XPSって何?ウレタン、EPSと比べたメリット・デメリット

こんばんは。さすけです\(^o^)/

一条工務店のi-smartやi-cubeで使われている断熱材はEPSまたはウレタンが使用されています。壁や屋根下断熱材は地域や住宅のタイプによってEPSを断熱材として使っていることもあれば、ウレタンを断熱材として使用していることもあります。しかし、床下については、i-smartやi-cubeの発売当初から継続してウレタンが断熱材として採用されてきました

ところが、2017年2月に発生したフィリピン工場での火災の影響から、ウレタン供給がストップしたため、当面の間はこれまで採用されてきた床下断熱材としてのウレタンフォームの供給もストップしてしまったため、ウレタン断熱材の代替としてXPS断熱材が採用されることになりました。

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今回は、そもそもなぜ床下だけウレタンフォームが採用されていたのか?XPSとは何か?そもそも、なぜEPSではなく、わざわざXPSが採用されたのか?といったことについて考えてみたいと思います\(^o^)/

一条工務店の家では床下だけはウレタンフォームが使われていた

以前から床下断熱だけはウレタンフォームが使用されていた

北海道仕様やi-smart2が販売される以前、EPS断熱材のみしか選択できなかった当時からi-smartやi-cubeでは、床下だけはウレタンフォームが使われてきていました。少なくとも、i-smartについては、2011年の販売開始段階から床下はウレタンフォームが採用されています。

実際に我が家の仕様書を確認すると

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1階床:高性能硬質ウレタンフォーム89mm厚と記載されています。

上棟の際には下の写真のように外壁周りはEPSが断熱材として使われていることは一目で分かるのですが、床下はほとんど見ることができないため、直接見るには床下に潜って見る必要があります。

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実際に床下に潜ってみると断熱材が施工されていることが分かりますが、見た目ではEPSとウレタンフォームの区別はほとんど付きません。ただ、下記の写真の断熱材はウレタンフォームとなっています。

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実際に現物を見れば、EPSはいわゆる発泡スチロールのようにぼつぼつとしていますが、ウレタンフォームについてはもっときめが細かい見た目となっているのですぐに違いはわかると思います。

このように一条工務店ではi-smartの発売開始時点から床下断熱材としてはウレタンフォームを継続的に使ってきました。

なぜ床下だけEPSではなくウレタンフォームが採用されてきたのか?

ツーバイ材の89mm制約

なぜ、床下だけがウレタンフォームなのか?ということは少し考えるとすぐに分かってきます。

一言で言えば、床下は「厚み」を取ることができないというのが最大の理由です。我が家の仕様書に床下断熱材の厚さとして89mmという記載がありました。この89mmというのはツーバイ材の厚みの規格となります。ツーバイフォーとは、38mm×89mmの角材を指しています。

一条工務店のi-smartやi-cubeはツーバイ工法で建築されているため、床下には89mmの角材が使用されています。仮に89㎜以上にすると、断熱材が出っ張った状態になってしまうため、断熱材の厚みは89mmに限定されてしまうのです。

そこで問題となるのは、断熱性能です。床下については、夏冬の温度変化は少ないため、断熱性能は多少低くても問題は生じませんが、仮にEPSを89mmで施工すると、断熱性能を示す熱貫流率は0.382W/㎡・Kとなります。これは外壁周りの190㎜のEPSの熱貫流率0.179W/㎡・Kに比べて2倍以上大きな熱貫流率となります。熱貫流率は小さいほど断熱性能が高いことを示しています。よって、床下もEPSで施工してしまうとせっかくの断熱性能が外壁に比べて半分以下になってしまうことを意味します。

床の断熱性能を向上させるためには、床の厚みを熱くすれば済む話ではありますが、そうしてしまうと、住宅を支える基礎部分に2本のツーバイ材を重ねる必要が出てきてしまうため、耐震性への問題など他の多くの問題が生じてしまいます。そのため、高さを上げるという選択肢はありません。

ではどうすればよいかというと、基礎の断熱材をより断熱性能が高いものにすればよいということになります。

同じ厚みのウレタンフォームはEPSに比べてその熱貫流率が1.7倍優れています。89㎜の厚さ敷かなくてもウレタンフォームであれば、熱貫流率を0.225W/㎡・Kとすることができ、外壁の熱貫流率0.179に対して20%程度の性能下落まで断熱性を向上させることができます。

床下の温度変化は外気温に比べてその変化が緩やかです。下のずは我が家の床下の通年の温度変化を示したグラフです。

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実際に我が家で計測したところでは、外気温がマイナス10℃~夏の38℃前後まで変化する過程でも、床下の温度変化は10℃~30℃までしか変化しませんでした。

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そのため、外壁に比べて床の断熱性能が20%程度劣ったとしても、住宅全体の快適性には影響を及ぼすことはほとんどありません。これがEPSだと断熱性能が1.7倍異なるため、さすがに床が少し寒くなったり、または、床暖房の光熱費が上昇したりといった問題が生じてきます。。。

これはあくまで推測ですが、上記のように床下についてはEPSで施工してしまうとその構造上断熱不足になってしまうため、床下についてのみは断熱性能の高い硬質ウレタンフォームが使用されてきたと理解できます

XPSとは何か?ウレタンフォームの代替としてのXPS

XPSとは何か?

