人以上の方が怪我をしました。

2012年の火災時に全社を挙げて二度と火災を起こさないために本当にしっかりと取り組みをしていたのならば、2度目の火災は防げたのではないか?そして、5人の方は亡くならずに済んだのではないか?と思えてしまいます

私自身、別に報道機関でもないので、ニュースに気が付かなかったことは仕方ないと思っています。しかし、私は当時からブログを書いていました。いまよりもずっとアクセス数は少なかったとは言え、もしも当時、まさに私が一条工務店の家の引き渡しを受けて直後、このニュースに接していたら、何かできたことがあったのではないかと思えてしまうのです。

当時の私は

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こんな風に、自分の家の引き渡しを無事に受けられたことを喜んでいました。この記事の中では、フィリピン工場で作ってくれた方に向けて

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こんなタガログ語で、感謝を伝えていました。当時は、こんなことをするのは偽善だと匿名の方達から馬鹿にするメッセージをいただきました。でも、しばらくしてとあるフィリピン人の方からメールをいただくことができ、メッセージが回り回って伝わっていたことを知ることができました。(私のタガログ語は「言いたいことは十分伝わるよ」とのことでした^^;)

でも、まさにその時、一条工務店フィリピン工場は火事で大変な時だったと言う事になります。

今でも、現地の方々への感謝の気持ちは変わりません。ただ、手放しで喜んでいた自分が馬鹿に見えます。

もしも、当時すぐではなくてもフィリピン工場の火災のことを知っていたら、火災の事実や私の家が作られた工場がなくなったことをブログに書いて、一条工務店を「顧客も見ている」という牽制ができたかもしれません。

そして、それができたならば、もしかしたら、2月の火事は起こらなかったかもしれません。別に私の責任でもないし、奢りかも知れません。

私がこうして書いても誰も興味をもたなければ「さすけの世迷い言」で終わるかも知れません。

でも、もしかしたら、こうして書くことで一条工務店でこれから契約される方が「どんなに高性能でも、低価格でもそんな危険な工場管理の下でフィリピン人の若者を使って作られた家は欲しくない、嫌だ」と言ってくれたならば、一条工務店は絶対に3度目の火災を起こせなくなります。既に亡くなられた5名の方をどうすることもできません。しかし、何もしないでもう一度火災が起きたら、そこでまた亡くなられる若い方が出たら、その時は今よりももっと後悔することになります。

3度目がないように、そのためには「日本の顧客も見ている」ということを知ってもらえればと思っています。

5年もしない間に2度も大規模な工場火災を発生させるというのは、かなり異常なことと思います。

このまま誰も感心を寄せなければ、2度あること3度ある、ということになるように思います。これを「3度目の正直」とするためには、私達顧客が「フィリピンの人々の命を損ないながら作るような家に住みたくない」と思い、そして営業さんに一言「フィリピン工場の火災は大丈夫?法律違反は改善された?」と聞くだけでものごとは変わっていきます。

火災による損失とその後の違反指摘まで

火災による死傷者

一条工務店フィリピン工場の火災による最終的な死者数は5人となっています。公表されている方はいずれも30代のフィリピン人工場労働者の方々でした。いずれの方も搬送先の病院で亡くなられています。亡くなられた方の中には搬送先の病院側の都合で適切な治療が受けられなかった方もおり、病院を批判する報道も行われています。また、怪我をされた方は121名であったとされています。

亡くなられた方も含めて、フィリピン政府による補償が行われる旨が報告されています。一条工務店によって補償が成されたかたについては不明ですが、Facebook等を見ている限りでは、一定の補償が行われたようです。

損害額320億円?

フィリピン政府の発表によると今回の一条工務店フィリピン工場の火災の経済的損害額は120億~150億ペソ(約250億~320億円)と推定されています。

金額的にはかなりの額ですが、一条工務店が浜松市に300億円を寄付していることなどを踏まえると、一条工務店の財務状態を踏まえると直ちに経営が傾くような額ではないのかな?と思います。

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また、これは個人的な感覚ですが、かなり過大評価かな?とも思っています。

規模はややや小さいものの2月に国内で発生したアスクルの工場火災(4万㎡)の損失額が、最大で121億円と報道されています

工場の再建には工場建屋を立て替える必要があるため、その原材料費+人件費が主な損害額となるはずです。アスクルの工場は日本で起こった事故ですから、日本人の労働者によって再建が行われます。一方で、一条工務店フィリピン工場はフィリピンですからフィリピン人の労働者が主となります。

日本とフィリピンの物価の違いを考えれば、原材料費の金額もフィリピンの方が割安ですし、工場再建費用のかなりの額を占める労働者の人件費が大きく異なっています。そう考えると、火災面積が2倍近いとは言え、250~320億円という損害額は過大評価ではないかと思っています。

情報が公開されていない以上、知る術もないですが。。。

一条工務店フィリピン工場火災の真実は??

情報公開の重要性~隠せば疑いたくなる~

最後にフィリピンの労働組合権・人権センター(CTUHR)が公表した一条工務店フィリピン工場の火災についての詳細なレポートをご紹介します。

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この報告書では、火災による死傷者者数は公表された数値よりもかなり大きいと言った疑念、一条工務店による従業員への隠蔽が行われていることなどが指摘されています

このレポートを引用することで私が言いたいのは、私が住む家はこのレポートに記述されているような新興国であるフィリピンの労働者を搾取した結果できあがった家ではない、ことを証明して欲しいということです

現時点では、一条工務店からも、フィリピン政府からも正式な形での事故報告は公表されていません。

同時期に発生したアスクル工場火災と一条工務店工場火災におけるその後の対応の違い

同時期に国内で発生したアスクルの火災では、火災から2ヶ月後には第三者や国、自治体を含めた検討会を立ち上げ、火災発生から4ヶ月後の4月12日には消防庁から最終報告書が公表されています

事故報告書では、事故の経緯、そして、自社の問題点も含めて報告されており、また、今後の倉庫火災への対策についても詳細に述べられています

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(出典:リスク対策.com:アスクル)

また、アスクルは事故後21回にわたってニュースリリースを公表しています。それに対して、一条工務店は2月3日に事故の発生を伝えた1回のニュースリリースしか公表していません。

この違いは何でしょうか?私は、顧客を甘く見ている、もっと言えば馬鹿にしているものと思います。情報はしっかりと隠しておけば顧客はそのうち事故の事など忘れるとでも思っているのでしょう。。。

私はこうした企業にとってネガティブな情報こそ適切な情報開示が必要だと思っています。

ここで引用するフィリピンの労働組合権・人権センター(CTUHR)の報告書については、その内容の信憑性については不明です。ただし、日本の公益財団法人 国際労働財団の資料や労働組合である全日本金属産業労働組合協議会の資料にもその名前が出てくることから、一定の規模の活動基盤を有していること、報告の全体的内容はやや左派に偏っていると感じるものの、整合的であると考えたため引用することとしました。内容の信憑性は組織の特性上誇張されている可能性はあるものの、通常は一条工務店の顧客であれば知っているけれど、フィリピン人の工場労働者以外が知り得ない情報、例えばウレタンやEPS断熱材の厚さ(140mm)やサイズ等についても正しい情報が書かれており、工場従業員にヒアリングが行われていなければ書くことができないレポートとなっています。そのため、単なるでっち上げのようなものではなく、一条工務店フィリピン工場の従業員に対してヒアリングは行われていると判断しました。

レポートはヒアリングに基づいて適切に書かれたものであるとしても、一つ一つは従業員1人の話となるため、従業員の事実誤認等によって誤った情報となっている可能性は否定できません。この資料は公的機関の公表資料ではないことはご承知おき下さい。また、ここで引用する内容は私の主観に基づき取捨選択した情報となっています。少なくとも私には事実確認が行えないこと、また、内容として直感的な疑念を持つ部分、またショッキングに過ぎる部分については現時点では引用を控えています。関心のある方は原文をご覧下さい。

従業員への隠蔽工作の存在

今回、この報告書を作成したフィリピンの労働組合権・人権センターのワーキンググループは、一条工務店フィリピン工場で働く複数の従業員にヒアリングを行ったとしています。しかし、その多くが口をつぐみ、また、ヒアリングに応じてくれた従業員も匿名を条件としての回答を強く希望したとされています。

このことから、従業員に対して何らかの圧力があったことが伺える旨が冒頭に記述されています

これだけ聞くと、良くある陰謀論のように聞こえるものと思います。私自身も自分自身が直感的に怪しいと思う部分もないことはありません。

しかし、これを紹介することにしたのは、フィリピンの方達が大好きなFacebookやInstagramでの情報発信にやや不自然な部分を私自身が感じたことに基づきます