一条工務店では2017年2月のフィリピン工場火災によって、半年程度ウレタンフォームの生産ができない状態となりました。そのため、これまで床下に使ってきたウレタンフォームも使用することができなくなりました。

そこで、現在お聞きしている範囲ではウレタンフォームに代わってXPSが採用されることになったと聞いています。また、XPSの採用に合わせて5㎝基礎を高くすることで調整をされているようです。

XPSとはeXtruded PolyStyrene formの略で、日本語にすると押出法ポリスチレンフォームと呼ばれるものになります。一条工務店で使用されているEPSはExpanded PolyStyrene、ビーズ法ポリスチレンフォームです。。。って何が違うんだ?という感じです^^;

XPSのeXtruded とは「押し出し」を意味しています。対してEPSのExpandedは「膨張させる」といった意味合いになります。と書いてみても意味が分かりませんね^^;

XPSとEPSは材料には違いがなく、その製造方法のみが違っています。

EPSはポリスチレンの原料に発泡剤を入れて、ビーズ上に予備発泡をさせた状態で方の中で最終的な発泡をさせることで、型にあわせたポリスチレンフォームを形成します。EPSの日本語名称である「ビーズ法」とは

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予備発泡させたポリスチレンが上記の写真のように「ビーズ」のように見えることから、ビーズ法と呼ばれています。

製造過程でビーズ状のポリスチレンを発泡させるため、EPSは下の写真のように丸いビーズのような跡が残っています。

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それに対してXPSは発泡剤をポリスチレン原料に溶かして、発泡する際に押しだしをしながら成型させるものになります。ビーズ状の予備発泡をせず、高温高圧の容器の中でポリスチレン原料と発泡剤を溶かして混ぜて、発泡段階でところてんのように押しだして製造されます。そのため、その表面は下の写真のようにEPSに比べてなめらなmのとなります。

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XPSの表面のイメージは、下の写真のような保温容器の表面に近いものとなるというとイメージしやすいかも知れません^-^

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XPSとEPSの違い

断熱性能を確保するために基礎だか5cmアップ

EPSとXPSはその基本素材は全く同一で、製法のみが異なっています。そのため、材質としての特徴はほぼ同じです。

製法の違いによって、EPSは金型の中で発泡をさせることから、金型の形状を変化させることで形状の自由度が高くなっています。一方のXPSは押し出しによって成型するため、基本的な形状は四角や丸といった棒状となり、これをカットして使うことになります。住宅断熱材として使う場合は、基本的に四角形が基本ですから、形状の違いはあまり重要ではありません。

住宅用断熱材として使う場合XPSとEPSではその断熱性能の違いが重要になってきます。

EPSの熱伝導率は0.034W/m・Kであるのに対して、XPSの熱伝導率は0.028W/m・Kとなっています。熱伝導率は低いほど断熱性能が高いことを意味します。よって、XPSはEPSに比べて1.2倍断熱性能が高いと言えます。

しかし、ウレタンに比べると断熱性能は30%ほど低くなっています。そこで、今回の一条工務店の対策では基礎高を5㎝アップさせて、XPSの厚さを増すことで従来のウレタンと同等の断熱性能を確保することになったようです。

厚さを考慮に入れた熱貫流率でいうと、ウレタンを89㎜施工した場合の熱貫流率は0.225W/㎡・Kであるのに対して、XPSを139㎜(89㎜+50㎜)とすると、その熱貫流率は0.201W/㎡・Kとなり、従来のウレタン以上の断熱性能を確保できます。(XPSの施工厚さは現時点では不明ですが5㎝以内と思います)

これであれば、住宅の初期性能は確保することができます。

ちなみにEPSで同等の断熱性を確保するためには、160㎜の施工厚さを確保する必要が出てきます。139㎜と170㎜で30㎜、すなわち3センチ違ってきます。この場合、住宅の高さをさらに3㎝上げる必要が出てくるため、合計で8㎝基礎高を上げる必要があります。正直あまり変わらないようにも思いますが、住宅の基礎高をあげることで北側斜線制限の影響が出てくることから、少しでも高さを上げないようにするためにより断熱性の高いXPSを採用したと思われます。

結論としては、XPSを129mm以上の厚さで施工すれば従来のウレタン断熱材と断熱性能はほぼ同一となると考えてよいかと思います^^

XPSの経年劣化:比較対象はウレタン

これは、ブログを読まれている複数の方から質問をいただいた内容ですが、一部のサイトでXPSはEPSに比べて初期性能劣化が大きいとされていることに懸念を感じられている方がいらっしゃいます。