一条工務店フィリピン工場の火災発生直後の数日間、工場で働く多くの従業員が火災の状況や現場の写真、そして、同僚への心配等、多くの情報をFacebook等を通じて発信していました。私自身、事故当初の情報の多くは現地メディアの英語ニュースとFacebook等に書かれた情報から得ていました。

しかし、事故から1週間から2週間経ったころから、過去に書かれたFacebookの火災に関する記述が次から次に消えていったということは私自身が実際に見てきた事実です

火災後時間が経つに従って、火災のことについての記述が少なくなること自体は自然なことです。しかし、複数の人たちが同時期に過去の投稿を消すことには強い違和感を感じました。

このレポートでは、何か目に見えないもの凄い権力が存在して強い圧力によって情報が隠蔽されているかのように書かれいますが、おそらくはそこまでのことはないと思っています、というか思いたいです。

日本人の感覚で言えば、自分の勤務先で大きな事故があったからと言ってそれをFacebookやブログ等で大々的に書くということは、おそらく大きな問題となります。日本でも匿名であれば告発を行うケースもありますが、Facebookのように実名で行っているSNS上で行われることは極めて希です。

そのことを踏まえれば、日系企業である一条工務店のフィリピン工場で日本人の管理者が「事故に関する個人的な感想等をネット上に流すのは止めるように。アップしていたらすぐに消すように、そして、外部の人に工場のことを話さないように。」という指示をしたであろうことは容易に想像できます。

しかし、おおらかな、それでいて生真面目な面を持つ国民性&政府機関に対する信用度の低いフィリピンの方が見ると「何か隠蔽されている」と感じられて、それをレポート内で「Unusual silence in the community(不自然な沈黙に包まれる従業員たち【意訳】)」と受け取ることはあるかな?とも感じています。

そう考えると、この報告書の調査がやや誇張気味ではあるものの、そこまでおかしなことを言っているとは感じない根拠ともなりました。

火災の原因は?

現時点では、英語で公表されている政府資料では詳細な火災の原因に言及した資料を見つけることができませんでした。フィリピンの政府機関が公表している資料によれば、機械の故障(mechanical accident)が火災の原因としていますが詳細については触れられていません。

一方で、フィリピンの労働組合権・人権センター(CTUHR)の資料では火災発生を目撃した従業員のヒアリングに基づいて、一条工務店フィリピン工場の火災発生過程についての詳細な報告を記述しています

CTUHRの調査によれば、2月1日午後6時頃に、工場2階生産エリア(3階は品質管理エリア)の吸気装置の近くで、のこぎりクズに引火、そののこぎりクズが吸気装置によって火が付いたまま給気されて、火災が一気に広まり、シンナー、ウレタン、塗料や溶剤、アルコール、アセトンに引火し爆発が起こり、大規模な火災に繋がったとされています。

また、天井にはいわゆるシーリングファンのようなファンが付いており、それが火災を拡大させつつ、5分程度で工場全体に火の手が広がったとまとめています。

火災から数分後には消防車が発進し、目撃者によると火災から15分から20分後には消火活動が開始されたものの、最初に出火した中央エリア(さすけ注:おそらく写真の最も黒く焼け焦げている部分)が崩落したと報告しています。

以上が、CTUHRが報告書に記載した従業員のヒアリングに基づいてまとめられた出火原因とその後の火災拡大要因となります。おそらくは、最初ののこぎりクズに火が付いてしまった部分がフィリピン政府発表の「機械故障」によるものなのだろうと思います。

出火原因とその後の火災拡大要因については、私個人としては十分に合理的なものであり、また、火災後の下の写真とも整合的である事から、大きくは間違えていないと思っています。

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報告書では、スプリンクラーの不足や消化器の不備、避難経路の問題等が指摘されています。これらの事実関係は確認できていませんが、火災を防げなかった以上、そういった部分にも不備があったと思われます。

火災後に見つかった一条工務店フィリピン工場での違反行為

フィリピン労働雇用省からの安全基準違反の指摘

一条工務店フィリピン工場の火災後、日本の厚生労働省に近いフィリピン労働雇用省(DOLE:Department of Labor and Employment)が、火災の調査を実施しました。

調査結果の詳細な内容は公表されていませんが、指摘と処分の内容は示されています。

調査の結果、複数の安全基準違反、労働法違反が見つかったことが報告されています。こちらは先のCTUHRのレポートとは異なり、政府による資料です。

出典:2017年6月5日発表 Cavite fire: HTI violated safety standards(HTIの安全基準違反,フィリピン政府機関[PIA]資料)

安全管理者の不足

火災当日、工場内には7062人の労働者に対して、安全管理を担当する監督責任者は12人しかいなかったと指摘されています。フィリピンの労働安全基準では同人数の従業員に対しては15人の安全管理者が必要であったことから、安全基準の不備が指摘され、是正勧告が出ています。

休憩場所の不備と保護具の不足

フィリピン労働雇用省の指摘によれば、工場の労働者に対して十分な休憩設備の提供、また、危険な作業に伴う保護具の提供が十分に行われていなかったことが指摘されています。

賃金等未払い

一条工務店のフィリピン工場とその請負業者が、本来工場で働く労働者に支払われるべき賃金を不当に控除して支払っていなかったことが指摘されています。

その金額(本来与えられるべきであった休暇も含めて)は、合計で、2646万ペソ(約5624万円)であったと指摘されています。

賃金未払いについては、先のフィリピンの労働組合権・人権センター(CTUHR)の報告に詳細な記述がありました。フィリピン工場では従業員に対して、1日あたり8時間労働の最低賃金356ペソ(約750円)が支払われていたとされています。しかし、実際には工場は24時間稼働しており、勤務形態は朝7時から夜7時までと、夜7時から翌朝7時までの12時間勤務の2交代制で運用されていたとされています。

これに対して、一条工務店フィリピン工場では、残業代として1時間あたり50ペソが支払われていたとされていたようです。また、無理矢理残業をさせるわけではなく希望は聞いていたとされています。

しかし、フィリピンの労働基準法に基づけば、日本と同様残業代は通常賃金の25%増しで支払う必要があるため、本来は1時間あたり55.625ペソ以上でなければならず、結果として、1人1時間あたり5.625ペソ(約12円)の賃金が未払いになっていたと指摘されています。その他、従業員に制服代を支払わせていたことなどの法に違反した賃金支払によって政府からの指摘を受けるに至ったようです。金額については政府発表ではなくCTUHRのヒアリングに基づくものであるため、全ての方が最低賃金しか支払われていなかったのかは不明です。ただ、政府が公表した未払い金額とは整合的であり、おそらくは大きく間違えてはいないと判断しました。

最低賃金を下回る残業代の支払いについては、すぐに支払うようフィリピン政府当局から命じられています。

これについては、日本人の感覚からすると、極めて安い賃金と受け取れなくもないですが、少なくともフィリピンにおける最低賃金が支払われていること、残業は少なくとも自由意志によって決定できたこと、フィリピンの失業率は日本の2倍程度であることを考えると、「搾取」とする程不当な扱いをしていたわけではありません。

ただ、やはり個人的に悩ましいのは、自分の家を作る工場が新興国において最低賃金での労働の結果であると言われると、少し気が引けてしまう気持ちがあるのは事実です。。。。ただ、これは私自身の欺瞞であるとも思っています。例えばコンビニの多くは自治体が定める最低賃金が時給となっていますが、コンビニで物を買うのに良心の呵責を受けることはありません。

何よりも、じゃあ高くしろ、というのは簡単ですが、それでは結果的に一条工務店がフィリピンで工場を営むメリットを損なうことになり、より安い海外に工場が移るだけのことになると思います。そして、それはフィリピンの労働者の雇用の場を奪うことにしかなりません。

また、以前Facebookに上がっていた写真では、一条工務店フィリピン工場であるHRDやHTIの人材募集(正しくは人材派遣会社)の面接とされる窓口に写真ではかなりの若い人々が列を作っていたものも見ました。このことから、現地の若い人に列に並びたくなる程度の魅力的な職場を提供しているのもまた事実と思います。ですから、賃金の安さを批判するのは違っていると思っています。ただ、間違い無いのは法律は守るべきです。

そして、自分にできることは、少なくとも私達の家はそうした工場で作られているということは知っておく必要があるように思います。

些細な指摘じゃないか

今回のフィリピン政府からの指摘を見ると、一見些細な指摘にも見えます。おそらく日本企業でも起こりえる程度のミスばかりです。

残業代が最低賃金基準を下回っていたり、サービス残業をさせてしまっていたり、避難経路が適切に管理されていなかったり、社員に火災のことは黙っておけと言ったり、そうしたことはフィリピンでなくても起こることです。

大きな事故を起こした後は警察や消防、労働基準監督署のような立場であれば、何らかの是正を勧告しなければ格好が付かないため指摘をされたとも受け取られるかもしれません。

でも、人が死んでいます。しかも、東京ドーム1個分の工場火災を短期間に2回も起こすのはやはり異常です。

そんな些細なことを、と思う社員の方がいたら、その考え方こそを見直すべきと思います。

私はこの記事を削除したいと思っています

自分たちの家がどのようにして作られているのか?