XPSの初期性能劣化はEPSよりも大きいということは、ほぼ間違いがないと思われます。

ただしその性能劣化は、高温多湿環境で大きな影響を受けるもので、一般的な住宅の断熱材使用環境では大きな問題になるものではなさそうです(THE THERMAL AND MOISTURE PERFORMANCE OF CELLULAR POLYSTYRENE INSULATION IN ROADS, Thermal performance and optimum insulation thickness of building walls with different structure materials)。また、2015年に公表された論文ではEPSの材質としての劣化はXPSよりも経年劣化が大きいとしているものもあり、一概に性能劣化性能がどちらかが優れていて劣っているといったものでもなさそうです(Durability and long term behavior of FRP/foam shear transfer mechanism for concrete sandwich panels)。

ただ、そもそもを考えると、XPSはEPSの代替として用いられているものではなく、ウレタンフォームの代替として用いられているものであることから、ウレタンフォームとXPSでその性能劣化の程度を比較したほうが良いのかもしれません。これについては、「高温・多湿状態での各種断熱材の寸法の変化および熱抵抗の低下に関する実験的研究(福岡大学須貝高氏論文より)」が詳しく分析をしており、結論を示す表は下の通りとなっています。

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ここでは一番上段のウレタンフォームと、下2段のXPSが比較対象となりますが、両者を比較すると、熱抵抗値についてはいずれも「初期性能より低下する」と記載されています。詳しくは論文内に記載がありますが、初期性能の劣化はウレタンフォームにおいてもXPSにおいてもみられる現象となっています。

これらの情報をトータルに考えると、XPSを高温多湿になりにくい床下断熱材として使用している分には大きな問題はないと思われますが、一方で、天井裏や南面外壁等、夏には70°を超えるような高温になる個所に使用するにはしっかりとした試験が必要な材料と言えそうです。

ただし、性能劣化の程度は性能が半分になるようなものではないと思われますが、その程度についてはもう少し調べないと分かりませんでした。

まとめ

個人的に気になること、耐震性へ影響は??

この点はおそらく施工でカバーされているのだろうと思っています。また、そもそもたった5㎝程度の話なので、仮に影響があったとしても微々たるもので無視できるものかもしれません。

ただ、素朴な疑問として基礎を5㎝上げるということは地震の際の揺れはその分だけ大きくなります。この点はどのようにカバーされているのか?というのは少し気になります。一般的に基礎高を上げること自体は悪いことではありません。国土交通省が示す指針においても、基礎の高さは地盤から40㎝以上の高さとすることが望ましいと示されています。これは主に雨の跳ね上がりによる水の影響を防止すると同時にシロアリ対策にもなっています。

そのため、高さを高くすることはメリットも多くあります。

たった5cmなので、無視できるような気もするし、一方で基礎だか45cmから50cmへと10%以上高さを増してその基礎の上には高さ7m(2階建ての場合)、重量にしておそらく20トン近い構造物が乗ることを考えると無視ができないような気もするし、、、この点は不明ですが、ちょっと気になったので書いておきます。

基礎高アップによる北側斜線制限には注意

住宅地においては北側斜線制限という住宅の高さ制限があります。これが問題になるのは、南向きに家を建て、かつ、北側に隣家がある場合で、さらに、ソーラーパネルを搭載することを前提とした片流れの住宅で北側斜線制限の問題が生じるケースがあります。

これは、北側に位置する住宅の日照を確保するために建築基準法で定められた制限となっています。片流れの住宅では北側の屋根が最も高さが高くなるため、この北側斜線制限ギリギリの高さで住宅を建てるケースが多くあります。このようなケースでは、高が5cmでも北側斜線制限の基準をクリアできなくなってしまうケースもあります。そのため、このような住宅では基礎を5cm上げられないケースもあり得ることは注意しておいた方が良いかと思います。この点については一条工務店が個別の住宅ごとに対応しているようです。

おわりに

ウレタンフォームからXPSへの変更による断熱性能への影響はほぼないと考えて良いかと思います。また、性能劣化についてもウレタンフォームと同等程度であることから、少なくとも電気代が大きく変化したり、ましてや、人がわかるほどに住み心地が変わるような影響は出ないと考えて良いかと思います。また、XPSはダウケミカルがスタイロフォームという名前で住宅用断熱材として長年にわたって供給してきた実績もあるため、断熱材としての問題もないと考えて良いかと思います。

懸念事項を上げるとすれば、一条工務店が断熱性能を確保するために「基礎高を上げる」という従来とは異なる施工をするという点になろうかと思います。従来と異なる施工は必ずミスを誘発します。断熱材の収まりも従来の施工とは異なっているものと思います。フィリピン側で施工してくる分については、おそらく大量に生産をしているので、大きなミスはないと思いますが、現場で施工する箇所についてはミスが生じやすくなる可能性は高いように思っています。

そのため、住宅基礎高を5cmアップするお宅では、施工の方法を十分に確認しておいて、その上で現場を見ながら、気になるポイントがあればすぐに営業さんや監督さんなどに確認されると良いかと思います^^