一条工務店フィリピン工場の火災について、公開されている範囲の情報で調べました。

報道内容やその他の情報の多くが英語または現地のタガログ語である事から、正確な情報を調べるのはなかなか難しいものとなっています。

しかし、これは私達の家が作られている工場で起こったことであることは間違いがなく、私達は亡くなった人も含めてそこで働く人々によって作られた家に住んでいます。

今回、事故の原因は故意によるものではなく、結果としては不幸な結果として引き起こされたものだろうと思っています。しかし、それが拡大した原因は誰にあるのだろうか?と考えると、やはり一条工務店の管理体制に不備がなかったとは思っていません。それが2度目の大規模工場火災であればなおさらです。

日本に住む私達が、直接一条工務店のフィリピン工場の管理体制に口を出すことはできません。


しかし、非上場企業である一条工務店にとって、顧客が何かを言わなければ何も変わらないのもやはり事実のように思います。

値段の安さの追求、そして、高性能な住宅が搾取によって成り立っているものであってはならないと思います。

ここで、あえて「搾取」としましたが、搾取ではないとするならば、搾取をしていないことを証明する義務は一条工務店にあるのだろうと思います。

遠いからこそ意識的に知らなければならない

フィリピンは私達にとって、遠くの国です。

残酷な話ですが、私達は遠くの国での不幸な事故に対してはどうしても関心が薄くなってしまいます。

私達の住む家が、どのような労働環境で作られていようが知ったこっちゃない、というのも一つの考え方と思います。しかし、私にはその考え方は受け入れられるものではありません。

こういうことを書くと、他のハウスメーカー等の心ない営業さんが「だからフィリピンで作った家なんて」と言うかも知れません。

しかし、日本に住む私達は衣食住の多くを途上国や新興国からの輸入に頼らざるを得ません。それを国産は良くて輸入品はダメ、とするのは馬鹿げたことです。そう説明するならば、全て国産のもので家が作れるか?と聞きたいぐらいです。少なくとも、今、国産材料のみで家を建築できるハウスメーカーなど存在しません。国産の釘(鉄も国産?)そんな馬鹿なことがあるわけありません。

ですから、フィリピンで製造することは個人的には決して間違えたことではないと思っています。むしろ、新興国の経済発展に寄与する素晴らしい側面もたくさん持った取り組みです。ただし、それは「先進国として誇れる労働環境」を提供できてはじめて言えることです。それが、搾取であっては絶対にならないと思うのです。

ですから、海外、特に新興国や途上国で生産をしているものであればこそ、顧客側がそれがどのような環境で作られているのかに関心を持つことが必要と思っています

大げさに感じられるかも知れませんが、顧客の関心以上に企業を変える原動力になるものはありません

この記事が消えるとき

今回、記事を書くにあたっては、長期的に関心を持たれた方に届くよう様々な工夫をしています。

こればかりはGoogleの気分しだいなので、いつ、とは言えませんが、早晩「一条工務店 フィリピン工場」や「一条工務店 火災」で検索すれば上位に表示されるようになると思っています。うまくすれば?「一条工務店」と検索しただけでも検索結果の1ページ目に表示されるようになるかもしれません。

そうなったとしても私の批判が間違ったものであるならば、誰にも関心を持たれることがなく、無視されることになるでしょう。それであれば、私の考えが間違っていたと言う事で大きな問題はありません。

しかし、新興国で何度も火災を起こして死者を出すような企業の家は買いたくない、という方が増えてしまう可能性もあります。

そうなってから、この記事を消しても手遅れと思います。私としては、しっかりとやっているのにこのような記事があるが為に一条工務店の家が売れなくなってしまうと言うのは本意ではありません。

そのため、今後一条工務店がきちんと対応をする日が来たら、その時はこの記事を消そうと思っています。

ここで「きちんとやってます」と言われて「はいそうですか」と言うほど私はお人好しではありません。そもそもそんなことすれば、私が買収されたとか好きなこと言われますし。。。

私なりの削除の要件はシンプルです。日本語と英語で「フィリピン工場での火災事故報告書と今後の対応のための方針」が公開されたならばこの記事を取り下げたいと思っています

事故報告書の公開にあたっては下記の条件を満たしていることを想定しています。

  1. 独立した調査権限を有する事故調査委員会を立ち上げていること
  2. 事故調査委員会の体制は日本学術会議が公表する「事故調査体制の在り方に関する提言」に準拠していること
  3. 5人以上の外部有識者によって構成さえた組織となっていること
  4. 一条工務店は従業員及び関係会社、取引先、Cavite経済特区関係者に協力を強く要請していること
  5. 政府関係者、一条工務店関係者は委員ではなくオブザーバとなっていること
  6. 調査委員会が従業員に自由にヒアリングを行う権限を与え、かつ、その発言によって従業員が不利益を被らない体制で調査が行われていること
  7. 調査委員会の報告書の公開は事前に一条工務店が確認し要望を受けることは認められるが、拒否権は与えない体制となっていること
  8. 全ての費用は事前に予算を決め一条工務店が調査委員会に与え、事後精算となっていること
  9. 調査結果に対しては一条工務店が真摯に受けとめて、今後の対策が開始されていること
  10. 事故報告書及び一条工務店の今後の対策はWebサイト上で公開されていること

以上が満たされた事故報告書が公開されたならば、私はすぐにこの記事を削除したいと思っています。事故調査としてはかなり甘々な要件と思います。もちろんより高い条件で満たしていても削除していても削除したいです。

上記を満たすにはそれなりの時間を要するため、半年以内の範囲で期限を区切って事故報告書の公開が見込めると判断したならば、情報は一時的に取り下げたいと思っています。

おそらく新しい記事を書くとは思いますが、その記事では公開された事故報告書を受けたものとなり、きちんとした対策も明示されているはずですので私の新しい記事は批判的なものにはならないと思っています。

おわりに:間違わないで欲しいこと

一条工務店で働かれている方は何千人もいらっしゃいます。さらには一条工務店がグループ会社と呼んでいるHRD,Scad,WukongそしてHTIのフィリピンで働く従業員の方も含めれば2万人以上の方がいらっしゃいます。

私はその方々のうち、極々わずかな方しか知りません。そのため、全員が良い人だ、とまでは言えません。しかし、会ったこともありませんが、新しく一条工務店の社長になられた岩田さんは、ご夫婦でサイクリングを楽しまれる普通の方と思います。我が家の監督も、営業さんも、そして設計さんも、仕事としてのお付き合いでしかないかも知れませんが、皆さん良い人です。

今回のような問題は「悪人」がいて、その誰かがフィリピンで工場火災があって死者が出ても知ったことか、不都合なことは隠蔽しろ、そんなことより金儲けだ、と指示しているわけではないのだろうと思います。

もしかすると、お客さんの側を向きすぎてしまって、より良いものを、より低価格で、として一所懸命に頑張っているうちに見えない部分が出てきてしまった結果なのではないかと思っています。また、フィリピン工場についても、これまでずっとひた隠しにすることで成長を遂げていた事実から、少しでも外部に何かを知られることが怖くなっているのかも知れません。

知られなくて済むのならば、知られないようにすることは当然のことと思います。しかし、これだけ何度も火災を起こし、そして死者まで出してしまった以上は、全てを隠し続けることはもうできなくなっていると思うのです。

誰か悪人がいてくれて、その悪人をみんなで倒すというのであれば簡単です。しかし、そうではない以上、一人一人が仕事上の役割を超えて考え方、ものの見方を変えていかなければならないのではないかと思います。

今回のような件は、日本国内では大きな問題になりにくい問題です。しかし、一条工務店はアメリカオーストラリアでも住宅事業を開始しています。NGOが強い両国で今回のような問題が公になることはそれこそ死活問題と思います(来月シアトルに出張があるのですが、休みの日にIssaquahを見てこようか悩み中です)。

この記事は本当に余計なお世話と思われるかも知れませんが、本当に海外に展開していくつもりがあるのならば、今回のことをきっかけに社内の体制を大きく見直すことが必要なのではないかな?と余計なことを考えてしまいます。

少しでも一条工務店の防災対策に役立てていただければ幸いです。